暗号資産の税務

暗号資産FAQ 平成30年11月版 ── 9問から21問へ

対象時点について:本稿は国税庁の平成30年11月21日資料の内容と、その後の改訂史を扱います。現在の取扱いは最新版でご確認ください。

この版の位置づけ

国税庁は平成30年11月21日に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。国税庁ホームページの過去分の索引ページでは、この文言でPDFにリンクが張られています。問の数は21で、1から21までの通し番号が付いています。

その1年前、平成29年12月1日に出た初版の表題は「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」で、問は9でした。初版については平成29年12月版の記事にまとめています。表題と問の数の両方が、この第2版で変わりました。

骨格

前の版からの変化 内容
表題 「所得の計算方法等」から「税務上の取扱い」に変わりました。扱う範囲が所得の計算だけではなくなったことが、表題に表れています。
章立て 初版は1~9の通し番号で、税目別の章立てはありませんでした。この版では1~21の通し番号を用い、所得税・法人税共通関係/所得税関係/相続税・贈与税関係/源泉所得税関係/消費税関係/法定調書関係の6つの章に分かれています。
問の数 9問から21問になりました。初版の9問はすべてこの版に引き継がれ、12問が加わっています。
年間取引報告書 問9「年間取引報告書を活用した仮想通貨の所得金額の計算」と問10「年間取引報告書の記載内容」が、この版で初めて置かれました。
所得計算以外の面 相続・贈与(問15・問16)、給与の源泉(問17)、消費税(問18)、財産債務調書と国外財産調書(問19〜問21)が一度に加わりました。
法人税関係 独立した章はまだありません。法人に関わる問は、所得税・法人税共通関係の問1から問6までに含まれるだけです。

なぜ「所得の計算方法等」から「税務上の取扱い」になったのか

初版の9問は、売却・決済・交換・追加購入時の取得価額・分裂・マイニングと、所得区分・損失の通算・証拠金取引でした。どれも所得をどう計算するかという問いです。表題の「所得の計算方法等」は、中身をそのまま言い表したものでした。

この版で加わった12問は、性質が違います。相続や贈与により取得した場合(問15)とその評価方法(問16)、仮想通貨による給与等の支払(問17)、譲渡した場合の消費税(問18)、財産債務調書への記載の要否(問19)と価額の記載方法(問20)、国外財産調書への記載の要否(問21)。所得税以外の税目と、申告以外の手続が並びます。

このうち消費税は、法令の側では既に決着がついていた論点です。平成29年度税制改正の大綱(平成28年12月22日閣議決定)の消費課税の項に「資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。」とあり、平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用するとされていました。初版が公表された平成29年12月には、既に施行されていた内容です。それでもFAQに問として立ったのは、この版が最初でした。非課税の仕組みそのものは暗号資産を売っても消費税はかからないで扱っています。

所得税関係にも、必要経費(問8)や、購入価額や売却価額が分からない場合(問12)が加わりました。表題を「税務上の取扱い」まで広げなければ収まらない範囲になった、ということです。

年間取引報告書は、何を変えたのか

問9「年間取引報告書を活用した仮想通貨の所得金額の計算」と問10「年間取引報告書の記載内容」は、この版で初めて置かれた問です。初版の9問には、交換業者が納税者に交付する書類を前提にした問はありませんでした。

初版は、追加購入時の取得価額を具体的な取引例から計算していました。問4の見出し「仮想通貨の取得価額」は、この版でも同じです。この版では別に問9が設けられ、年間取引報告書を使う計算の道筋が示されました。

問10が「年間取引報告書の記載内容」という独立した問になっているところも、この版の特徴です。書類に何が書かれているかを説明する問が必要になったということは、その書類を読むところから計算を始める組み立てに変わった、ということを意味します。

問12「仮想通貨の購入価額や売却価額が分からない場合」が同時に加わっている点も、あわせて見ておく価値があります。報告書を前提にした計算の道筋を示せば、その報告書が無い場合をどうするかという問いが必ず出てくるからです。

問11「取得価額の計算方法の変更」は、まだ届出ではない

この版の問11の見出しは「仮想通貨の取得価額の計算方法の変更」です。次の令和元年12月20日版では、この位置に問11「仮想通貨の評価方法の届出」と問12「仮想通貨の評価方法の変更手続」の2問が並びます。「計算方法」が「評価方法」に変わり、「届出」という手続が見出しに現れます。

この違いは、法令の側の動きに対応しています。平成31年度税制改正の大綱は平成30年12月21日に閣議決定されました。その個人所得課税の項に、個人が保有する仮想通貨について、必要経費に算入する金額を算定する場合の「その算定の基礎となる期末において有する仮想通貨の価額は、移動平均法又は総平均法により算出した取得価額をもって評価した金額とする」ほか所要の措置を講ずる、とあります。

この版が公表された平成30年11月21日は、その大綱の閣議決定の1か月前です。したがってこの版の問11は、移動平均法・総平均法という評価方法が法令に置かれる前の段階のものであり、届出という手続を前提にした書き方にはなっていません。2つの方法の違いそのものは総平均法と移動平均法で扱っています。

なぜ法人税関係の章が、この版にもまだ無いのか

この版の6つの章に、法人税関係はありません。法人に関わる問は、所得税・法人税共通関係の問1から問6までに含まれるだけです。売却した場合、商品を購入した場合、仮想通貨同士の交換を行った場合、取得価額、分裂により取得した場合、マイニングにより取得した場合の6問です。

法人税に固有の章が立つのは、次の令和元年12月20日版からです。そこでは問20から問25までの6問が法人税関係の章として置かれ、譲渡損益の計上時期、譲渡原価、期末時価評価と、仮想通貨信用取引に関する3問が並びます。

その中身は、平成31年度税制改正の大綱の法人課税の項と対応しています。大綱は「法人税における仮想通貨の評価方法等について、次のとおり時価法を導入する等の措置を講ずる」とし、活発な市場が存在する仮想通貨の時価評価、譲渡に係る契約をした日の属する事業年度への譲渡損益の計上、移動平均法又は総平均法による原価法、事業年度末に有する未決済の信用取引等についてのみなし決済損益の計上を挙げています。適用は平成31年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税からとされました。

この版が出た時点で、その大綱はまだ閣議決定されていません。仮想通貨に固有の期末時価評価等を明文化した平成31年度改正より前の版です。法人税の一般的な規定まで存在しなかったという意味ではありません。なお、平成30年度税制改正の大綱には「仮想通貨」という語が1度も現れません。空白の期間があったわけです。改正の流れ全体はFAQ改訂史のハブ記事に、次の版の中身は令和元年12月版の記事にまとめています。

実務で迷いが生じるところ

  • この版は平成30年分の申告を念頭に置いた内容です。いま手元にある取引に当てはめる前に、公表日より後の改正が入っていないかを確かめてください。
  • 問11の「取得価額の計算方法の変更」と、令和元年12月版以降の「評価方法の届出」「評価方法の変更手続」は、言葉も手続も同じものではありません。古い版の記述だけを見て届出の要否を判断しないでください。
  • 年間取引報告書は交換業者が交付する書類です。国内の交換業者を通していない取引や、この版の公表より前の期間の取引については、手元に報告書が無いことがあります。問12の「購入価額や売却価額が分からない場合」が置かれているのは、そうした場面を想定してのことです。
  • 相続や贈与により取得した場合(問15・問16)は、所得税ではなく相続税・贈与税の問題です。所得の計算とは切り分けて考える必要があります。もらったあとの扱いは相続・贈与でもらったときにまとめています。
  • 財産債務調書と国外財産調書は、提出義務の有無が人によって異なります。問19から問21は、義務がある人に向けた記載の要否と記載方法の説明です。
  • この版では「仮想通貨」という語が使われています。「暗号資産」に置き換わるのは令和2年12月18日版からですので、同じものを指していても、資料を探すときの語が版によって変わります。

出典

  • 国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」(平成30年11月21日) PDF
  • 国税庁「過去分の情報(暗号資産関係)」 一覧

本稿は平成30年11月21日版FAQの歴史的な解説です。2026年9月7日、初版の番号・章立て等の説明を訂正しました。本文の当時資料を現在の取引へそのまま適用しないでください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

一覧に戻る

お電話でのご相談03-6447-1768

柳澤国際税務会計事務所株式会社柳澤総合研究所(グループ会社)

〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-5-11 SuSLOB 北参道7F
事務所のご案内
地図を見る(google map)