日本に場所があっても、そこでの活動が準備的・補助的なら恒久的施設(PE)になりません。ただし、この除外は思っているより狭いです。
除外される活動
法人税法施行令第4条の4第4項(所得税法施行令第1条の2第4項も、主語が「非居住者又は外国法人」になるだけで同旨)。
外国法人の国内における次の各号に掲げる活動の区分に応じ当該各号に定める場所(当該各号に掲げる活動を含む。)は、第一項に規定する政令で定める場所及び第二項に規定する政令で定めるものに含まれないものとする。ただし、当該各号に掲げる活動(第六号に掲げる活動にあつては、同号の場所における活動の全体)が、当該外国法人の事業の遂行にとつて準備的又は補助的な性格のものである場合に限るものとする。
| 号 | 活動 |
|---|---|
| 1号 | 当該外国法人に属する物品・商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること |
| 2号 | 当該外国法人に属する物品・商品の在庫を保管・展示・引渡しのためにのみ保有すること |
| 3号 | 当該外国法人に属する物品・商品の在庫を事業を行う他の者による加工のためにのみ保有すること |
| 4号 | 物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集することのみを目的として1項各号の場所を保有すること |
| 5号 | 1〜4号以外の活動を行うことのみを目的として1項各号の場所を保有すること |
| 6号 | 1〜4号の活動とそれ以外の活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として1項各号の場所を保有すること |
1号から3号までは「当該外国法人に属する」物品・商品に限られます。他人の貨物を預かる物流拠点は、そもそも1〜3号の射程外です。
5号があるので、活動の種類は限定されていません。「これは列挙にない活動だから除外されない」という読み方は誤りです。
なお除外の効果は、第1項の場所だけでなく「第二項に規定する政令で定めるもの」=長期建設工事現場等にも及びます。
ただし書がすべて
除外の入口は各号ですが、決め手は本文のあとのただし書です。各号に当たっても、その活動が「当該外国法人の事業の遂行にとつて準備的又は補助的な性格のもの」でなければ、除外されません。
この構造がどれだけ効くかは、昔の条文と比べると分かります。2018年4月1日時点の法人税法施行令4条の4第2項は、こうでした。
一 外国法人がその資産を購入する業務のためにのみ使用する一定の場所
二 外国法人がその資産を保管するためにのみ使用する一定の場所
三 外国法人が広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究その他その事業の遂行にとつて補助的な機能を有する事業上の活動を行うためにのみ使用する一定の場所
補助的な機能という限定は3号だけに付いていました。購入拠点(1号)と保管拠点(2号)は、性格を問わず除外されていたのです。現行はそうではありません。
通販事業者の物流倉庫のように、保管と配送が事業の中核をなしている場合、1号の文言に当てはまっても「準備的又は補助的」とは言えず、除外されません。
6号だけは判定単位が違い、「同号の場所における活動の全体」で見ます。
細分化して逃げることも封じられている
第5項が、活動を複数の場所や関連者に分散させて、それぞれを準備的・補助的に見せる手口を封じます。3つの類型があり、イの中身が類型ごとに違います。
| 号 | 場面 | イ(PE該当を問う対象) |
|---|---|---|
| 1号 | 同一の外国法人(国内でその法人に代わって活動する者を含む)が、その場所と国内の他の場所で活動 | 他の場所が当該外国法人のPEに該当すること |
| 2号 | その外国法人と関連者が、同じ場所で活動 | その事業を行う一定の場所そのものが関連者のPEに該当すること |
| 3号 | その外国法人がその場所で、関連者が他の場所で活動 | 他の場所が関連者のPEに該当すること |
2号には「他の場所」が出てきません。グループ会社が同じビルに入っている、という典型場面がこれです。存在しない「他の場所」を探しにいくと判定を誤ります。
2号・3号のイには読み替えがあります。関連者が内国法人又は個人である場合は、「恒久的施設」ではなく「恒久的施設に相当するもの」で判定します。内国法人にPEという概念はないためです。
ロは、細分化活動の組合せによる活動の全体が準備的・補助的な性格のものでないこと。1号ロは「その事業の遂行にとつて」、2号・3号ロは「当該外国法人の事業の遂行にとつて」と、視点が外国法人の事業に固定されています。
そして各号に共通の限定が括弧書きで付いています。1号は活動が「一体的な業務の一部として補完的な機能を果たすときに限る」、2号・3号は「これらの者による一体的な業務の一部として補完的な機能を果たすときに限る」。
バラバラの事業をたまたま複数拠点でやっているだけなら、5項は働きません。一体の業務を分けたときに働きます。
「関連者」は、その外国法人と特殊の関係にある者(国内でその者に代わって活動する代理人を含む)です。特殊の関係は第9項が「発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の財務省令で定める特殊の関係」と定めます。50%超の保有は例示です。委任先の法人税法施行規則第3条の4は「その他の一方の者が他方の者を直接又は間接に支配する関係」まで含めています。
建設現場にも及ぶ
第4項の除外は、柱書が「第二項に規定する政令で定めるもの」を対象に含めているので、長期建設工事現場等に初めから及びます。第6項の読み替えを待つ必要はありません。
第6項が受け持つのは、①場所の保有を要件とする第4項4号〜6号を長期建設工事現場等にも使えるようにすること、②第5項(細分化防止)の「事業を行う一定の場所」に長期建設工事等を行う場所を取り込むこと、の2点です。
実務で迷いが生じるところ
- 自社の倉庫は除外されるか。1号に当たるかではなく、その事業にとって準備的・補助的かが決め手です
- 他社の貨物も扱っている拠点は。1〜3号は「当該外国法人に属する」物品・商品に限られます
- 駐在員事務所の情報収集は。4号の文言と、ただし書の当てはめの両方を見ます
- 市場調査だけの拠点は。5号に入りますが、ただし書は同じようにかかります
- グループ会社が同じビルに入っている場合は。5項2号の場面です。「他の場所」は要りません
- 条約が優先するのか。法法2条12号の19の柱書ただし書により、条約に異なる定めがあれば条約が優先します
「うちは倉庫だけだからPEではない」は、いまの条文では通りません。その場所が事業の中でどういう役割を果たしているかで決まります。日本での物流・在庫・調達の設計を変える前にご相談ください。
根拠条文
- 法人税法施行令第4条の4(恒久的施設の範囲)第4項・第5項・第6項・第9項
- 法人税法施行規則第3条の4(特殊の関係)
- 法人税法第2条第12号の19(恒久的施設)── 柱書ただし書
- 所得税法施行令第1条の2(恒久的施設の範囲)第4項・第5項
- 所得税法第2条第1項第8号の4
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。租税条約の定義は本稿では扱っていません。一般的な解説であり、個別の判定には拠点の役割の確認が必要です。










