暗号資産の税務

法人は、暗号資産を持っているだけで課税されるのか

条文の定義

「内国法人が事業年度終了の時(以下この項及び次項において「期末時」という。)において有する短期売買商品等については、次の各号に掲げる短期売買商品等の区分に応じ当該各号に定める方法(第二号に掲げる短期売買商品等にあつては、同号に定める方法のうち当該内国法人が選定した方法(その方法を選定しなかつた場合には、同号ロに掲げる方法)とする。)により評価した金額をもつて、当該期末時における評価額とする。」(法人税法第61条第2項)

法人が持っている資産は、売ってはじめて損益になるのが原則です。値上がりしても、売らないかぎり帳簿の金額は動きません。この条文は、その外側にあります。事業年度の終わりに持っているものの評価額を計算し直せ、と定めているからです。

対象は「短期売買商品等」です。同条第1項はこの語に「第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産」を含めています。前半に並ぶ資産の「短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産」という限定は、暗号資産にはかかりません。定義そのものは税法は「暗号資産」をどう定義しているのかで扱いました。

ただし、この項だけでは結論は出ません。どの号に入るかで評価の方法が変わり、時価法になったものだけが第3項で損益に結び付きます。

骨格

論点 条文の定め
いつ評価するのか 事業年度終了の時(期末時)に有するものを評価します(法61条2項)。
時価法の対象 暗号資産は市場暗号資産に限られ、特定譲渡制限付暗号資産と特定自己発行暗号資産は除かれます(同項1号)。要件は同令118条の7にあります。
評価益・評価損 時価評価金額と期末帳簿価額を比べ、その超える部分の金額を益金または損金に算入します(法61条3項)。
暗号資産への限定 暗号資産は「自己の計算において有する場合に限る」とされています(同項)。
翌事業年度 前期に算入した金額に相当する金額を逆向きに算入し、帳簿価額も調整します(同令118条の10)。

時価法の対象になるのは市場暗号資産だけなのか

「短期売買商品等(暗号資産にあつては、市場暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるものをいう。次号において同じ。)に限るものとし、次に掲げるものを除く。)」(法人税法第61条第2項第1号)

括弧のなかに、絞り込みが二段構えで入っています。一段目が「に限るものとし」、二段目が「次に掲げるものを除く。」です。

一段目の市場暗号資産は「活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるもの」で、その政令が法人税法施行令118条の7第1項です。次の全てに該当するものとされています。

  • 「その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。」(同項1号)
  • 「継続的に前号の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。」(同項2号)
  • 価格の公表がその法人以外の者によりされていること、または、取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと(同項3号)

3号は、価格も取引も自分で作っている状態を市場暗号資産から外す方向に働きます。

除かれる二つ

イの特定譲渡制限付暗号資産は、制限が付いている暗号資産のうち「その条件が付されていることにつき適切に公表されるための手続が行われているもの」です。制限を付けただけでは足りません。

ロの特定自己発行暗号資産は、「当該内国法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産」で、「その時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されているもの」です。

もっとも、同項第2号は「市場暗号資産に該当する特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除く。)」について時価法と原価法から選定できるものとし、選定しなければ原価法です。同項第3号は、それ以外を原価法とします。

時価評価金額はどうやって計算するのか

第1号の時価法は、「当該期末時における価額として政令で定めるところにより計算した金額」によります。その政令が同令118条の8で、種類等ごとに「公表最終価格等」に数量を乗じた金額です。暗号資産の公表最終価格等は、同条第1項第3号または第4号の金額になります。

「……によつて公表された当該事業年度終了の日における当該暗号資産の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格)」(法人税法施行令第118条の8第1項第3号)

基準は事業年度終了の日における最終の売買の価格です。その日に公表がなければ、その日より前で最も近い日の価格によります。決算日が休日の場合などが想定されています。

公表する主体も条文が定めます。価格等公表者は、売買価格等を継続的に公表し、その価格が値決めに重要な影響を与えている者です。ただし、公表の基礎になる取引が主としてその法人自身の自己の計算による取引である場合、その法人は除かれます。

評価益と評価損は、その期の損益になるのか

「内国法人が期末時において短期売買商品等(時価法により評価した金額(以下この項において「時価評価金額」という。)をもつてその期末時における評価額とするものに限る。以下この項及び次項において同じ。)を有する場合(暗号資産にあつては、自己の計算において有する場合に限る。)には、」(法人税法第61条第3項)

「……は、第二十五条第一項(資産の評価益)又は第三十三条第一項(資産の評価損)の規定にかかわらず、その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。」(同項)

この二つに挟まれた部分が、評価益と評価損の定義です。時価評価金額が期末帳簿価額を超えれば評価益、逆であれば評価損で、いずれも「その超える部分の金額」です。売っていなくても、その事業年度の所得が動きます。

法人税法は、資産の評価益と資産の評価損に第25条第1項と第33条第1項の一般的な定めを置いています。第61条第3項は、その二つを名指しして「規定にかかわらず」としました。一般の定めに戻らず、この項で処理するという関係です。

また、この項の入口は「時価法により評価した金額」によるものに限られています。原価法になった暗号資産は、そもそもこの項に入りません。

翌期に洗い替えるとはどういうことか

「内国法人が法第六十一条第三項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)の規定により当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入した金額に相当する金額は、当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。」(法人税法施行令第118条の10第1項)

向きが逆になって翌期に戻ります。

当期の期末 当期の所得 翌事業年度
評価益が生じた 益金の額に算入します。 同額に相当する金額を損金の額に算入します。
評価損が生じた 損金の額に算入します。 同額に相当する金額を益金の額に算入します。

帳簿価額の側も同じ条にあります。

「……その短期売買商品等の同項の規定を適用した後の当該事業年度終了の時における帳簿価額から第一項の規定により損金の額に算入される金額に相当する金額を減算し、又はその帳簿価額に同項の規定により益金の額に算入される金額に相当する金額を加算した金額とする。」(法人税法施行令第118条の10第4項)

時価評価を反映した後の帳簿価額から、翌期に損金に算入される金額を減算し、または益金に算入される金額を加算した金額が、翌事業年度開始の時の帳簿価額です。計算すると、時価評価をする前の金額に戻ります。

期末の時価評価は、その事業年度の所得を動かしたうえで翌期に打ち消される、一往復の処理です。値上がり分が帳簿に積み上がるわけではありません。ただし往路と復路は別の事業年度です。

「自己の計算において有する場合」という限定は何を意味するのか

「暗号資産にあつては、自己の計算において有する場合に限る。」(法人税法第61条第3項)

手元にあること、名義があることではなく、自己の計算において有することが要件です。同じ言い回しは、第4項の「自己の計算において有する暗号資産を移転する場合に限る」、第6項の「内国法人が暗号資産を自己の計算において有する場合において」にもあります。

念押しではありません。同令118条の6第6項も、帳簿価額を算出する際の「取得」に含まれないものとして、第2号に「その取得する暗号資産を自己以外の者の計算において有することとなる場合におけるその取得」を挙げています。

自己以外の者の計算において有する暗号資産があり得ることが、前提です。暗号資産は他人のために預かる形をとりやすいため、第3項は、そうしたものを自社の所得に取り込まないよう入口を絞っています。

個人にも同じ仕組みがあるのか

ありません。所得税法第48条の2第1項は、年末に有する暗号資産の価額を「その者が暗号資産について選定した評価の方法により評価した金額」としています。必要経費に算入する金額を算定するための計算です。その方法も、所得税法施行令119条の2第1項が「その算出した取得価額をもつて当該期末暗号資産の評価額とする方法とする。」としています。

取得価額による評価であり、時価との差額を所得に取り込む規定は、ここまで見てきた所得税法と同施行令の条文には置かれていません。

個人は、年末に持っているというだけでは所得が生じません。所得区分は個人の暗号資産の所得は、どの所得に入るのか、評価方法の選定と届出は総平均法と移動平均法──個人の暗号資産の評価方法とその届出で扱っています。

実務で迷いが生じるところ

  • 決算日に価格の公表がなかった銘柄です。同令118条の8第1項第3号のかっこ書きにより、その日より前で最も近い日の価格によります。どの日の価格を使ったのかを、後から示せるようにしておく必要があります。
  • 自社で発行したトークンです。特定自己発行暗号資産に当たるかは発行の時からの継続で判定され(法61条2項1号ロ、同令118条の7第3項)、該当しないこととなったときの扱いは法61条6項と同令118条の11にあります。
  • 譲渡制限を付けたトークンです。同令118条の7第2項は、制限に加えて、暗号資産交換業者に対する特定条件通知その他の財務省令で定める手続を要件にしています。制限を付けただけでは、特定譲渡制限付暗号資産にはなりません。
  • 他社や顧客のために預かっている暗号資産です。どちらの計算において有するものかを整理しておく必要があります。期末に決済していない暗号資産信用取引には、法61条7項と同令118条の12第1項が別に定めを置いています。
  • 制度が動いている点です。令和8年度税制改正大綱のポイントでは、暗号資産の課税の枠組みの見直しが示されています。大綱は法律そのものではありませんので、確定した内容は改正後の条文で確かめる必要があります。

根拠条文

  • 法人税法 第61条第1項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)/引用した文言:「短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産」、「資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産」
  • 法人税法 第61条第2項(同上)/引用した文言:「……において有する短期売買商品等については、次の各号に掲げる短期売買商品等の区分に応じ当該各号に定める方法(第二号に掲げる短期売買商品等にあつては、同号に定める方法のうち当該内国法人が選定した方法(その方法を選定しなかつた場合には、同号ロに掲げる方法)とする。)により評価した金額をもつて、当該期末時における評価額とする。」
  • 法人税法 第61条第2項第1号(同上)/引用した文言:「短期売買商品等(暗号資産にあつては、市場暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるものをいう。次号において同じ。)に限るものとし、次に掲げるものを除く。)」
  • 法人税法 第61条第2項第1号イ(同上)/引用した文言:「特定譲渡制限付暗号資産(譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産であつてその条件が付されていることにつき適切に公表されるための手続が行われているものとして政令で定めるものをいう。次号において同じ。)」
  • 法人税法 第61条第2項第1号ロ(同上)/引用した文言:「当該内国法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産」、「その時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されているもの」
  • 法人税法 第61条第2項第2号(同上)/引用した文言:「市場暗号資産に該当する特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除く。)イ又はロに掲げる方法イ時価法ロ原価法(期末時において有する短期売買商品等について、当該期末時における帳簿価額をもつて当該短期売買商品等の当該期末時における評価額とする方法をいう。次号において同じ。)」
  • 法人税法 第61条第2項第3号(同上)/引用した文言:「前二号に掲げる短期売買商品等以外の短期売買商品等原価法」
  • 法人税法 第61条第3項(同上)/引用した文言:「暗号資産にあつては、自己の計算において有する場合に限る。」、「第二十五条第一項(資産の評価益)又は第三十三条第一項(資産の評価損)の規定にかかわらず、その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。」
  • 法人税法 第61条第4項(同上)/引用した文言:「暗号資産にあつては、自己の計算において有する暗号資産を移転する場合に限る」
  • 法人税法 第61条第6項(同上)/引用した文言:「内国法人が暗号資産を自己の計算において有する場合において、その暗号資産が特定自己発行暗号資産に該当しないこととなつたことその他の政令で定める事実が生じたときは、政令で定めるところにより、その暗号資産を譲渡し、かつ、その暗号資産を取得したものとみなして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。」
  • 法人税法 第61条第7項(同上)/引用した文言:「その時において当該暗号資産信用取引を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した利益の額又は損失の額に相当する金額」
  • 法人税法施行令 第118条の6第6項第2号(短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等)/引用した文言:「その取得する暗号資産を自己以外の者の計算において有することとなる場合におけるその取得」
  • 法人税法施行令 第118条の7第1項(市場暗号資産等の範囲)/引用した文言:「法第六十一条第二項第一号(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるものは、内国法人が有する暗号資産のうち次に掲げる要件の全てに該当するものとする。」
  • 法人税法施行令 第118条の7第1項第1号(同上)/引用した文言:「その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。」
  • 法人税法施行令 第118条の7第1項第2号(同上)/引用した文言:「継続的に前号の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。」
  • 法人税法施行令 第118条の7第1項第3号(同上)/引用した文言:「第一号の売買価格等の公表が当該内国法人以外の者によりされていること。」、「前号の取引が主として当該内国法人により自己の計算において行われた取引でないこと。」
  • 法人税法施行令 第118条の7第2項第2号(同上)/引用した文言:「暗号資産交換業者に対する特定条件通知(特定条件が付され、又は付される予定である旨の通知をいう。)その他の財務省令で定める手続を行つていること。」
  • 法人税法施行令 第118条の8第1項(短期売買商品等の時価評価金額)/引用した文言:「公表最終価格等(暗号資産以外の短期売買商品等にあつては第一号又は第二号に掲げるいずれかの金額をいい、暗号資産にあつては第三号又は第四号に掲げるいずれかの金額をいう。)にその短期売買商品等の数量を乗じて計算した金額とする。」
  • 法人税法施行令 第118条の8第1項第3号(同上)/引用した文言:「暗号資産の売買価格等を継続的に公表し、かつ、その公表する売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えている場合におけるその公表をする者」、「……によつて公表された当該事業年度終了の日における当該暗号資産の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格)」
  • 法人税法施行令 第118条の8第1項第4号(同上)/引用した文言:「価格等公表者によつて公表された当該事業年度終了の日における暗号資産の最終の交換比率」
  • 法人税法施行令 第118条の10第1項(短期売買商品等の評価益又は評価損の翌事業年度における処理等)/引用した文言:「内国法人が法第六十一条第三項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)の規定により当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入した金額に相当する金額は、当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。」
  • 法人税法施行令 第118条の10第4項(同上)/引用した文言:「……その短期売買商品等の同項の規定を適用した後の当該事業年度終了の時における帳簿価額から第一項の規定により損金の額に算入される金額に相当する金額を減算し、又はその帳簿価額に同項の規定により益金の額に算入される金額に相当する金額を加算した金額とする。」
  • 法人税法施行令 第118条の12第1項(未決済暗号資産信用取引に係る利益相当額又は損失相当額の翌事業年度における処理等)/引用した文言:「内国法人が法第六十一条第七項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)の規定により当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入した金額に相当する金額は、当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。」
  • 所得税法 第48条の2第1項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)/引用した文言:「その者が暗号資産について選定した評価の方法により評価した金額」
  • 所得税法施行令 第119条の2第1項(暗号資産の評価の方法)/引用した文言:「その算出した取得価額をもつて当該期末暗号資産の評価額とする方法とする。」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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