移転価格税制が働くかどうかは、相手が国外関連者に当たるかで決まります。株を50%持っているかどうかだけでは判定できません。
条文の定義
租税特別措置法第66条の4第1項の括弧書きが定義しています。
当該法人に係る国外関連者(外国法人で、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(当該他方の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める特殊の関係……のあるものをいう。……)
読むべき点は3つです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 相手方 | 外国法人であること(個人や内国法人は国外関連者ではない) |
| 持株基準 | 発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する関係 |
| それだけではない | 「その他の政令で定める特殊の関係」がある |
「50%以上」であって「超」ではありません。ちょうど50%で該当します。そして「子会社」に限りません。親会社も、兄弟会社も、資本関係のない相手も入り得ます。
政令が定める「特殊の関係」は5類型
租税特別措置法施行令第39条の12第1項。
法第六十六条の四第一項に規定する政令で定める特殊の関係は、次に掲げる関係とする。
| 号 | 関係 |
|---|---|
| 1号 | 二の法人のいずれか一方が他方の発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する関係(親子) |
| 2号 | 二の法人が同一の者によってそれぞれ発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される場合の当該二の法人の関係(兄弟)。その者が個人の場合は、その個人と法人税法2条10号(同族会社)に係る政令で定める特殊の関係のある個人を含む |
| 3号 | 特定事実が存在することにより、一方が他方の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係 |
| 4号 | 一の法人と、50%以上の保有関係(1号型)又は特定事実による実質的決定関係(3号型)が連鎖して結ばれる法人との関係 |
| 5号 | 同一の者を起点として、それぞれ同じ連鎖で結ばれる二の法人の関係 |
2号(兄弟関係)そのものは、連鎖の環になりません。4号・5号の環は、50%以上の保有か、特定事実による実質的決定関係の2つだけです。
2号以下の各号には重複を避ける括弧書きが付いています。文言は号ごとに違い、2号は「前号」、3号は「前二号」、4号は「前三号」、5号は「前各号」です(5号にはさらに「イに規定する一の者が同一の者である場合に限る」という限定があります)。1号にはこの括弧書きがありません。
3号の「特定事実」── 株を持っていなくても該当し得る
ここが実務で見落とされます。
次に掲げる事実その他これに類する事実(……「特定事実」という。)が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(前二号に掲げる関係に該当するものを除く。)
イ 当該他方の法人の役員の二分の一以上又は代表する権限を有する役員が、当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。
ロ 当該他方の法人がその事業活動の相当部分を当該一方の法人との取引に依存して行つていること。
ハ 当該他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、又は当該一方の法人の保証を受けて調達していること。
要件は2段です。イロハ(またはこれに類する事実)が存在すること、かつ、それにより事業の方針を実質的に決定できる関係にあること。イロハがあるだけで自動的に該当するわけではありません。
- 役員の半数以上が出向者・元社員なら、イに当たり得ます
- 売上のほとんどが日本の親会社向けの販社なら、ロに当たり得ます
- 運転資金を日本側の借入れや保証でまかなっているなら、ハに当たり得ます
「資本関係がないから移転価格は関係ない」は成り立ちません。海外の代理店・独占販売店・合弁相手が、3号で国外関連者に入ってくることがあります。
間接保有は「掛け算」ではない
ここも誤解が多いところです。措令39条の12第2項は、直接保有割合と間接保有の株式等の保有割合を合計して判定するとし、第3項がその間接保有割合を定めます。
一 前項の他方の法人の株主等……である法人の発行済株式等の百分の五十以上……の株式又は出資が同項の一方の法人により所有されている場合 当該株主等である法人の有する当該他方の法人の株式又は出資の数又は金額が当該他方の法人の発行済株式等のうちに占める割合
持株割合の掛け算ではありません。間に立つ法人が50%以上支配されているなら、その法人が持っている割合がそのまま間接保有割合になります。第2号は、出資関連法人が何段も介在する場合を同じ考え方で拾います。
A社がB社を60%、B社がC社を60%持つとき、掛け算なら36%で非該当ですが、条文の方式では60%となり該当します。
4号・5号の連鎖に、段数の上限はない
4号ロは「イ又はハに掲げる法人が……」、ハは「ロに掲げる法人が……」と、ロとハが相互に参照し合う構造です。3段で打ち止めではありません。何段でもつながります。5号も同じ構造で、起点の「一の者」には、個人の場合その特殊関係個人が含まれます(2号括弧書きの「第五号において同じ」)。
国外関連者だと何が起きるか
- その取引(国外関連取引)は、独立企業間価格で行われたものとみなされます(措法66条の4第1項)
- その相手方への寄附金は損金不算入になります(同条3項。PEを有する国外関連者への寄附金で、そのPE帰属所得の益金に算入されるものを除く)
- 1項の適用がある場合、対価と独立企業間価格との差額(寄附金の額に該当するものを除く)も損金不算入です(同条4項)
- 文書化義務(ローカルファイル等)の対象になります
第三者を間に挟んでも逃げられません。同条5項。
法人が当該法人に係る国外関連者との取引を他の者(当該法人に係る他の国外関連者及び当該国外関連者と特殊の関係のある内国法人を除く。……「非関連者」という。)を通じて行う場合として政令で定める場合における当該法人と当該非関連者との取引は、当該法人の国外関連取引とみなして、第一項の規定を適用する。
なお1項の括弧書きは、国外関連者が恒久的施設を有する外国法人である場合の、法人税法141条1号イに掲げる国内源泉所得に係る取引として政令で定めるものを、国外関連取引から除いています。
実務で迷いが生じるところ
- 「事業活動の相当部分」「資金の相当部分」はどのくらいか。割合の明示はありません
- 元役員はいつまで「であつた者」なのか。期間の限定は条文にありません
- 合弁で50%ずつのときはどうなるか。双方が「50%以上」を満たします
- 個人株主を通じた兄弟会社はどうか。2号の括弧書きが個人とその特殊関係者を取り込み、5号にも及びます
- 年度の途中で関係が生じたらどうか。取引時点での判定が問題になります
- 非関連者を通じた取引が「政令で定める場合」に当たるか。5項の入口の判定です
「うちは資本関係がないから」で片づけている取引が、実は国外関連取引だった。移転価格の指摘は、この入口の判定から始まります。海外との継続取引がある会社は、まず相手が国外関連者かどうかの棚卸しからご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)第1項・第3項・第4項・第5項
- 租税特別措置法施行令第39条の12(国外関連者との取引に係る課税の特例)第1項各号・第2項・第3項
- 法人税法第2条第10号(同族会社)、第141条第1号イ
本稿は法令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成しています。一般的な解説であり、個別の判定には資本関係・役員構成・取引依存度・資金調達の確認が必要です。










