暗号資産の税務

令和2年12月版 ── 「仮想通貨」が「暗号資産」に変わった

この版の位置づけ

国税庁が令和2年12月18日に公表した版です。索引ページのリンク文言は「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」で、問の数は32問です。

ひとつ前は令和元年12月20日に公表された「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」でした。表題を並べると、違いは1語だけです。そして、この版で起きたことも、ほぼそこに尽きます。問の数も章立ても前の版と同じ32問のまま、文書全体の「仮想通貨」が「暗号資産」に置き換わりました。前の版については令和元年12月版の解説にまとめています。

骨格

前の版からの変化 内容
表題 「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」から「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」に変わりました。
問の数 32問のままです。増えても減ってもいません。
章立て 所得税・法人税共通関係から法定調書関係までの並びは、前の版と同じです。
用語 見出しにも本文にも使われていた「仮想通貨」が、「暗号資産」に置き換わりました。
用語が動いた背景 資金決済法等改正法の施行に伴い、税制改正の大綱にも令和2年度から「暗号資産」という語が現れます。
読者にとっての意味 平成の資料は「仮想通貨」、令和2年12月以降の資料は「暗号資産」と書かれている、と知っておけば足ります。

なぜ「仮想通貨」が「暗号資産」になったのか

語が入れ替わった場面は、税制改正の大綱をさかのぼると見つかります。大綱に「仮想通貨」という語が現れたのは、平成29年度と平成31年度の2回です。平成29年度は消費税を非課税とする改正、平成31年度は個人が持つ仮想通貨の評価と、法人税における時価法の導入でした。いずれも「仮想通貨」と書かれています。

大綱に「暗号資産」という語が初めて現れるのは、令和元年12月20日に閣議決定された令和2年度税制改正の大綱です。ただし、この大綱の中には「仮想通貨」という語も残っており、この年に大綱の用語がすべて置き換わったわけではありません。この大綱で暗号資産について書かれていたのは、次の項目でした。

「先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象から、暗号資産デリバティブ取引に係る雑所得等を除外する。」

あわせて、暗号資産デリバティブ取引について支払調書を提出する仕組みも定められました。ただし、ここで注意したいことがあります。用語の置き換えそのものは、税の側で決まったことではありません。資金決済法等改正法の施行に伴うものです。呼び名を決めたのは資金決済法の改正であって、大綱はその呼び名に合わせた、という順序です。国税庁のFAQが令和2年12月版で用語を入れ替えたのも、同じ流れの上にあります。税法が「暗号資産」をどう受け止めているかは税法は「暗号資産」をどう定義しているのかに整理しています。

名前が変わって、課税の中身は変わったのか

変わっていません。この版は、問の数も章立ても令和元年12月版と同じです。令和元年12月版の目次は、次の並びでした。

問の番号(令和元年12月版)
所得税・法人税共通関係 1〜6
所得税関係 7〜19
法人税関係 20〜25
相続税・贈与税関係 26〜27
源泉所得税関係 28
消費税関係 29
法定調書関係 30〜32

この7つの章と32問という並びが、令和2年12月版でもそのまま維持されています。売ったとき、商品を買ったとき、暗号資産どうしを交換したとき、分裂によって取得したとき、といった場面の立て方は動いていません。所得税と法人税で分けて考えるという枠組みも、相続や贈与、給与の支払、消費税、財産債務調書や国外財産調書までを一続きで扱う構えも、前の版のままです。

ですから、令和元年12月版を読んで理解した内容は、そのまま令和2年12月版の理解として通用します。「仮想通貨」と書いてある行を「暗号資産」と読み替えるだけです。制度そのものがこの時期にどう積み上がってきたかは暗号資産税制はこうしてできたにまとめています。

過去の資料を読むとき、どこで線を引けばよいのか

この版を知っておく実益は、古い資料に当たったときに出ます。手元の資料や解説記事が「仮想通貨」と書いているのか「暗号資産」と書いているのかで、それがいつの時点のものかがおおよそ分かるからです。

  • 平成29年12月版、平成30年11月版、令和元年12月版の3つは、表題も本文も「仮想通貨」です。
  • 令和2年12月版から先の版は「暗号資産」です。
  • 令和7年12月版だけは、索引ページのリンク文言に「等」が付いて「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」となっています。

語が違っても、扱っている対象は同じです。古い資料が「仮想通貨」と書いているからといって、いまの制度と別のものを論じているわけではありません。逆に、「暗号資産」と書いてあるだけで新しい資料だとも言い切れません。令和2年12月以降であることは分かりますが、その後も版は重ねられています。次の版については令和3年6月版の解説をご覧ください。

入れ替えが全体に及んだことは、最新版の目次に残っている

用語の置き換えがどこまで及んだのかは、いまの版の目次から確かめられます。令和5年12月版から、国税庁は目次の各行に〔令和○年○月更新〕〔令和○年○月追加〕という注記を付けるようになりました。最新の令和7年12月版は47問ありますが、そのうち14問に〔令和2年12月更新〕が付いています。

章(令和7年12月版) 〔令和2年12月更新〕が付いている問
1 所得税・法人税共通関係 1-1、1-2、1-3、1-6
2 所得税関係 2-4、2-5、2-6、2-7、2-8、2-9、2-11、2-12
4 相続税・贈与税関係 4-2
5 源泉所得税関係 5-1

ここに並べた番号は最新版のものであり、令和2年12月版の通し番号とは対応していません。それでも、読み取れることはあります。まず、14問という数は、版ごとの注記のなかで最も多い数です。次に多いのが〔令和6年12月更新〕の9問、その次が〔令和5年12月更新〕の7問ですから、令和2年12月の手当てが群を抜いています。個別の論点をひとつ直したのではなく、文書全体に手が入ったことの跡です。

もうひとつ、3 法人税関係には〔令和2年12月更新〕の注記がありません。この章の問には、令和3年12月から令和6年12月までの、より新しい注記が付いています。法人税関係はその後も改正が続いた分野であり、注記が新しいものに置き換わっているという読み方ができます。各版の変遷は暗号資産FAQ改訂史のハブにまとめています。

実務で迷いが生じるところ

  • 手元の資料が「仮想通貨」と書いてあるとき、それがいつの資料なのかが分からない場合。表題の語が令和2年12月より前かどうかの目印になります。
  • 令和2年12月版より前の版を根拠として示すとき、引用した語を原文どおり「仮想通貨」で書くか、現在の語に直すか。原文をそのまま引くのが基本です。
  • 帳簿や取引記録の項目名が「仮想通貨」のままになっている場合。記録の付け方の問題であって、この版で課税の取扱いが変わったわけではありません。
  • 取引所や会計ソフトの画面表示と、税務署に出す書類の用語が食い違っている場合。
  • 令和2年12月版は32問ですが、その後の版で問は増えています。古い版に載っていないことをもって「そういう取扱いは無い」と判断せず、最新版を確かめる必要があります。
  • この版と前の版のどちらを見ればよいか迷う場合。用語以外に構成の違いはありませんので、新しいほうを見れば足ります。

出典

  • 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和2年12月18日) PDF
  • 国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和元年12月20日) PDF
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和7年12月)」(令和7年12月26日) PDF
  • 国税庁「過去分の情報(暗号資産関係)」 一覧

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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