自分が滞納したわけではないのに、他人の国税を納める義務を負わされることがあります。国税徴収法の第二次納税義務です。
会社をたたむとき、事業を家族に譲るとき、資産を無償で渡すとき。この制度は、そういう場面で働きます。
通則 ── いきなり来るわけではない
国税徴収法第32条第1項。
税務署長は、納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは、その者に対し、政令で定めるところにより、徴収しようとする金額、納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければならない。この場合においては、その者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長に対しその旨を通知しなければならない。
第4項に、順序の定めがあります。
第二次納税義務者の財産の換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるときを除き、第一項の納税者の財産を換価に付した後でなければ、行うことができない。
第5項は求償権を確認しています。
この章の規定は、第二次納税義務者から第一項の納税者に対してする求償権の行使を妨げない。
払わされたら、本来の納税者に請求できます。ただし、その相手に資力がないから第二次納税義務が発動しているのが通常です。
第3項は、国税通則法38条1項2項(繰上請求)・第4章第1節(納税の猶予)・55条(納付委託)を「第一項の場合」について準用します。準用の対象は、第二次納税義務者から徴収する場面です。つまり、第二次納税義務者自身が納税の猶予等を受けられる、という規定です。
どんな類型があるか
国税徴収法第33条から第41条までに並んでいます。いずれの類型にも「滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる」という徴収不足要件がありますが、何を・誰を対象に判定するかは条ごとに違います(35条は当該株式等を除いて判定、40条の合資会社は無限責任社員への執行後、41条2項は名義人を含めて判定、39条は徴収共助による徴収を含む)。
| 条 | 条見出し | 誰が負うか |
|---|---|---|
| 33条 | 合名会社等の社員の第二次納税義務 | 合名会社の社員、合資会社の無限責任社員、税理士法人・弁護士法人等の社員(監査法人は無限責任社員)。連帯して責任を負う |
| 34条 | 清算人等の第二次納税義務 | 清算人、残余財産の分配・引渡しを受けた者 |
| 35条 | 同族会社の第二次納税義務 | 滞納者の持つ同族会社株式・出資が換価困難な場合の、その同族会社 |
| 36条 | 実質課税額等の第二次納税義務 | ①収益が法律上帰属するとみられる者、②貸付けを法律上行ったとみられる者、③行為計算否認により利益を受けたものとされる者 |
| 37条 | 共同的な事業者の第二次納税義務 | 生計を一にする親族(事業から所得を受けているもの)、同族会社の判定基礎株主・社員 |
| 38条 | 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務 | 生計を一にする親族・被支配会社等の事業譲受人 |
| 39条 | 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務 | 無償・低額で譲り受けた者、債務免除等で利益を受けた者 |
| 40条 | 偽りその他不正の行為により国税を免れた株式会社の役員等の第二次納税義務 | 不正行為をした役員等のうち特定役員等に当たる者 |
| 41条 | 人格のない社団等に係る第二次納税義務 | ①財産の名義人である第三者、②財産の払戻・分配を受けた者 |
誤解が多い3つ
35条 ── 株を持っているだけでは足りない
条文は、株式・出資に「次に掲げる理由」があり、かつ、滞納者のその他の財産で徴収不足であることを求めます。
一 その株式又は出資を再度換価に付してもなお買受人がないこと。
二 その株式若しくは出資の譲渡につき法律若しくは定款に制限があり、又は株券の発行がないため、これらを譲渡することにつき支障があること。
しかも徴収不足の判定は「その者の財産(当該株式又は出資を除く)につき」行い、責任の限度となる株式・出資からは、法定納期限の1年以上前に取得したものが除かれます。株式の価額は、納付通知書を発する時の資産総額から負債総額を控除した額を基礎に計算します(2項)。
37条 ── 「重要な財産を持っている人」なら誰でも、ではない
次の各号に掲げる者が納税者の事業の遂行に欠くことができない重要な財産を有し、かつ、当該財産に関して生ずる所得が納税者の所得となつている場合において……当該各号に掲げる者は、当該財産(取得財産を含む。)を限度として……第二次納税義務を負う。
一 納税者が個人である場合 その者と生計を一にする配偶者その他の親族でその納税者の経営する事業から所得を受けているもの
二 納税者がその事実のあつた時の現況において同族会社である場合 その判定の基礎となつた株主又は社員
第三者の地主や貸主は対象外です。主体が限定され、そのうえで「その財産から生ずる所得が納税者の所得となっている」という第2要件が「かつ」で並びます。
39条 ── 責任の上限が2種類ある
滞納者の国税につき滞納処分の執行……をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免れた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他滞納者と特殊な関係のある個人又は同族会社(これに類する法人を含む。)で政令で定めるもの(「親族その他の特殊関係者」)であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
第三者なら「受けた利益が現に存する限度」。親族その他の特殊関係者なら「受けた利益の限度」で、現存しているかどうかを問いません。使ってしまっても消えません。特殊関係者には同族会社等の法人も含まれ、範囲は政令で定まります。
なお39条の括弧書きは、日本が租税条約等に基づき相手国等に対して徴収の共助を要請した場合の、その要請による徴収も「滞納処分の執行」に含めています。
34条と38条の「1年」
34条(清算人等) ── 「国税を納付しないで残余財産の分配又は引渡しをしたとき」が要件です。清算人は分配・引渡しをした財産の価額を限度、受けた者はその受けた財産の価額を限度として責任を負います。第2項に信託が終了した場合の清算受託者の規定があります。
38条(事業を譲り受けた特殊関係者) ── 生計を一にする親族その他特殊な関係のある個人、又は被支配会社(法人税法67条2項の会社)で政令で定めるものに事業を譲渡し、かつ譲受人が同一又は類似の事業を営んでいる場合に、譲受財産の価額を限度として責任を負います。ただし、その譲渡が法定納期限より1年以上前にされている場合は、義務を負いません。
39条は「法定納期限の1年前の日以後」、38条は「1年以上前なら対象外」。41条2項(払戻・分配)も「1年以上前なら対象外」です。1年という線が、どちら向きに引かれているかを読み違えないでください。
相続税の連帯納付義務とは別のもの
第二次納税義務は国税徴収法の制度です。相続税法34条(連帯納付の義務等)の連帯納付義務は別の制度で、主体は相続人に限りません。同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者が、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として互いに責任を負います。ただし書に、申告書の提出期限等から一定期間を経過した場合などの除外があります。
実務で迷いが生じるところ
- 「不足すると認められる」はいつ判定するのか。告知の時点の資力の見方が問題になります
- 株式を家族に贈与したら39条か。無償譲渡に当たるかと、法定納期限の1年前の日以後かが問われます
- 役員報酬の未払いを免除したら。「債務の免除その他第三者に利益を与える処分」の射程です
- 告知に不服があるときはどうするか。納付通知書による告知は国税に関する処分ですから、国税通則法75条により再調査の請求又は審査請求ができます(期間は同法77条)。徴収法171条は督促・差押え等についての期限の特例であって、告知そのものの手続規定ではありません
- 第二次納税義務者が払ったあと、本来の納税者から回収できるか。32条5項の求償権はありますが、回収可能性は別問題です
この制度が動くのは、事業承継・法人清算・資産移転の場面です。渡す前なら組み方があります。渡したあとでは、条文の要件に当てはまるかどうかの勝負になります。動く前にご相談ください。
根拠条文
- 国税徴収法第32条(第二次納税義務者への告知)
- 同法第33条(合名会社等の社員)・第34条(清算人等)・第35条(同族会社)・第36条(実質課税額等)・第37条(共同的な事業者)・第38条(事業を譲り受けた特殊関係者)・第39条(無償又は著しい低額の譲受人等)・第40条(偽りその他不正の行為により国税を免れた株式会社の役員等)・第41条(人格のない社団等)
- 同法第171条(滞納処分に関する不服申立て等の期限の特例)
- 国税通則法第38条(繰上請求)、第4章第1節(納税の猶予)、第55条(納付委託)── 徴収法32条3項が準用
- 国税通則法第75条(国税に関する処分についての不服申立て)、第77条(不服申立期間)
- 相続税法第34条(連帯納付の義務等)
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。政令(国税徴収法施行令)で定める範囲は本稿では扱っていません。一般的な解説であり、個別の判定には取引の内容と時期の確認が必要です。










