恒久的施設(PE)は場所だけではありません。人がPEになります。それが代理人PEです。日本に一坪の事務所も持たない外国法人が、日本の販売代理店の動き方によってPEを持つことになります。
ただし、その前に読む条文があります。
まず柱書のただし書
法人税法第2条第12号の19。
恒久的施設 次に掲げるものをいう。ただし、我が国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約において次に掲げるものと異なる定めがある場合には、その条約の適用を受ける外国法人については、その条約において恒久的施設と定められたもの(国内にあるものに限る。)とする。
ハ 外国法人が国内に置く自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの
条約の適用を受ける外国法人には、条約のPE定義がそのまま国内法上の定義になります。代理人PEの定義は条約ごとに違い、古い型の条約は「契約を締結する権限」を要件にしています。以下の政令の基準がそのまま働くのは、条約がない場合や、条約の定義が新しい型になっている場合です。
所得税法第2条第1項第8号の4ハにも同じ構造の規定があり、主語は「非居住者又は外国法人」です。個人(非居住者)の代理人PEもあります。
「契約締結代理人等」の要件
法人税法施行令第4条の4第7項。
法第二条第十二号の十九ハに規定する政令で定める者は、国内において外国法人に代わつて、その事業に関し、反復して次に掲げる契約を締結し、又は当該外国法人によつて重要な修正が行われることなく日常的に締結される次に掲げる契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者(……)とする。
一 当該外国法人の名において締結される契約
二 当該外国法人が所有し、又は使用の権利を有する財産について、所有権を移転し、又は使用の権利を与えるための契約
三 当該外国法人による役務の提供のための契約
| 論点 | 条文の定め |
|---|---|
| 場所 | 国内において |
| 頻度 | 反復して |
| 行為 | 契約を締結する、又は主要な役割を果たす |
| 「主要な役割」型の要件 | その契約が、外国法人によって重要な修正が行われることなく日常的に締結されるもの |
| 契約の3類型 | ①外国法人の名において ②外国法人が所有し、又は使用の権利を有する財産の所有権移転・使用権付与 ③外国法人による役務提供 |
署名権限がなくても該当します。実質的に交渉をまとめ、本国は追認するだけ、という形は「主要な役割を果たす者」に入ります。
契約の種類も広い。2号は「所有し、又は使用の権利を有する」財産です。外国法人が自ら所有していない、使用許諾を受けているだけの資産のサブライセンスも入り得ます。
昔の条文と比べると分かる
2018年4月1日時点の法人税法施行令4条の4第3項は、こうでした。
一 外国法人のために、その事業に関し契約……を締結する権限を有し、かつ、これを継続的に又は反復して行使する者……
二 外国法人のために、顧客の通常の要求に応ずる程度の数量の資産を保管し、かつ、当該資産を顧客の要求に応じて引き渡す者
三 専ら又は主として一の外国法人……のために……
現行との違いは2つです。旧1号は「締結する権限」を正面から要求していました。署名権限のない者も旧3号(専属代理人)で拾われてはいましたが、専属であることが必要でした。現行の第7項は、その専属性の限定を外し、「重要な修正が行われることなく日常的に締結される契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者」という一般基準に置き換えています。
専属でない販売店でも入るようになった。ここが効いています。
除外 ── 準備的・補助的なら該当しない
第7項の括弧書きに除外があります。
(当該者の国内における当該外国法人に代わつて行う活動(当該活動が複数の活動を組み合わせたものである場合にあつては、その組合せによる活動の全体)が、当該外国法人の事業の遂行にとつて準備的又は補助的な性格のもの……のみである場合における当該者を除く。……)
その中にさらに括弧書きがあり、仮定計算を求めます。代理人の活動を「第5項各号の事業を行う一定の場所において行う事業上の活動」とみなして第5項を適用したとしたら、第4項の除外が使えなくなる——そういう活動は、この「準備的又は補助的」から外されます。現実にどこかの場所で第4項の適用が排除されていることを要件とする規定ではありません。
独立代理人は該当しない。ただし例外がある
第8項。
国内において外国法人に代わつて行動する者が、その事業に係る業務を、当該外国法人に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合には、当該者は、契約締結代理人等に含まれないものとする。ただし、当該者が、専ら又は主として一又は二以上の自己と特殊の関係にある者に代わつて行動する場合は、この限りでない。
要件は2つで「かつ」です。独立して行うこと、かつ通常の方法により行うこと。片方だけでは足りません。
そしてただし書。専らまたは主として、特殊の関係にある者のために動いている代理人は、独立代理人として扱われません。
「特殊の関係」は持株比率だけではない
第9項は、特殊の関係を「発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の財務省令で定める特殊の関係」と定めます。50%超の保有は例示です。
委任先の法人税法施行規則第3条の4を読むと、こうなっています。
一 ……百分の五十を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に保有する関係その他の一方の者が他方の者を直接又は間接に支配する関係
二 二の法人が同一の者によつてそれぞれ……百分の五十を超える……保有される場合における当該二の法人の関係その他の二の者が同一の者によつて直接又は間接に支配される場合における当該二の者の関係
持株比率が50%以下でも、実質的な支配関係があれば特殊の関係です。持株だけで独立代理人性を判定してはいけません。
なお、移転価格税制の国外関連者(措法66条の4第1項)は「百分の五十以上」です。代理人PEの特殊の関係は「超える」、国外関連者は「以上」。閾値が違います。
PEになると何が起きるか
法人税法第141条第1号により、課税標準は恒久的施設帰属所得(法法138条1項1号)と、PEに帰属しないその他の国内源泉所得(同項2号〜6号)の2本立てになります。確定申告は法人税法第144条の6(同条ただし書に、租税条約等により全部非課税となる場合の申告不要)。個人(非居住者)側は所得税法161条1項1号・164条です。
実務で迷いが生じるところ
- 「反復して」は何回からか。回数の明示はありません
- 「主要な役割を果たす」の線引きはどこか。交渉の実質をどこまで担っているかです
- 本国の承認プロセスがあれば安全か。「重要な修正が行われることなく日常的に締結される」かどうかが問われます
- 販売代理店は独立代理人か。8項の2要件と、ただし書の当てはめです
- グループ内の販社はどうなるか。8項ただし書がまさにこの場面を想定しています
- 条約上の代理人PEの定義は同じか。12号の19柱書ただし書により条約が優先します
日本に拠点を置かなくても、日本での売り方によってPEになります。代理店契約・販売店契約の条項の書き方と、実際の運用の両方が見られます。契約を結ぶ前、または運用を変える前にご相談ください。
根拠条文
- 法人税法第2条第12号の19(恒久的施設)── 柱書ただし書・ハ
- 法人税法施行令第4条の4(恒久的施設の範囲)第4項・第5項・第7項・第8項・第9項
- 法人税法施行規則第3条の4(特殊の関係)
- 法人税法第138条第1項第1号、第141条第1号、第144条の6
- 租税特別措置法第66条の4第1項(国外関連者。「百分の五十以上」)
- 所得税法第2条第1項第8号の4ハ、第161条第1項第1号、第164条
- 所得税法施行令第1条の2(恒久的施設の範囲)
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。租税条約の定義は本稿では扱っていません。一般的な解説であり、個別の判定には契約と運用の実態の確認が必要です。










