恒久的施設(PE)には3つの型があります。そのうち場所そのものがPEになるのが、実務でいう支店PEです(条文に「支店PE」という語はありません。法人税法2条12号の19イに掲げるものを指す通称です)。
条文の位置
法人税法第2条第12号の19。柱書とただし書から読みます。
恒久的施設 次に掲げるものをいう。ただし、我が国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約において次に掲げるものと異なる定めがある場合には、その条約の適用を受ける外国法人については、その条約において恒久的施設と定められたもの(国内にあるものに限る。)とする。
イ 外国法人の国内にある支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるもの
条約が優先します。条約の適用を受ける外国法人については、条約のPE定義がそのまま国内法上のPE定義になります。国内法だけ読んで結論を出せません。
所得税法第2条第1項第8号の4イにも同じ構造の規定があります。分かれているのは「個人/法人」ではなく「所得税/法人税」という税目です。所得税法側の主語は「非居住者又は外国法人」で、外国法人も対象に入ります(源泉徴収の場面などで働きます)。
政令が挙げる場所
法人税法施行令第4条の4第1項。条見出しは「(恒久的施設の範囲)」です。
一 事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場又は作業場
二 鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他の天然資源を採取する場所
三 その他事業を行う一定の場所
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場 |
| 2号 | 鉱山、坑井、採石場その他の天然資源採取場所 |
| 3号 | その他事業を行う一定の場所(受け皿) |
3号が受け皿になっています。1号2号に名前が挙がっていない場所でも、「事業を行う一定の場所」に当たれば入ります。
所得税法施行令第1条の2第1項も、各号の列挙は同文です。違うのは柱書が引用する定義規定だけ(法令は「法第二条第十二号の十九イ」、所令は「法第二条第一項第八号の四イ」)です。
場所があってもPEにならない場合がある
同条第4項が、一定の活動しか行わない場所を除外します。柱書は、除外の効果が「第一項に規定する政令で定める場所及び第二項に規定する政令で定めるもの」(=長期建設工事現場等)に及ぶと定めています。
各号は、当該外国法人に属する物品・商品の保管・展示・引渡しのためだけに使う施設、その在庫を保管等のためだけに保有する場所、物品若しくは商品の購入又は情報の収集のみを目的として保有する場所などです。
決め手は各号ではなく、ただし書です。
ただし、当該各号に掲げる活動(第六号に掲げる活動にあつては、同号の場所における活動の全体)が、当該外国法人の事業の遂行にとつて準備的又は補助的な性格のものである場合に限るものとする。
各号の文言に当てはまっても、その事業にとって準備的・補助的でなければ除外されません。名前が倉庫でも同じです。
さらに第5項が、活動を複数の場所や関連者に分けて、それぞれを準備的・補助的に見せる手口を封じます。無条件の禁止ではありません。それらの活動が「一体的な業務の一部として補完的な機能を果たすときに限り」、かつ、①他の場所(2号では同じ場所)が自社または関連者のPEに該当するか、②細分化活動の組合せ全体が準備的・補助的でないか、のいずれかに該当するときに、第4項の除外を使えなくします。
PEがあると何が起きるか
法人税法第141条第1号。課税標準は2本立てです。
一 恒久的施設を有する外国法人 各事業年度の次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一項第一号(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第一項第二号から第六号までに掲げる国内源泉所得(同項第一号に掲げる国内源泉所得に該当するものを除く。)
イが恒久的施設帰属所得、ロがPEに帰属しないその他の国内源泉所得です。PE帰属所得だけではありません。
確定申告は法人税法第144条の6。ただし書があります。
ただし、第一号及び第二号に規定する国内源泉所得に係る所得の金額の全部につき租税条約……の規定その他政令で定める規定により法人税を課さないこととされる場合は、当該申告書を提出することを要しない。
実務で迷いが生じるところ
- レンタルオフィスやコワーキングの一席は「一定の場所」か。場所の恒常性と支配の程度が問われます
- 従業員の自宅は。「事業を行う一定の場所」に当たるかという論点があります
- サーバーだけを置いている場合は。人の関与の要否が問題になります
- 短期間しか使わない場所は。「一定の」の解釈です
- 条約がある国の法人はどう読むか。12号の19柱書ただし書により、条約の定義が優先します
- 個人事業者・非居住者の場合の条文はどれか。所得税法2条1項8号の4、所得税法施行令1条の2です
「日本に支店を置いていないからPEはない」とは限りません。判定は場所の名前ではなく、条文の当てはめで決まります。海外法人の日本進出を検討する段階でご相談ください。
根拠条文
- 法人税法第2条第12号の19(恒久的施設)── 柱書ただし書・イ
- 法人税法施行令第4条の4(恒久的施設の範囲)第1項・第4項・第5項
- 法人税法第138条第1項第1号(恒久的施設帰属所得)、第141条第1号(課税標準)、第144条の6(確定申告)
- 所得税法第2条第1項第8号の4イ
- 所得税法施行令第1条の2(恒久的施設の範囲)第1項・第4項・第5項
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。租税条約の定義は本稿では扱っていません。一般的な解説であり、個別の判定には拠点の実態の確認が必要です。










