税制改正大綱レビュー

平成28年度税制改正大綱で決まったこと、法人税率の引下げと軽減税率

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成28年度税制改正の大綱は、平成27年12月24日に閣議決定された大綱です。表題の下には「平成27年12月24日 閣議決定」とだけ記されています。法人税の税率引下げと消費税の軽減税率制度が同時に動いた年で、狙いは前文に示されています。

現下の経済情勢等を踏まえ、経済の好循環を確実なものとする観点から成長志向の法人税改革等を行うとともに、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入する。あわせて、少子化対策・教育再生や地方創生の推進等に取り組むとともに、グローバルなビジネスモデルに適合した国際課税ルールの再構築を行うための税制上の措置を講ずる。このほか、震災からの復興を支援するための税制上の措置等を講ずる。

本文は七つの章からなり、末尾に軽減税率制度と移転価格税制の文書化についての別紙が付されています。大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもご覧ください。

大綱の柱

七つの章と、決まったことは次のとおりです。

その章で決まったこと
個人所得課税 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例ができます。
資産課税 農地保有に係る固定資産税が強化・軽減されます。
法人課税 法人税の税率が段階的に引き下げられ、減価償却と欠損金の繰越控除も見直されます。
消費課税 軽減税率制度が導入され、自動車取得税が廃止されます。
国際課税 移転価格税制の文書化制度が整備されます。
納税環境整備 クレジットカード納付制度が創設され、加算税制度も見直されます。
関税 暫定税率の適用期限が延長されます。

内国税関係の増減収見込額は、平年度160億円、初年度310億円の減収です。別掲で、軽減税率制度の導入による減収が1.0兆円程度(うち国分0.8兆円程度)と示されています。前年の平成27年度税制改正の大綱、翌年の平成29年度税制改正の大綱と並べると、この年の位置づけが見えます。

法人税率を23.9%から段階的に引き下げる

法人課税の先頭が「成長志向の法人税改革」です。法人税の税率は現行の23.9%から、平成28年4月1日以後に開始する事業年度について23.4%、平成30年4月1日以後に開始する事業年度について23.2%へと、二段階で引き下げられます。資本金1億円超の普通法人の法人事業税では、付加価値割が0.72%から1.2%に、資本割が0.3%から0.5%に上がる一方、所得割は年800万円超の所得について6.0%から3.6%に下がります。外形標準課税の拡大です。参考資料では、国・地方の法人実効税率が平成27年度の32.11%から、平成28年度と平成29年度は29.97%、平成30年度は29.74%になるとされています。

下がる分は課税ベースの拡大で賄われます。平成28年4月1日以後に取得をする建物附属設備及び構築物並びに鉱業用の建物について、定率法が廃止されます。生産性向上設備投資促進税制も適用期限をもって廃止されます。欠損金の繰越控除の限度割合は、前年の改正で決めた段階が組み替えられます。

事業年度開始日 平成27年度税制改正後 改正案
平成27年4月から平成28年3月まで 100分の65 100分の65
平成28年4月から平成29年3月まで 100分の65 100分の60
平成29年4月から平成30年3月まで 100分の50 100分の55
平成30年4月から 100分の50 100分の50

消費税に軽減税率を導入し、インボイスへ向かう

消費税の軽減税率制度は平成29年4月1日から導入されます。あわせて、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」が平成33年4月1日から導入されます。それまでは、現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、区分経理に対応する措置が講じられます。

軽減税率の対象となる課税資産の譲渡等(以下「軽減対象課税資産の譲渡等」(仮称)という。)は次のとおりとし、軽減税率は 6.24%(地方消費税と合わせて8%)とする。

対象は、飲食料品の譲渡と、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡の二つです。飲食料品の譲渡とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます)の譲渡をいい、外食サービスは含みません。経過措置として、課税仕入れが軽減税率対象品目に係る場合は、請求書等に「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」が記載事項に加わります。

基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者には、簡便な計算が認められます。売上税額は平成29年4月1日から平成33年3月31日までの期間、仕入税額は平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間が対象です。適格請求書等保存方式が始まると、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が仕入税額控除の要件になります。登録の申請は平成31年4月1日から受け付けられ、導入後の一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れに一定割合の控除を認める経過措置があります。

空き家を売ったときに3,000万円を控除できるようにする

個人所得課税の新設の先頭が、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例です。相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋、大綱でいう「被相続人居住用家屋」と、その敷地の用に供されていた土地等を相続により取得した個人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に一定の譲渡をした場合、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用できます。

対象になる家屋は限られています。昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除きます)であって、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものに限られます。譲渡は、相続の時から相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までにしたものに限られ、対価の額が1億円を超えるものは除かれます。家屋をそのまま譲渡する場合は地震に対する安全性に係る基準への適合が求められ、除却した後に敷地であった土地等を譲渡する形も対象です。

同じ章では、住宅の三世代同居改修工事等に係る特例も創設されます。調理室、浴室、便所又は玄関のいずれかを増設し、改修後にこれらのいずれか2つ以上が複数となる工事が対象で、標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%を所得税の額から控除できます。医療費控除には、セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除が加わります。平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に支払った一定のスイッチOTC医薬品の対価が1万2千円を超えるとき、その超える部分(8万8千円が上限)を総所得金額等から控除できます。現行の医療費控除との併用はできません。

自動車取得税を廃止し、環境性能割に置き換える

自動車取得税は平成29年3月31日をもって廃止されます。代わりに、自動車税及び軽自動車税にそれぞれ環境性能割が設けられ、現行の自動車税は自動車税排気量割、現行の軽自動車税は軽自動車税排気量割とされます。課税対象は現行の自動車取得税と同一で、課税標準は取得価額、免税点は50万円です。平成29年4月1日以後の自動車の取得について適用されます。

税率は環境性能に応じて分かれます。電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などは非課税で、燃費基準の達成度合いに応じて1%と2%の一定税率が置かれ、これらのいずれにも当たらない自動車は3%です。営業用の自動車は当分の間、1%の区分が0.5%に、2%の区分が1%になり、3%の区分は営業用の自動車及び軽自動車について当分の間2%です。「グリーン化特例」は適用期限が1年延長されます。

多国籍企業に3種類の文書を求め、加算税を重くする

国際課税では、BEPSプロジェクトの行動計画に対応して示された勧告を踏まえ、移転価格税制に係る文書化制度が整備されます。国別報告事項は、最終親事業体である内国法人等が、グループが事業を行う国ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額その他必要な事項を提出するものです。事業概況報告事項(マスターファイル)は、構成事業体である内国法人等が、グループの組織構造、事業の概要、財務状況その他必要な事項を提出します。いずれも最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までにe-Taxで提供し、直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満のグループは免除されます。独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)は、確定申告書の提出期限までに作成し、原則7年間保存します。

納税環境整備では加算税制度が見直されます。調査の通知以後で、かつ更正又は決定があるべきことを予知する前にされた修正申告について、これまで0%だった過少申告加算税の割合が5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)とされ、無申告加算税の割合は5%から10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%)になります。過去5年内に同じ税目で無申告加算税又は重加算税を課されたことがあれば、さらに10%が加算されます。あわせてクレジットカード納付制度が創設されます。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 会社を経営している方は、法人課税の章をご覧ください。税率が下がる時期は平成28年4月と平成30年4月の二段階です。
  • 飲食料品や新聞を扱う事業をされている方は、消費課税の章をご覧ください。平成29年4月1日から税率が二つになります。
  • 課税売上高が5,000万円以下の事業者の方も同じ章をご覧ください。売上税額と仕入税額とで、簡便計算が使える期間が違います。
  • 相続した実家が空き家になっている方は、個人所得課税の章をご覧ください。家屋の建築時期、譲渡の期限、対価の額のそれぞれに条件があります。
  • 海外に子会社を持つ企業の方は、国際課税の章をご覧ください。連結総収入金額1,000億円が提供義務の分かれ目です。
  • 車の買い替えを考えている方は、消費課税の章をご覧ください。自動車取得税の廃止と環境性能割の導入は、平成29年4月が区切りです。

出所

  • 「平成28年度税制改正の大綱」(平成27年12月24日 閣議決定)

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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