建設工事は、原則として1年を超えると恒久的施設(PE)になります。日本に事務所を置いていなくても、現場そのものがPEです。例外は後述します。
条文の位置
法人税法第2条第12号の19ロ。
ロ 外国法人の国内にある建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供を行う場所その他これに準ずるものとして政令で定めるもの
所得税法第2条第1項第8号の4ロも、主語が「非居住者又は外国法人」になるだけで同じ形です。
1年を超えるかどうか
法人税法施行令第4条の4第2項。
法第二条第十二号の十九ロに規定する政令で定めるものは、外国法人の国内にある長期建設工事現場等(外国法人が国内において長期建設工事等(建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供で一年を超えて行われるものをいう。……)を行う場所をいい、外国法人の国内における長期建設工事等を含む。……)とする。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 建設、据付けの工事、これらの指揮監督の役務の提供 |
| 期間 | 1年を超えて行われるもの |
| PEになるもの | その場所(長期建設工事現場等)。工事そのものも含む |
施工しなくても対象になり得ます。条文は「これらの指揮監督の役務の提供」を並べています。いわゆる監理業務が典型ですが、当てはまるかは業務の中身で判断します。
所得税法施行令第1条の2第2項も、主語と参照条項を置き換えれば実質同文です。
契約を分けても逃げられない
同条第3項が、契約分割による回避を封じています。
二以上に分割をして……契約が締結されたことにより……当該分割後の契約に係る建設工事等……が一年を超えて行われないこととなつたとき(当該契約分割後建設工事等を行う場所……を前項に規定する長期建設工事現場等に該当しないこととすることが当該分割の主たる目的の一つであつたと認められるときに限る。)における……判定は、当該契約分割後建設工事等の期間に国内における当該分割後の他の契約に係る建設工事等の期間(当該契約分割後建設工事等の期間と重複する期間を除く。)を加算した期間により行うものとする。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない。
読むべき点が3つあります。
1. 発動要件がある。「長期建設工事現場等に該当しないこととすること」が分割の主たる目的の一つであったと認められるときに限られます
2. 重複期間は除く。単純な足し算ではありません
3. ただし書がある。正当な理由に基づく分割なら適用されません
契約を8か月ずつ2本に割れば済む、という話ではありません。もっとも「正当な理由」の内容は条文に定義がなく、実務上の論点として残ります。
準備的・補助的の除外も、細分化防止も及ぶ
建設現場だけが別扱いになっているわけではありません。ただし、及び方が2つに分かれます。
第4項(準備的・補助的活動による除外)は、柱書が最初から建設PEを対象にしています。
……第一項に規定する政令で定める場所及び第二項に規定する政令で定めるものに含まれないものとする。
「第二項に規定する政令で定めるもの」=長期建設工事現場等です。第6項の読み替えを待たずに、第4項は建設現場に直接及びます。
第6項が受け持つのは別の部分です。条文は、長期建設工事現場等を「第四項第四号から第六号までに規定する第一項各号に掲げる場所」とみなし、長期建設工事等を行う場所を「前項各号に規定する事業を行う一定の場所」とみなす、という個別のみなしを置いています。第4項4号〜6号は「第一項各号に掲げる場所を保有すること」を要件にしているため、その技術的な手当てと、第5項(細分化防止)を建設現場にも働かせるための規定です。
条約が優先する
法人税法2条12号の19の柱書ただし書、および所得税法2条1項8号の4の柱書ただし書により、租税条約に異なる定めがあれば、その条約の適用を受ける者について、条約のPE定義(国内にあるものに限る)が国内法上の定義になります。
建設PEの期間基準は条約ごとに違うことがあります。国内法の「1年超」だけで判断できません。相手国との条約を必ず確認してください。
PEになると何が起きるか
法人税法第141条第1号により、課税標準は恒久的施設帰属所得(法法138条1項1号)と、PEに帰属しないその他の国内源泉所得(同項2号〜6号)の2本立てになります。確定申告は法人税法第144条の6。同条ただし書は、国内源泉所得に係る所得の金額の全部につき租税条約等により法人税を課さないこととされる場合の申告不要も定めています。
実務で迷いが生じるところ
- 期間はいつから数えるのか。準備工事や資材搬入の扱いが問題になります
- 中断があったらどうなるか。継続性の判定です
- 下請けの期間は元請けに合算されるのか。現場単位の見方が問われます
- 保証期間中の手直し工事は含むか。工事の終期の問題です
- 「正当な理由に基づいて契約を分割した」とは何か。条文に定義がありません
- 条約上の期間基準は何か月か。相手国ごとに違います
日本での工事が1年に近づいたら、その時点で判定の準備が要ります。PEと認定されれば、遡って申告義務が生じます。着工前の契約の組み方で結論が変わる領域です。契約を結ぶ前にご相談ください。
根拠条文
- 法人税法第2条第12号の19ロ(恒久的施設)── 柱書ただし書を含む
- 法人税法施行令第4条の4(恒久的施設の範囲)第2項・第3項・第4項・第5項・第6項
- 法人税法第138条第1項第1号(恒久的施設帰属所得)、第141条第1号(課税標準)、第144条の6(確定申告)
- 所得税法第2条第1項第8号の4ロ、所得税法施行令第1条の2第2項
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。租税条約の期間基準は本稿では扱っていません。一般的な解説であり、個別の判定には契約と工程の確認が必要です。










