この版の位置づけ
令和6年12月20日、国税庁は「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。暗号資産FAQとしては9番目の版で、前の版である令和5年12月25日版からほぼ1年ぶりの改訂です。
問の数は47問です。前の版が45問でしたから、2問増えました。増えたのは、≪1 所得税・法人税共通関係≫の1-4「暗号資産による寄附を行った場合」と、≪3 法人税関係≫の3-1-11「特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産」の2問です。どちらも目次に〔令和6年12月追加〕の注記が付いています。
2問とも章の末尾ではなく途中に差し込まれたため、あとに続く問の番号が1つずつ繰り下がりました。数の上では2問増えただけですが、番号の見え方は広く動いた版です。改訂の全体像は暗号資産FAQ改訂史にまとめています。
骨格
| 前の版からの変化 | 内容 |
|---|---|
| 問の数 | 45問から47問になりました。 |
| 新設(1つ目) | 所得税・法人税共通関係に1-4「暗号資産による寄附を行った場合」が加わりました。 |
| 新設(2つ目) | 法人税関係に3-1-11「特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産」が加わりました。 |
| 番号の繰り下がり | 1-4の新設で、それまでの1-4〜1-7が1-5〜1-8に。3-1-11の新設で、それまでの3-1-11〜3-1-13が3-1-12〜3-1-14になりました。 |
| 更新された問 | 〔令和6年12月更新〕の注記が付いた問が9問あります。1-5、2-13、3-1-2から3-1-8までです。 |
| 税制改正 | 令和6年度税制改正の大綱に、法人が持つ暗号資産の期末評価の見直しが置かれています。 |
なぜ「特定譲渡制限付暗号資産」という問が要ったのか
3-1-11が加わった背景には、令和6年度税制改正の大綱があります。大綱の法人課税の章に、法人が持つ市場暗号資産のうち譲渡についての制限その他の条件が付されているものについて、期末の評価額を「原価法」と「時価法」のいずれかから法人が選んだ方法で計算する、という見直しが置かれました。
ここでいう「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」は、大綱の注記で2つの要件によって定義されています。1つは、他の者に移転できないようにする技術的措置がとられていることなど、譲渡についての一定の制限が付されていること。もう1つは、その制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を持っている者などが暗号資産交換業者に通知などをしていることです。制限がかかっているだけでは足りず、その事実が外から見えることまでを求めています。
選び方についても大綱に定めがあります。評価方法は暗号資産の種類ごとに選び、取得した日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長へ届け出ることとされ、選ばなかった場合は原価法によることになります。持っているだけで課税されるのかという論点そのものは、法人は、持っているだけで課税されるのかで扱っています。
自分で発行したトークンから、他社が発行したトークンへ
この改正は、前の年の改正と続きで読むと動いた向きがはっきりします。1つ前の令和5年度税制改正の大綱では、法人が期末に持っている暗号資産のうち時価評価により評価損益を計上するものの範囲から、2つの要件に該当するものを除くこととされました。自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有しているものであること、そして、その発行の時から継続して譲渡制限が行われているものであることです。これを受けて、前の版であるFAQ令和5年12月版に3-1-9「特定自己発行暗号資産に該当する暗号資産」が新設されました。
2つの年の間には、次の違いがあります。
- 令和5年度の側は自己が発行した暗号資産に限られていました。令和6年度の側にその限定はなく、自分で発行したものでなくても、譲渡についての制限が付されていれば対象に入ります。
- 令和5年度の側は時価評価の対象から外すという形でした。令和6年度の側は、原価法と時価法のどちらかを法人が選ぶという形です。外すか外さないかではなく、選ぶ、という組み立てです。
- 令和6年度の大綱でも、自己の発行する暗号資産でその発行の時から継続して保有するものは原価法によることとされています。自分で発行したものは、選ぶ余地なく原価法のままです。
前の年が自分で発行したトークン、この年が他社が発行したトークンです。期末時価評価を外せる場面が、発行者本人の手元から、譲渡制限の付いたトークンを持つ法人一般へと広がった、という順序になります。譲渡制限と時価評価の関係は譲渡制限があれば時価評価を外せるで、自己発行分については自分で発行したトークンに、含み益課税はかかるのかでまとめています。
暗号資産を手放す場面に「贈る」が加わった
もう1つの新設は1-4「暗号資産による寄附を行った場合」です。置かれた場所を見ると、この問が何を埋めたのかが分かります。
| 問番号 | 見出し |
|---|---|
| 1-1 | 暗号資産を売却した場合 |
| 1-2 | 暗号資産で商品を購入した場合 |
| 1-3 | 暗号資産同士の交換を行った場合 |
| 1-4 | 暗号資産による寄附を行った場合(この版で新設) |
1-1から1-3までは初版から並んできた3つの場面で、いずれも暗号資産を手放して何かを受け取る場面でした。1-4はその末尾に加わりましたが、受け取るものがない点で前の3つとは形が違います。売る・使う・交換するに、贈るが加わった、という並びです。
なお、この問がどう答えているかは見出しからは読み取れません。この記事で確認しているのは、目次に問が置かれたことと、その位置までです。
問番号が1つずれたということ
繰り下がりで動いたのは、次のとおりです。
- 1-4「暗号資産の取得価額」が1-5になりました。以下、分裂により取得した場合が1-6、マイニングなどにより取得した場合が1-7、非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引が1-8です。
- 3-1-11「暗号資産信用取引を行った場合」が3-1-12に、譲渡損益の計上時期が3-1-13、みなし決済損益額が3-1-14になりました。
- ≪2 所得税関係≫と3-2の電子決済手段関係、4以降の章の番号は動いていません。
実務上、ここが一番影響の出るところかもしれません。令和5年12月版までを引いて書かれた解説記事や社内の手控えは、問番号が1つずれた状態になります。取得価額について「1-4」と書かれた記事は、この版以降では1-5を指しています。番号だけで引き当てず、見出しの文言まで確かめる必要があります。
更新された9問は、どこに集まっているのか
新設の2問のほかに、〔令和6年12月更新〕の注記が付いた問が9問あります。
| 問番号 | 見出し |
|---|---|
| 1-5 | 暗号資産の取得価額 |
| 2-13 | 暗号資産の信用取引 |
| 3-1-2 | 暗号資産の譲渡原価 |
| 3-1-3 | 暗号資産の期末時価評価 |
| 3-1-4 | 活発な市場が存在する暗号資産 |
| 3-1-5 | DEXにおいて取引される暗号資産 |
| 3-1-6 | ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価評価 |
| 3-1-7 | 貸付けをした暗号資産の期末時価評価 |
| 3-1-8 | 借入れをした暗号資産の期末時価評価 |
9問のうち7問が3-1-2から3-1-8までの連番です。法人税関係の、期末時価評価をめぐる一続きの区画がまとめて更新された形です。何が活発な市場のある暗号資産にあたるのか、ロックアップしたもの、貸したもの、借りたものはどうかという問が、新設された3-1-11のすぐ手前に並んでいます。「活発な市場が存在する暗号資産」とは何かもあわせてご覧ください。
ただし、注記から分かるのは、その問に手が入ったという事実までです。どの記述がどう変わったのかまでは、この記事では確認していません。
実務で迷いが生じるところ
- 原価法と時価法のどちらを選ぶかは、届出の期限と結びついています。評価方法は暗号資産の種類ごとに選び、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出るという定めですので、期末を迎えてから考え始めると間に合わない場合があります。
- 選ばなかったときは原価法になります。何も出さなければ時価評価が続く、という向きではありませんので、思っていたのと逆になっていないかを確かめる必要があります。
- 譲渡制限がかかっているだけでは足りず、その旨を認定資金決済事業者協会に公表させるための通知などが要件に含まれています。移転できない状態にしてあることと、手続を踏んだことは別ものです。
- 自分で発行したトークンと他社が発行したトークンでは、根拠になる改正が別です。どちらの話をしているのかを最初に整理しておくと迷いが減ります。
- 令和5年12月版までを引いた資料は、問番号が1つずれています。この版に合わせて見直すか、参照した版を明記しておく必要があります。
出典
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

