国際税務の基礎知識

国外関連者に対する寄附金とは

海外子会社への支援のうち「寄附金」に当たる部分は、限度額の計算を経ずに、そのまま損金不算入になります。国内の一般寄附金にはある損金算入限度額が、ここにはありません。

争点は「いくらまで損金にできるか」ではなく、「そもそも寄附金に当たるか」です。

条文

租税特別措置法第66条の4第3項。

法人が各事業年度において支出した寄附金の額(法人税法第三十七条第七項に規定する寄附金の額をいう。……)のうち当該法人に係る国外関連者に対するもの恒久的施設を有する外国法人である国外関連者に対する寄附金の額で当該国外関連者の各事業年度の同法第百四十一条第一号イに掲げる国内源泉所得に係る所得の金額の計算上益金の額に算入されるものを除く。)は、当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。この場合において、当該法人に対する同法第三十七条の規定の適用については、同条第一項中「次項」とあるのは、「次項又は租税特別措置法第六十六条の四第三項(国外関連者との取引に係る課税の特例)」とする。

後段の読替えが効いています。法人税法37条1項の「寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)」が「次項又は措法66条の4第3項の適用を受ける寄附金の額を除く」となります。つまり国外関連者への寄附金は、一般寄附金の損金算入限度額の計算の基礎から外れます。一般枠を食いつぶすわけではありません。

「国内か国外か」ではなく「国外関連者かどうか」

区分の軸を間違えないでください。

寄附金の相手 扱い
一般(国内・国外を問わず) 法法37条1項の限度額(資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額、又は所得の金額を基礎に政令で計算)まで損金算入
完全支配関係(法人による)がある内国法人 法法37条2項により全額損金不算入
国・地方公共団体、指定寄附金 法法37条3項により限度額計算の枠外(全額損金算入)
特定公益増進法人等・公益信託 法法37条4項・5項の別枠の限度額
国外関連者 措法66条の4第3項により損金不算入(PE帰属所得の益金算入分を除く)

50%未満で特殊の関係もない海外の取引先への寄附金は、国外関連者向けではありません。一般寄附金として限度額の中で処理されます。逆に、兄弟会社や実質支配関係にある外国法人は「子会社」でなくても対象です。

「寄附金」の範囲が広い

問題は、何が「寄附金の額」に当たるかです。法人税法第37条第7項。

前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。……)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

そして第8項。

内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

7項と8項は場面が違います。対価をまったく取らない「無償の供与」は7項。対価は取ったが低いという低廉取引は8項で、こちらには「実質的に贈与……と認められる金額」という絞りが入ります。

実務でよくある形 該当し得る項
海外子会社の債権を放棄した 7項(贈与)
海外子会社への貸付けを無利息にした 7項(経済的利益の無償の供与)
貸付利率が著しく低い 8項(低廉)
借入れを保証して保証料を取らなかった 7項
役務を提供して対価を請求しなかった 7項
出向者の給与を親会社が負担したまま請求しなかった 7項
海外子会社の欠損を補填した 7項

帳簿に「寄附金」と書いていなくても、条文はそれを見ています。名義を問わない、と書いてあります。

ただし、支援がすべて寄附金になるわけではありません。独立企業間の水準で経営指導料・利息・保証料を収受していれば、そもそも贈与でも無償の供与でもありません。7項の括弧書きは広告宣伝費・見本品費用・交際費・接待費・福利厚生費とされるべきものを除いています。8項は「実質的に贈与……と認められる金額」に限っています。

移転価格の否認(1項)との関係

同条第4項。

第一項の規定の適用がある場合における国外関連取引の対価の額と当該国外関連取引に係る同項に規定する独立企業間価格との差額(寄附金の額に該当するものを除く。)は、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

1項(独立企業間価格へのみなし)と3項(寄附金)は、別の道具です。4項の括弧書きが「寄附金の額に該当するものを除く」と書いているとおり、寄附金に当たるものは3項で、そうでない差額は4項で処理されます。

出口にも差があります。相互協議の申立て自体が寄附金課税で排除される規定は、措法66条の4にも法人税法にもありません。ただし、移転価格課税と違って相手国が対応的調整に応じにくく、二重課税が残るリスクが高いと言われます(条文上の定めではなく、実務上の帰結です)。

外国法人の側にも同じ規定がある

措法66条の4の3第3項は、外国法人の恒久的施設が本店等に対して支出した「内部寄附金の額」を、法人税法141条1号イの国内源泉所得に係る所得の計算上、損金の額に算入しないと定めています。同様の読替え規定も置かれています。

実務で迷いが生じるところ

  • 無利息貸付けはいくらの寄附金になるのか。適正な利率との差額の考え方が問題になります
  • 「実質的に贈与……と認められる金額」の線引きはどこか。37条8項の要件です
  • 経営指導料を取っていれば大丈夫か。役務の内容と対価の水準が問われます
  • 子会社支援に合理的な理由があるときは。支援の必要性と再建計画の有無が問題になります
  • 出向者給与の較差補填はどう扱うのか。負担区分の整理が必要です
  • 寄附金で否認されたとき、相手国で減額してもらえるか。対応的調整が実現するかの問題です

海外子会社に「出した」ものは、名目を問わず一度洗い出しておくべきです。契約書を作る段階、送金する段階で形を整えれば、寄附金認定を避けられる場面があります。出したあとでは、事実の評価の勝負になります。海外子会社との資金・役務のやり取りは、実行前にご相談ください。

根拠条文

  • 租税特別措置法第66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)第1項・第3項・第4項
  • 租税特別措置法第66条の4の3(外国法人の内部取引に係る課税の特例)第3項
  • 法人税法第37条(寄附金の損金不算入)第1項・第2項・第3項・第4項・第5項・第7項・第8項
  • 法人税法第141条第1号イ

本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。通達の番号は一次情報で確認していないため、本稿では引用していません。一般的な解説であり、個別の判定には取引の内容と契約の確認が必要です。

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