Taxation of stock options

Stock options, tax withholding, and statutory reports

条文の定義

所得税法228条の2は、次のように定めています。

「……をした株式会社は、当該発行又は割当てをした当該新株予約権の行使があつた場合には、財務省令で定めるところにより、その行使をした個人又は法人の当該新株予約権の行使に関する調書を、当該行使をした日の属する年の翌年一月三十一日までに、税務署長に提出しなければならない。」

この条文は、有利発行型など一定の新株予約権を発行又は割当てした株式会社に対し、行使をした個人又は法人についての法定調書(新株予約権の行使に関する調書)の提出を義務付けています。

骨格

Issue 条文・通達・Q&Aの定め
法定調書の根拠 所得税法228条の2・所得税法施行令354条
対象となる新株予約権の範囲 所得税法施行令354条
提出義務者・提出期限 所得税法228条の2
一株当たりの価額の算定 所得税法施行令354条・所得税基本通達23〜35共-9(注)
税制適格ストックオプションの場合の扱い 租税特別措置法施行令19条の3・租税特別措置法29条の2
給与所得の源泉徴収 所得税法183条の系統・国税庁Q&A問4
報酬料金等に該当する場合 所得税法204条・国税庁Q&A(注2)
非居住者・外国法人への支払 所得税法212条の系統

どの新株予約権が調書の対象になるのか

所得税法228条の2にいう「政令で定める」新株予約権の範囲は、所得税法施行令354条が定めています。

「法第二百二十八条の二(新株予約権の行使に関する調書)に規定する政令で定める新株予約権は、次に掲げる新株予約権とする。」

  • 「新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件又は金額であることとされる当該新株予約権」
  • 「役務の提供その他の行為に係る対価の全部又は一部として発行又は割当てをすることとされる新株予約権(前号に該当するものを除く。)」

対象となるのは、新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件又は金額であることとされるものと、役務の提供その他の行為に係る対価とされるものの2種類です。提出義務者・提出期限は、条文の定義に示した228条の2の文言のとおりです。

一株当たりの価額はどう算定するのか

所得税法施行令354条は、対象となる新株予約権の範囲に加えて、所得税法228条の2にいう「政令で定める発行又は割当て」の範囲も定めています。

「法第二百二十八条の二に規定する政令で定める発行又は割当ては、同条に規定する新株予約権の発行又は割当てに係る金銭により払い込まれるべき額と当該新株予約権の行使に際して払い込まれるべき額との合計額を当該新株予約権の行使によつて交付することとなる株式の数で除して計算した金額が当該新株予約権の発行又は割当てに係る同条に規定する決議の時における当該新株予約権を発行又は割当てをした株式会社の株式の一株当たりの価額に相当する金額に満たない場合における当該新株予約権の発行又は割当てとする。」

この計算した金額と比較される「一株当たりの価額」の算定方法について、所得税基本通達23〜35共-9(注)は次のように定めています。

「この取扱いは、令第354条第2項((新株予約権の行使に関する調書))に規定する「当該新株予約権を発行又は割当てをした株式会社の株式の1株当たりの価額」について準用する。」

上場・非上場の別、種類株式の有無などに応じた具体的な算定方法は、strike price of stock options and stock valuationで扱います。

税制適格ストックオプションの場合はどうなるのか

租税特別措置法29条の2の適用を受けて株式を取得した場合の扱いについて、租税特別措置法施行令19条の3は次のように定めています。

「個人が新株予約権の行使により法第二十九条の二第一項本文の規定の適用を受けて株式を取得した場合には、当該株式の振替又は交付をした株式会社については、所得税法第二百二十八条の二のうち当該新株予約権の行使に係る部分の規定は、適用しない。」

適用が除外されるのは「当該新株予約権の行使に係る部分」に限られます。租税特別措置法29条の2は、これとは別に、特定新株予約権を付与した株式会社に対し、付与を基準にした調書の提出義務を次のとおり定めています。

「付与決議に基づく契約により取締役等若しくは権利承継相続人又は特定従事者に特定新株予約権を与える株式会社は、政令で定めるところにより、当該特定新株予約権の付与に関する調書(以下この条において「特定新株予約権の付与に関する調書」という。)を、その付与をした日の属する年の翌年一月三十一日までに、税務署長に提出しなければならない。」

給与所得の源泉徴収義務はどこに置かれているか

給与所得についての源泉徴収義務は、所得税法183条に置かれています。

「居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」

税制非適格ストックオプションの行使による経済的利益が給与所得に区分される場合の源泉徴収について、国税庁のQ&Aは次のように説明しています。

「税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型又は信託型)については、ストックオプションの行使による株式の交付の際に、給与所得に係る源泉所得税を徴収して、納税地の所轄税務署に納付する必要があります。」

発行会社が源泉所得税を納付していなかったことが後に判明し、対象者に求償しないこととした場合の扱いについて、国税庁のQ&Aは次のように説明しています。

「……(求償しないこととした場合は)利益を与えたことになり、その求償しないこととした時において、その税額に相当する金額の税引き後の手取額で給与や報酬の追加払いをしたものとし、その支払ったものとなる金額に係る源泉所得税を計算(グロスアップ計算)することとなります(所基通 221-1、所基通 181-223 共-4)。」

源泉所得税を一時に納められない場合について、国税庁のQ&Aは次のように説明しています。

「なお、源泉所得税を一時に納められない場合には、税務署に申請を行うことにより、原則として1年以内の期間に限り、納税の猶予等が認められる場合があります。」

他方、請負契約その他これに類する契約に基づいて付与された場合の所得区分について、国税庁のQ&Aは次のように説明しています。

「請負契約その他これに類する契約に基づき、役務提供の対価として付与されたストックオプションに係る経済的利益については、事業所得又は雑所得に区分されます。なお、そのストックオプションに係る経済的利益が、所得税法第 204 条に規定する報酬料金等に該当する場合には、源泉徴収の対象とされます。」

給与所得となるか、事業所得又は雑所得となるかの所得区分の中身は、Taxation of non-qualified stock optionsで扱います。

非居住者・外国法人に支払う場合はどうなるか

行使をした者が非居住者又は外国法人である場合、源泉徴収義務の規定は所得税法212条に置かれています。

「非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得……の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」

国内源泉所得の範囲は所得税法161条が定めており、詳細は国内源泉所得とはで扱います。具体的な取扱いはNon-residents, departure, and stock optionsで扱います。

実務で迷いが生じるところ

  • 所得税法施行令354条にいう「一株当たりの価額」を個々の事案でどう算定するかは、所得税基本通達23〜35共-9(注)の準用のもと、対象となる株式が上場されているか、種類株式が発行されているかなど、株式の性質を確認する必要があります。
  • 租税特別措置法施行令19条の3が適用除外とする範囲は「当該新株予約権の行使に係る部分」に限られます。租税特別措置法29条の2に置かれた、付与を基準にした別建ての調書義務との関係は、個別に確認する必要があります。
  • 給与所得となるか、報酬料金等として所得税法204条の源泉徴収の対象となるかは、付与の基礎となった契約関係の性質によって分かれます。この判定自体は本記事では扱いません。

根拠条文

  • 所得税法第228条の2(新株予約権の行使に関する調書)/引用した文言:「……をした株式会社は、当該発行又は割当てをした当該新株予約権の行使があつた場合には、財務省令で定めるところにより、その行使をした個人又は法人の当該新株予約権の行使に関する調書を、当該行使をした日の属する年の翌年一月三十一日までに、税務署長に提出しなければならない。」
  • 所得税法施行令第354条第1項柱書(新株予約権の行使に関する調書)/引用した文言:「法第二百二十八条の二(新株予約権の行使に関する調書)に規定する政令で定める新株予約権は、次に掲げる新株予約権とする。」
  • 所得税法施行令第354条第1項第1号(新株予約権の行使に関する調書)/引用した文言:「新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件又は金額であることとされる当該新株予約権」
  • 所得税法施行令第354条第1項第2号(新株予約権の行使に関する調書)/引用した文言:「役務の提供その他の行為に係る対価の全部又は一部として発行又は割当てをすることとされる新株予約権(前号に該当するものを除く。)」
  • 所得税法施行令第354条第2項(新株予約権の行使に関する調書)/引用した文言:「法第二百二十八条の二に規定する政令で定める発行又は割当ては、同条に規定する新株予約権の発行又は割当てに係る金銭により払い込まれるべき額と当該新株予約権の行使に際して払い込まれるべき額との合計額を当該新株予約権の行使によつて交付することとなる株式の数で除して計算した金額が当該新株予約権の発行又は割当てに係る同条に規定する決議の時における当該新株予約権を発行又は割当てをした株式会社の株式の一株当たりの価額に相当する金額に満たない場合における当該新株予約権の発行又は割当てとする。」
  • 租税特別措置法施行令第19条の3第36項(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「個人が新株予約権の行使により法第二十九条の二第一項本文の規定の適用を受けて株式を取得した場合には、当該株式の振替又は交付をした株式会社については、所得税法第二百二十八条の二のうち当該新株予約権の行使に係る部分の規定は、適用しない。」
  • 租税特別措置法第29条の2第6項(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「付与決議に基づく契約により取締役等若しくは権利承継相続人又は特定従事者に特定新株予約権を与える株式会社は、政令で定めるところにより、当該特定新株予約権の付与に関する調書(以下この条において「特定新株予約権の付与に関する調書」という。)を、その付与をした日の属する年の翌年一月三十一日までに、税務署長に提出しなければならない。」
  • 所得税法第183条第1項(源泉徴収義務)/引用した文言:「居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」
  • 所得税法第212条第1項(源泉徴収義務)/引用した文言:「非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得……の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」

根拠となる通達・Q&A・裁判例

  • 所得税基本通達23〜35共-9(令第84条第3項本文の株式の価額)/引用した文言:「この取扱いは、令第354条第2項((新株予約権の行使に関する調書))に規定する「当該新株予約権を発行又は割当てをした株式会社の株式の1株当たりの価額」について準用する。」
  • 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問4/引用した文言:「税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型又は信託型)については、ストックオプションの行使による株式の交付の際に、給与所得に係る源泉所得税を徴収して、納税地の所轄税務署に納付する必要があります。」
  • 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問4/引用した文言:「……(求償しないこととした場合は)利益を与えたことになり、その求償しないこととした時において、その税額に相当する金額の税引き後の手取額で給与や報酬の追加払いをしたものとし、その支払ったものとなる金額に係る源泉所得税を計算(グロスアップ計算)することとなります(所基通 221-1、所基通 181-223 共-4)。」
  • 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問4/引用した文言:「なお、源泉所得税を一時に納められない場合には、税務署に申請を行うことにより、原則として1年以内の期間に限り、納税の猶予等が認められる場合があります。」
  • 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問1・問2・問3・問6共通の前置き(注2)/引用した文言:「請負契約その他これに類する契約に基づき、役務提供の対価として付与されたストックオプションに係る経済的利益については、事業所得又は雑所得に区分されます。なお、そのストックオプションに係る経済的利益が、所得税法第 204 条に規定する報酬料金等に該当する場合には、源泉徴収の対象とされます。」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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