Taxation of stock options

Non-residents, departure, and stock options

条文の定義

所得税法161条は、非居住者に課される国内源泉所得を号を分けて列挙しており、給与その他人的役務の提供に対する報酬に関する号は、次のように定めています。

「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの」

この号は、支払を受ける者の居住形態ではなく、報酬の基因となった勤務その他の人的役務の提供が国内において行われたものであるかどうかを基準としており、内国法人の役員が国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供も、この号に含めています。ストックオプションの権利行使による経済的利益がこの号に当たるかどうかは、この基因関係に即して確認する必要があります。

骨格

Issue 条文・通達の定め
国内源泉所得の該当性 所得税法161条
非居住者に対する課税の方法 所得税法164条
支払時の源泉徴収 所得税法212条
租税条約による国内源泉所得の読み替え 所得税法162条
国外転出時課税の対象資産に関する条件 所得税法60条の2・所得税法施行令170条・所得税法施行令84条
国外転出時における税制適格ストックオプションの手当て 租税特別措置法29条の2・租税特別措置法施行規則11条の3
権利行使益の所得区分 所得税基本通達23〜35共-6

非居住者に対する課税はどのように行われるか

所得税法164条は、非居住者に対して課する所得税の額の計算方法を、恒久的施設の有無と国内源泉所得の区分に応じて定めています。給与その他人的役務の提供に対する報酬を含む区分については、次のように定めています。

「次の各号に掲げる非居住者が当該各号に定める国内源泉所得を有する場合には、当該非居住者に対して課する所得税の額は、前項の規定によるもののほか、当該各号に定める国内源泉所得について第三節(非居住者に対する所得税の分離課税)の規定を適用して計算したところによる。」

給与その他人的役務の提供に対する報酬は、この分離課税の区分に含まれます。国内源泉所得の全体の範囲は国内源泉所得とは、非居住者の区分は所得税法上の非居住者とはで扱います。

支払う側にはどのような源泉徴収義務が生じるか

所得税法212条は、非居住者に対する支払時の源泉徴収義務について、次のように定めています。

「非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者……は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」

給与その他人的役務の提供に対する報酬は、この源泉徴収義務の対象区分に含まれます。源泉徴収の詳細は非居住者・外国法人への支払と源泉徴収で扱います。租税条約が異なる定めを置いている場合について、所得税法162条は次のように定めています。

「租税条約(……)において国内源泉所得につき前条の規定と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける者については、同条の規定にかかわらず、国内源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めるところによる。」

条約の適用の有無・内容は租税条約とはで扱います。

国外転出(出国)時課税の対象資産について、条文はストックオプションをどう位置づけているか

所得税法60条の2は、国外転出をする居住者が有する「有価証券等」について、次のように定めています。

「……有価証券又は第百七十四条第九号(内国法人に係る所得税の課税標準)に規定する匿名組合契約の出資の持分(株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する有価証券で第百六十一条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を生ずべきものその他の政令で定める有価証券を除く。以下この条から第六十条の四まで(外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例)において「有価証券等」という。)を有する場合には……当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。」

この括弧書きは、株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する有価証券のうち、国内源泉所得を生ずべきものを「有価証券等」から除く定めを置いています。この「その他の政令で定める有価証券」について、所得税法施行令170条は次のように定めています。

「法第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める有価証券は、次に掲げる有価証券で法第百六十一条第一項第十二号(国内源泉所得)に掲げる所得を生ずべきものとする。」

「第八十四条第三項各号に掲げる権利で当該権利の行使をしたならば同項の規定の適用のあるものを表示する有価証券」

この文言は、対象を、国内源泉所得を生ずべきものであることと、所得税法施行令84条が定める権利のうち当該権利の行使をすれば同条の規定の適用があるものを表示する有価証券であることの、2つの条件で絞っています。同条が定める権利には、次の新株予約権が含まれます。

「会社法第二百三十八条第二項(募集事項の決定)の決議(同法第二百三十九条第一項(募集事項の決定の委任)の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定及び同法第二百四十条第一項(公開会社における募集事項の決定の特則)の規定による取締役会の決議を含む。)に基づき発行された新株予約権(当該新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件若しくは金額であることとされるもの又は役務の提供その他の行為による対価の全部若しくは一部であることとされるものに限る。)」

この2条件を個々のストックオプションが満たすかどうかは当てはめであり、本記事では条文の条件までを示します。行使により取得した株式そのものの扱いは、所得税法60条の2と所得税法施行令170条の文言で別途確認する必要があります。出国税の仕組み自体は国外転出時課税制度とはで扱います。

税制適格ストックオプションを持ったまま国外転出をする場合、条文はどう手当てしているか

租税特別措置法29条の2は、特定新株予約権を与えられた者が国外転出をする場合の通知について、次のように定めています。

「当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この号及び第五項において同じ。)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。」

行使後に取得した特定株式を有したまま国外転出をする場合について、同条は次のように定めています。

「特例適用者が国外転出をする場合には、その国外転出の時に有する特定株式(取締役等の特定株式を除く。)のうち……については、その国外転出の時に、権利行使時価額……による譲渡があつたものと……みなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。」

この特定株式を有する特例適用者が国外転出をした場合に、付与会社が金融商品取引業者等の営業所等へ通知すべき事実とその通知事項について、租税特別措置法施行規則11条の3は次のとおり定めています。これは税務署への届出ではありません。

「特定株式(取締役等の特定株式(法第二十九条の二第四項に規定する取締役等の特定株式をいう。以下この条において同じ。)を除く。)を有する特例適用者の国外転出(法第二十九条の二第一項第七号に規定する国外転出をいう。以下この項、次項及び第十六項第十一号において同じ。)」

「その旨及び国外転出をした日」

要件そのものはWhat is a tax-qualified stock option?で扱います。

実務で迷いが生じるところ

  • ストックオプションの権利行使益が給与所得・事業所得・雑所得のいずれに区分されるかは、所得税基本通達23〜35共-6が発行法人と権利を与えられた者との関係等に応じて振り分けています。
  • 国外転出時課税の対象資産となるかどうかを分ける2つの条件を、個々のストックオプションが満たすかどうかは権利の内容に即して確認する必要があり、権利行使前のストックオプションと行使後に取得した株式とでは条文上の位置付けが異なります。
  • 租税条約が所得税法161条と異なる国内源泉所得の定めを置いている場合は、所得税法162条により条約の定めが優先します。適用の有無・内容は個別の租税条約の条文で確認する必要があります。

根拠条文

  • 所得税法第161条第1項第12号イ(国内源泉所得)/引用した文言:「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの」
  • 所得税法第164条第2項(非居住者に対する課税の方法)/引用した文言:「次の各号に掲げる非居住者が当該各号に定める国内源泉所得を有する場合には、当該非居住者に対して課する所得税の額は、前項の規定によるもののほか、当該各号に定める国内源泉所得について第三節(非居住者に対する所得税の分離課税)の規定を適用して計算したところによる。」
  • 所得税法第212条第1項(源泉徴収義務)/引用した文言:「非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者……は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」
  • 所得税法第162条第1項(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)/引用した文言:「租税条約(……)において国内源泉所得につき前条の規定と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける者については、同条の規定にかかわらず、国内源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めるところによる。」
  • 所得税法第60条の2第1項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)/引用した文言:「……有価証券又は第百七十四条第九号(内国法人に係る所得税の課税標準)に規定する匿名組合契約の出資の持分(株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する有価証券で第百六十一条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を生ずべきものその他の政令で定める有価証券を除く。以下この条から第六十条の四まで(外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例)において「有価証券等」という。)を有する場合には……当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。」
  • 所得税法施行令第170条第1項柱書(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)/引用した文言:「法第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める有価証券は、次に掲げる有価証券で法第百六十一条第一項第十二号(国内源泉所得)に掲げる所得を生ずべきものとする。」
  • 所得税法施行令第170条第1項第2号(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)/引用した文言:「第八十四条第三項各号に掲げる権利で当該権利の行使をしたならば同項の規定の適用のあるものを表示する有価証券」
  • 所得税法施行令第84条第3項第2号(譲渡制限付株式の価額等)/引用した文言:「会社法第二百三十八条第二項(募集事項の決定)の決議(同法第二百三十九条第一項(募集事項の決定の委任)の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定及び同法第二百四十条第一項(公開会社における募集事項の決定の特則)の規定による取締役会の決議を含む。)に基づき発行された新株予約権(当該新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件若しくは金額であることとされるもの又は役務の提供その他の行為による対価の全部若しくは一部であることとされるものに限る。)」
  • 租税特別措置法第29条の2第1項第7号(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この号及び第五項において同じ。)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。」
  • 租税特別措置法第29条の2第5項(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「特例適用者が国外転出をする場合には、その国外転出の時に有する特定株式(取締役等の特定株式を除く。)のうち……については、その国外転出の時に、権利行使時価額……による譲渡があつたものと……みなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。」
  • 租税特別措置法施行規則第11条の3第3項第2号ハ(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「特定株式(取締役等の特定株式(法第二十九条の二第四項に規定する取締役等の特定株式をいう。以下この条において同じ。)を除く。)を有する特例適用者の国外転出(法第二十九条の二第一項第七号に規定する国外転出をいう。以下この項、次項及び第十六項第十一号において同じ。)」「その旨及び国外転出をした日」

根拠となる通達・Q&A・裁判例

  • 所得税基本通達23〜35共-6(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)/引用した文言:「発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して
    当該権利が与えられたと認められるとき 給与所得とする。」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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