Taxation of stock options

Stock options and inheritance

条文の定義

「当該取締役等の相続人(政令で定めるものに限る。以下この項、次項及び第六項において「権利承継相続人」という。)」(租税特別措置法29条の2)

税制適格ストックオプション(What is a tax-qualified stock option?)の対象者である取締役等が死亡した場合、その新株予約権を行使できることになる相続人を、条文は「権利承継相続人」と呼びます。誰がこれに当たるかは条文自身には書かれておらず、政令に委ねられています。

骨格

Issue 条文・通達・裁判例の定め
「権利承継相続人」という語の定義 租税特別措置法29条の2が、取締役等の相続人(政令で定めるものに限る)を「権利承継相続人」と呼びます
「政令で定めるもの」の中身 租税特別措置法施行令19条の3が、取締役等が新株予約権を行使できる期間内に死亡した場合に、当該付与決議に基づき当該新株予約権を行使できることとなる相続人と定めています
相続・遺贈後の株式の扱い 租税特別措置法29条の2が「特例適用者」「承継特例適用者」「特定株式」「取締役等の特定株式」を定めています
新株予約権自体の相続財産該当性・評価 相続税法及び財産評価基本通達で確認することになります
相続人が行使した場合の所得区分 所得税基本通達23〜35共-6は雇用契約又はこれに類する関係を基準としています
会社法上、新株予約権の内容として定める事項 会社法236条が列挙しています。譲渡による取得への会社の承認の要否は定めますが、相続の可否は定めていません
行使専属・譲渡禁止という設計の例 最高裁平成17年1月25日判決の裁判要旨が、当該事案(会社法上の新株予約権ではない)の制度についてそう認定しています

「権利承継相続人」とは誰を指すのか

租税特別措置法29条の2は、取締役等の相続人のうち「政令で定めるもの」だけを権利承継相続人として扱います。この「政令で定めるもの」の中身は、租税特別措置法施行令19条の3に置かれています。

「法第二十九条の二第一項に規定する政令で定める相続人は、同項に規定する取締役等(以下この項、第七項第二号イ及び第二十七項において「取締役等」という。)が新株予約権(同条第一項に規定する新株予約権をいう。以下この条において同じ。)を行使できる期間内に死亡した場合において、当該新株予約権に係る付与決議に基づき当該新株予約権を行使できることとなる当該取締役等の相続人とする。」(租税特別措置法施行令19条の3)

権利承継相続人とは、取締役等が新株予約権を行使できる期間内に死亡した場合に、その付与決議に基づいて行使できることとなる相続人をいいます。租税特別措置法29条の2はこの権利承継相続人を、取締役等・特定従事者と並ぶ「権利者」の一人として扱います。

相続・遺贈で株式を取得した者はどう位置づけられるのか

税制適格の適用を受けて株式を取得した者が保有する株式について、相続又は遺贈でさらに承継される場面についても、租税特別措置法29条の2に定めがあります。

「次に掲げる事由により、第一項本文の規定の適用を受けた個人(以下この項及び次項において「特例適用者」という。)が有する当該適用を受けて取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるもの(……以下この条において「特定株式」という。)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合(特例適用者から相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(……)により特定株式(……以下この項及び次項において「取締役等の特定株式」という。)の取得をした個人(以下この項において「承継特例適用者」という。)が、……」(租税特別措置法29条の2)

ここで条文は、税制適格の適用を受けて株式を取得した者を「特例適用者」、その者から相続又は遺贈により当該株式(「取締役等の特定株式」)を取得した個人を「承継特例適用者」と呼んでいます。この先の課税関係の枠組みはNon-residents, departure, and stock optionsとも関わるため、別途確認する必要があります。

新株予約権そのものは相続財産になるのか

権利承継相続人の話は、税制適格の要件を満たすかどうかという租税特別措置法29条の2の枠内の話です。これとは別に、死亡した取締役等が保有していた新株予約権それ自体が相続財産として相続税の課税対象になるかどうか、なるとしてどう評価するかは、相続税法及び財産評価基本通達で確認することになります。

相続人が権利を行使した場合、所得区分はどうなるのか

税制適格の要件を満たさない場合の株式取得に係る所得区分については、所得税基本通達23〜35共-6が次のように定めています。

「発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるとき」は「給与所得とする。」(所得税基本通達23〜35共-6)

この通達には、次の注記があります。

「(注)例えば、措置法第29条の2第1項((特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等))に規定する「取締役等」の関係については、雇用契約又はこれに類する関係に該当することに留意する。」(所得税基本通達23〜35共-6)

名指ししているのは「取締役等」の関係についてであり、権利承継相続人には触れていません。租税特別措置法29条の2は権利承継相続人を明文で権利者に含めますが、それは同条が定める非課税の枠内での話です。権利承継相続人が非適格の新株予約権(Taxation of non-qualified stock options)を行使した場合の所得区分は、この通達の文言と、被相続人と発行法人との関係をどう見るかの問題になります。

新株予約権の譲渡や行使を制限する定めはできるか

会社法236条は、新株予約権を発行するときにその内容として定めるべき事項を列挙しています。

「株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。」(会社法236条)

この列挙事項の一つに、譲渡による取得に会社の承認を要するかどうかがあります。

「譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨」(会社法236条)

この六号が定めるのは、譲渡による新株予約権の取得に会社の承認を要することとするかどうかであり、相続(一般承継)による取得の可否を定めるものではありません。

裁判所が公表している裁判要旨は次のとおりです。なお、この事案の新株予約権は米国法人が付与したもので、会社法上の新株予約権ではありません。

「被付与者の生存中は,その者のみがこれを行使することができ,その権利を譲渡し,又は移転することはできないものとされている」(最高裁判所第三小法廷 平成17年1月25日判決)

これは当該事案のストックオプション制度の内容についての認定であって、新株予約権一般に妥当する規範ではありません。この判決自体、争点は所得区分(給与所得か一時所得か。Stock option lawsuit (employment income or miscellaneous income / temporary income))であり、相続の可否を判示したものではありません。個々の新株予約権が相続の対象になるかどうかは、その内容を定めた契約・付与決議を確認する必要があります。

実務で迷いが生じるところ

  • 相続人が租税特別措置法施行令19条の3にいう「政令で定める相続人」に当たるかどうかは、付与決議・契約の内容と付き合わせて確認する必要があります。
  • 新株予約権が相続税の課税対象になるか、なるとしてどう評価するかは、相続税法及び財産評価基本通達を確認する必要があります。
  • 権利承継相続人に当たらない場合や非適格の場合の所得区分は、所得税基本通達23〜35共-6の文言と、被相続人と発行法人との関係をどう見るかによって変わりうる論点であり、個別に確認が必要です。

根拠条文

  • 租税特別措置法第29条の2第1項本文(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「当該取締役等の相続人(政令で定めるものに限る。以下この項、次項及び第六項において「権利承継相続人」という。)」
  • 租税特別措置法施行令第19条の3第5項(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項に規定する政令で定める相続人は、同項に規定する取締役等(以下この項、第七項第二号イ及び第二十七項において「取締役等」という。)が新株予約権(同条第一項に規定する新株予約権をいう。以下この条において同じ。)を行使できる期間内に死亡した場合において、当該新株予約権に係る付与決議に基づき当該新株予約権を行使できることとなる当該取締役等の相続人とする。」
  • 租税特別措置法第29条の2第4項(見出し同上)/引用した文言:「次に掲げる事由により、第一項本文の規定の適用を受けた個人(以下この項及び次項において「特例適用者」という。)が有する当該適用を受けて取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるもの(……以下この条において「特定株式」という。)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合(特例適用者から相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(……)により特定株式(……以下この項及び次項において「取締役等の特定株式」という。)の取得をした個人(以下この項において「承継特例適用者」という。)が、……」
  • 会社法第236条第1項柱書(新株予約権の内容)/引用した文言:「株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。」
  • 会社法第236条第1項第六号(見出し同上)/引用した文言:「譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨」

根拠となる通達・Q&A・裁判例

  • 所得税基本通達23〜35共-6(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)/引用した文言:「発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるとき」及び「給与所得とする。」
  • 所得税基本通達23〜35共-6(見出し同上)/引用した文言:「(注)例えば、措置法第29条の2第1項((特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等))に規定する「取締役等」の関係については、雇用契約又はこれに類する関係に該当することに留意する。」
  • 最高裁判所第三小法廷 平成17年1月25日判決(平成16年(行ヒ)第141号)/裁判要旨の引用:「被付与者の生存中は,その者のみがこれを行使することができ,その権利を譲渡し,又は移転することはできないものとされている」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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