対象時点について:本稿は2021年12月24日閣議決定の令和4年度税制改正の大綱を扱います。金額・適用予定日は当時の内容です。現在の制度を示すものではありません。
何が、いつ、誰の手で決まったのか
令和4年度税制改正の大綱は、令和3年12月24日に閣議決定された政府の大綱です。原文の表題の下には「令和3年12月24日 閣議決定」とだけ記されています。この年の出発点は、賃上げの後押しと、住宅ローン控除の組替えです。その姿勢は前文に表れています。
成長と分配の好循環の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講ずる。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直す。加えて、景気回復に万全を期すため、土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、激変緩和の観点から所要の措置を講ずる。具体的には、次のとおり税制改正を行うものとする。
大綱そのものの読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもあわせてご覧ください。
大綱の柱
本文は七つの章に分かれています。章の名前と、決まったことは次のとおりです。
| 章 | その章で決まったこと |
|---|---|
| 個人所得課税 | 住宅ローン控除が4年延長され、借入限度額と控除期間が住宅の区分ごとに変わります。 |
| 資産課税 | 住宅取得等資金の贈与の非課税措置が2年延長され、土地の負担調整措置に特例が置かれます。 |
| 法人課税 | 賃上げに係る税額控除が改組され、オープンイノベーション促進税制が拡充されます。 |
| consumption tax | 適格請求書等保存方式の登録と経過措置が見直されます。 |
| 国際課税 | 過大支払利子税制が外国法人の一定の国内源泉所得にも適用されます。 |
| 納税環境整備 | 税理士制度が見直され、帳簿の提出がない場合等の加算税が加重されます。 |
| 関税 | 暫定税率412品目の適用期限が令和5年3月31日まで延長されます。 |
大綱に添えられた「令和4年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額」の合計は、平年度で1,530億円の減収、初年度で740億円の減収です。前後の年度は令和3年度税制改正の大綱、令和5年度税制改正の大綱をご覧ください。
賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する
この年で最も大きい項目は、法人課税の章の冒頭に置かれた賃上げの措置です。新しく雇った人の給与に着目していた仕組みが、継続して雇っている人の給与の伸びを見る仕組みに改められます。
給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度のうち新規雇用者に係る措置を改組し、青色申告書を提出する法人が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる制度とする。
増加割合が4%以上であるときは税額控除率に10%が加算され、教育訓練費の増加割合が20%以上であるときはさらに5%が加算されます。控除税額は当期の法人税額の20%が上限です。資本金の額等が10億円以上かつ常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合は、給与等の支給額の引上げの方針などの公表を経済産業大臣に届け出ていることが条件です。
中小企業における所得拡大促進税制は適用期限が1年延長され、上乗せ措置が組み替えられます。雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上である場合には税額控除率に15%、教育訓練費の増加割合が10%以上である場合には10%が加算されます。反対に、研究開発税制などを適用できないこととする措置は要件が厳しくなり、一定の大企業には継続雇用者給与等支給額の増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度は0.5%以上)であることが求められます。
スタートアップ側の措置も動きます。オープンイノベーション促進税制は適用期限が2年延長され、特定株式の保有見込期間の下限が特定株式の取得の日から3年(現行は5年)に短縮されます。
住宅ローン控除を組み替える
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は、適用期限が令和7年12月31日まで4年延長されます。同時に控除率が0.7%となり、借入限度額と控除期間が住宅の区分と居住年で分けられます。令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した場合は次のとおりです。
| 住宅の区分 | 居住年 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 |
|---|---|---|---|---|
| 認定住宅等以外の住宅 | 令和4年・令和5年 | 30 million yen | 0.7% | 13年 |
| 認定住宅等以外の住宅 | 令和6年・令和7年 | 2,000万円 | 0.7% | 10年 |
| 認定住宅 | 令和4年・令和5年 | 50 million yen | 0.7% | 13年 |
| 認定住宅 | 令和6年・令和7年 | 4,500万円 | 0.7% | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 令和4年・令和5年 | 4,500万円 | 0.7% | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 令和6年・令和7年 | 3,500万円 | 0.7% | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 令和4年・令和5年 | 4,000万円 | 0.7% | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 令和6年・令和7年 | 30 million yen | 0.7% | 13年 |
上の金額は新築や建築後使用されたことのないものの取得などの場合のものです。当時の大綱では、既存住宅のうち認定住宅等の取得は借入限度額3,000万円、それ以外の既存住宅の取得や住宅の増改築等は2,000万円とされ、控除期間はいずれも10年です。
使える人の範囲も動きます。適用対象者の所得要件は2,000万円以下(現行は3,000万円以下)に引き下げられます。既存住宅の築年数要件は廃止され、新耐震基準に適合していることが要件に加わります。また、令和6年1月1日以後に建築確認を受ける家屋などのうち一定の省エネ基準を満たさないものの新築等は、この特例を使えないこととされます。
住宅取得等資金の贈与と、土地の負担調整措置
贈与税の非課税限度額は1,000万円と500万円
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は、適用期限が令和5年12月31日まで2年延長されます。非課税限度額は契約の締結時期にかかわらず、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋が1,000万円、それ以外の住宅用家屋が500万円とされます。既存住宅用家屋の築年数要件は廃止され、新耐震基準への適合が要件となります。受贈者の年齢要件は18歳以上(現行は20歳以上)に引き下げられます。
商業地等には令和4年度限りの措置を置く
土地に係る固定資産税の負担調整措置には、令和4年度限りの措置が置かれます。負担水準が60%未満の商業地等について、令和4年度の課税標準額を、令和3年度の課税標準額に令和4年度の評価額の2.5%(現行は5%)を加算した額とするものです。その額が評価額の60%を上回る場合は60%相当額、20%を下回る場合は20%相当額とされます。
インボイス制度の登録をめぐる見直し
適格請求書等保存方式について、この大綱では登録の手続と経過措置が整えられます。免税事業者の登録は次のとおりです。
免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとする。
この扱いで登録日から課税事業者となった事業者は、登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である者を除き、その課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について、事業者免税点制度を適用しないこととされます。
帳簿と記録をめぐる納税環境整備
帳簿を出さないと加算税が重くなる
過少申告加算税制度及び無申告加算税制度に、加重措置が新設されます。国税庁等の職員から一定の帳簿の提示又は提出を求められ、それをしなかった場合や、売上金額の記載が著しく不十分である場合には、通常の加算税に、申告漏れ等に係る所得税、法人税又は消費税の10%に相当する金額が加算されます。記載が不十分である場合は5%です。二つの区分は次のように分けられています。
上記(1)の「記載が著しく不十分である場合」とは、当該帳簿に記載すべき売上金額又は業務に係る収入金額のうち2分の1以上が記載されていない場合をいい、上記(2)の「記載が不十分である場合」とは、当該帳簿に記載すべき売上金額又は業務に係る収入金額のうち3分の1以上が記載されていない場合をいう。
対象となる帳簿は、青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳などです。
電子取引の記録の保存には2年間の経過措置を置く
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度には、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引について経過措置が置かれます。所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、質問検査権に基づく出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、保存要件にかかわらず保存をすることができるとされます。
財産債務調書は10億円以上でも提出義務
財産債務調書制度等も見直されます。現行の提出義務者に加えて、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者が提出義務者とされます。提出期限は翌年の6月30日(現行は翌年の3月15日)に改められ、国外財産調書も同様です。
ご自身に関係があるかを見分けるには
- 従業員の給与を引き上げる予定のある法人の方は、法人課税の章をご覧ください。継続雇用者の給与の増加割合3%、4%、中小企業では2.5%が区切りです。
- 令和4年以降に住宅を取得して住む予定の方は、個人所得課税の章をご覧ください。借入限度額と控除期間は住宅の省エネ性能と居住年で分かれ、所得要件は2,000万円以下に下がります。
- 親や祖父母から住宅の資金を援助してもらう方は、資産課税の章をご覧ください。非課税限度額は住宅用家屋の性能で1,000万円と500万円に分かれます。
- 売上のある事業者の方は、消費課税と納税環境整備の章をご覧ください。適格請求書発行事業者の登録と、帳簿を提示しない場合の加算税の加重が定められています。
- その年の12月31日に10億円以上の財産をお持ちの方は、納税環境整備の章をご覧ください。財産債務調書の提出義務者に加わります。
出所
- 「令和4年度税制改正の大綱」(令和3年12月24日 閣議決定)
本稿は令和4年度税制改正の大綱を扱う過年度記事です。2026年9月7日、当時の大綱原文に照らして既存住宅の借入限度額の説明を訂正しました。
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