この版の位置づけ
令和4年12月22日、国税庁は「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。暗号資産FAQとしては7番目の版にあたります。問の数は34問で、前の令和3年12月22日版の33問から1問だけ増えました。
数の上ではプラス1問の改訂です。ところがこの版は、問の中身よりも呼び方のほうが大きく変わりました。それまで1から順に振られていた通し番号が、「章番号-枝番」の形に置き換わっています。問1、問2、問3ではなく、1-1、1-2、1-3という書き方です。
この変更は、過去の資料を読むときに効いてきます。この版より前に書かれた解説が「問9」と書いているとき、その番号はもう、いまのFAQのどこも指していません。
骨格
| 前の版からの変化 | 内容 |
|---|---|
| 問の数 | 33問から34問になりました。増えたのは1問です。 |
| 番号体系 | 通し番号(1〜33)から、章番号と枝番の組み合わせ(1-1、2-1、3-1…)に変わりました。 |
| 章立て | 7章です。1 所得税・法人税共通関係/2 所得税関係/3 法人税関係/4 相続税・贈与税関係/5 源泉所得税関係/6 消費税関係/7 法定調書関係。 |
| 新設された問 | ≪1 所得税・法人税共通関係≫の 1-7「非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引」の1問です。 |
| 章の並び順 | 変わっていません。前の版の章の順序が、そのまま1章から7章に振られた形です。 |
| 税制改正 | 伴っていません。令和4年度の税制改正の大綱には「仮想通貨」「暗号資産」の語が1回も現れません。 |
番号の付け方は、何から何に変わったのか
前の版まで、問には1から33までの番号が振られていました。章の区切りはありましたが、番号は章をまたいで通しで進みます。所得税関係の最初の問が7、法人税関係の最初の問が20、という具合です。
この版では、章に1から7までの番号が付き、問の番号はその章の中で振り直されました。所得税関係の最初の問は2-1、法人税関係の最初の問は3-1になります。番号を見れば何の税目の問かがすぐ分かる形です。
章ごとの問の数は、新設された1問を除いて前の版と一致します。旧番号と新番号の対応は、そこから次のように読み取れます。
| 章 | 前の版の通し番号 | この版の番号 |
|---|---|---|
| 1 所得税・法人税共通関係 | 1〜6 | 1-1〜1-6(末尾に1-7を新設) |
| 2 所得税関係 | 7〜19 | 2-1〜2-13 |
| 3 法人税関係 | 20〜25 | 3-1〜3-6 |
| 4 相続税・贈与税関係 | 26〜27 | 4-1〜4-2 |
| 5 源泉所得税関係 | 28 | 5-1 |
| 6 消費税関係 | 29〜30 | 6-1〜6-2 |
| 7 法定調書関係 | 31〜33 | 7-1〜7-3 |
ずれ幅は章によって違います。所得税関係は6を引き、法人税関係は19を引き、法定調書関係は30を引いた番号が、この版の枝番です。ひとつの引き算で全部を変換できるわけではない、というところが厄介です。
古い解説が引く「問○」は、どこを指しているのか
暗号資産の税務について書かれた解説記事や書籍が「FAQ問9」「FAQ問22」と書いているとき、その番号は令和4年12月版より前の通し番号です。いまのFAQを開いて9番目の問を探しても、同じ問には行き着きません。
やっかいなのは、番号の付け替えがこの1回で終わっていないことです。この版で新設された1-7「非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引」は、いまの最新版では1-8になっています。令和6年12月版で1-4「暗号資産による寄附を行った場合」が新設され、それ以降の番号が1つずつ繰り下がったためです。
その結果、いまの1-7は「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」という別の問になっています。同じ「1-7」が、令和4年12月版と最新版とで違う問を指している、ということです。番号だけを頼りに引き当てると、取り違えます。
法人税関係の番号は、さらに動いています。この版では3-1から3-6までの6問でしたが、令和5年12月版で「3-1 暗号資産関係」と「3-2 電子決済手段関係」に分かれ、枝番が3-1-1のように3段になりました。法人課税の考え方は、法人は、持っているだけで課税されるのかにまとめています。
実質的に新しくなったのは、どの問なのか
この版で新設された問は、1-7「非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引」の1問だけです。番号の付け替えという見た目の大きな変化の陰で、内容として増えたのはここだけ、ということになります。
置かれた場所は、個人にも法人にも共通してかかわる1章の末尾です。見出しに並ぶ「非居住者」と「外国法人」は、どちらも日本の外側にいる人・法人を指す用語で、この2つが暗号資産FAQの見出しに現れたのは、この版が最初です。前の版までのFAQは、日本に居る個人と、日本の法人が取引する場面を前提に組み立てられていました。国境をまたぐ取引が正面から扱われたのは、この問が初めてになります。
暗号資産は、取引所の所在地と、利用者の居住地と、暗号資産そのものの所在が、必ずしも同じ国にありません。そのため、日本の税金がかかるのかどうかという入口の判定が、そもそも難しい資産です。この問は、その入口に1つ目の手がかりを置いたものと読めます。
暗号資産の税金を考えるときに、どの順序で何を見ればよいかは、暗号資産の税金、何を見ればいいのかで整理しています。
〔令和4年12月更新〕が付いているのは、どの問なのか
令和5年12月版から、FAQの目次には各行に〔令和○年○月更新〕〔令和○年○月追加〕という注記が入るようになりました。これをたどると、どの問がいつ手を入れられたかが分かります。
最新の令和7年12月版の目次で〔令和4年12月更新〕が付いているのは、次の6問です。番号は最新版のものです。
- 1-8 非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引(令和4年12月版では1-7として新設された問です)
- 2-1 暗号資産取引による所得の総収入金額の収入すべき時期
- 2-3 暗号資産の必要経費
- 2-10 暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い
- 4-1 暗号資産を相続や贈与により取得した場合
- 7-3 国外財産調書への記載の要否
並べてみると、1-8と、国外財産調書にかかわる7-3という、国外に関係する問が2つ入っています。国境をまたぐ場面が、新設と更新の両方で触られた版だった、という見方ができます。
2-1、2-3、2-10は所得税関係で、収入の時期、必要経費、低額や無償で手放した場合という、個人の申告の骨格にあたる問です。4-1は相続や贈与で暗号資産を取得した場合の問で、こちらは相続・贈与で暗号資産をもらったときで扱っています。ただし、それぞれの問の中身がどう変わったのかまでは、目次の注記からは読み取れません。
この改訂に税制改正は伴っていたのか
伴っていません。税制改正の大綱を年度ごとに見ていくと、「仮想通貨」「暗号資産」の語が1回も現れない年度があります。令和4年度は、そのどちらの語も現れない年度です。
ただし、日付の並びには目を留めておく価値があります。この版が公表された翌日の令和4年12月23日に、令和5年度税制改正の大綱が閣議決定されています。大綱には、自己が発行した暗号資産を期末の時価評価の対象から外すことなどが盛り込まれました。
つまりこのFAQは、法人課税に大きく手が入る大綱が決まる前日に公表されています。大綱の内容がFAQの問として現れるのは、翌年の令和5年12月版です。その版で法人税関係が2つに分かれ、自己発行の暗号資産にかかわる問などが新設されました。自分で発行したトークンの扱いは、自分で発行したトークンに、含み益課税はかかるのかで扱っています。
この版そのものは、法令が変わったから書き換えたという改訂ではありません。問の並べ方を整理し、国外にかかわる問を1つ足した版です。改訂の全体像は暗号資産FAQ改訂史に、直前の版は令和3年12月版にまとめています。
実務で迷いが生じるところ
- 手元の資料が「問○」とだけ書いている場合、通し番号か枝番かを資料の日付から判断する必要があります。令和4年12月より前のものであれば通し番号です。
- 同じ番号が版によって違う問を指すことがあります。1-7がその例です。番号だけでなく、見出しの文言も一緒に控えておくと取り違えを防げます。
- 法人税関係は、枝番が2段か3段かで版が分かれます。3-1とあれば令和5年12月版より前、3-1-1とあれば令和5年12月版以降です。
- 海外に居住しながら日本の取引所を使っている場合などは、非居住者・外国法人の問と、国外財産調書の問の両方にかかわります。片方だけを見て済ませると、もう片方の検討が抜けます。
- 目次の注記で「更新」とあっても、何が変わったのかまでは分かりません。変更点を確かめるには、前後の版のPDFを並べて読むことになります。
出典
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

