RSU(restricted stock unit、譲渡制限付株式ユニット)という呼び名は、所得税法にも法人税法にも条文として出てきません。日本の税法上の条文用語ではなく、一定期間の勤務等の条件を満たしたときに株式を交付する約束を指す呼び名として使われています。名称の似た特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)は、これとは別に条文が定める概念です。通常のRSUでは、勤務等の条件を満たして株式を取得する際の経済的利益が、雇用関係等に基づく報酬として原則給与所得になります。以下では、この通常の形と、交付される株式にさらに譲渡制限が付く場合とを分けて、適用する規定を見ていきます。
条文の定義
「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。」
所得税法36条は、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益を収入する場合の収入金額を、その物・権利・利益の価額によるとする一般規定です。RSUと呼ばれる仕組みのもとで実際に株式が交付されたときに、まずこの36条の在り処が問題になります。
骨格
| Issue | 条文・通達の定め |
|---|---|
| 株式交付時の収入金額と価額の算定時点 | 所得税法36条・28条 |
| 特定譲渡制限付株式の要件 | 所得税法施行令84条 |
| 交付を受けた個人の所得区分(特定譲渡制限付株式等の場合) | 所得税基本通達23〜35共-5の2 |
| 発行会社側の費用帰属事業年度(譲渡制限付株式の場合) | 法人税法54条・法人税法施行令111条の2 |
| 確定した数の株式・新株予約権を交付する旨の定めに基づく給与の損金算入 | 法人税法34条 |
| 確定数給与の費用の額 | 法人税法施行令71条の3 |
| 譲渡制限付新株予約権を対価とする場合の費用帰属事業年度 | 法人税法54条の2 |
| 外国親会社付与の場合にある判例(RSUの判例ではない) | 最高裁判所第三小法廷 平成17年1月25日判決 |
株式が交付された時点で、まず何が適用されるのか
RSUと呼ばれる仕組みのもとで、勤務条件等を満たした結果として株式そのものが個人に交付されたときは、給与所得を定める所得税法28条が適用の起点の一つになります。同条は、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」と定めています。あわせて、所得税法36条は、金銭以外の物又は権利を収入する場合の価額について「前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。」とも定めており、取得する時点の価額をどう見るかが、条文の在り処としてまず問題になります。
交付された株式に、さらに譲渡制限が付く場合
RSUの付与時点では、通常、株式そのものはまだ交付されていません。一定の条件を満たして株式を取得する権利が確定することと、交付済みの株式について譲渡制限が解除されることは別です。以下の所得税法施行令84条は、交付される株式にさらに譲渡制限が付き、その株式が同条の「特定譲渡制限付株式」に当たる場合の検討です。同条は、「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(……)についての制限が解除された日(……)における価額とする。」と定め、その要件について「当該譲渡制限付株式が当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。」「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」と定めています。当たる場合、交付を受けた個人の所得区分は所得税基本通達23〜35共-5の2により、「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。」と定められています。
発行会社側では、どちらの費用帰属の特例に乗りうるのか
通常の用語法では、株式そのものを先に交付して譲渡制限を付けるものがRS、あらかじめ交付株式数を定め、一定期間の勤務等の条件を満たした後に株式を交付するものがRSUです。新株予約権を付与するストックオプションとも区別します。RSのうち要件を満たすものは法人税法54条・同法施行令111条の2の特例を検討します。RSUについて、内国法人の役員に確定した数の株式を交付する旨の定めに基づく給与に当たる場合は、Performance-based stock compensation delivered after the factで扱う法人税法34条の「……確定した数の株式(……)若しくは新株予約権……を交付する旨の定めに基づいて支給する給与……」の類型と、その費用の額を定める法人税法施行令71条の3が問題になります。同条は、確定数給与に係る費用の額について「……法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与を除き……」と定めており、法人税法54条・54条の2による給与を除いたうえで確定数給与の費用の額を計算する仕組みになっています。新株予約権を対価とする場合の費用帰属事業年度は、法人税法54条の2が別に定めています。発行会社側の損金算入はTax deductibility for the issuing company of stock optionsも参照してください。
外国親会社から付与される場合に、位置づけられる判例は何か
RSUが外国親会社の制度として付与される場合には、外国親会社ストックオプションについて示された最高裁判所第三小法廷 平成17年1月25日判決(平成16年(行ヒ)第141号)があります。同判決の裁判要旨は、「米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が……上記権利を行使して得た利益は,所得税法28条1項所定の給与所得に当たる。」と述べています。もっとも、この判決はストックオプションについての事案であり、RSUについての判例ではありません。外国親会社ストックオプションの課税関係の詳細はTaxation of foreign parent company stock optionsを参照してください。国税庁が公表している『ストックオプションに対する課税(Q&A)』(令和6年11月最終改訂)は、その名のとおりWhat is a stock option?についての説明です。
実務で迷いが生じるところ
- 付与時点で受け取るのが将来の株式交付を受けるユニットなのか、株式そのものなのかを確認します。通常のRSUでは、権利確定の条件、株式を取得する時点、その時の価額が個人課税の確認点です。交付株式にさらに譲渡制限が付く場合の所得税法施行令84条と、発行会社側の役員給与に関する法人税法34条・同法施行令71条の3は、それぞれの要件を分けて確認します。
- 特定譲渡制限付株式等に当たらない場合に、交付を受けた個人の所得区分がどの条文・通達によって定まるかは、契約の内容に即して個別に確認する必要があります。
- 外国親会社から付与される場合に平成17年1月25日最高裁判決の枠組みがどこまで及ぶかは、個別の事案に即して確認する必要があります。
根拠条文
- 所得税法第36条第1項(収入金額)/引用した文言:「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。」
- 所得税法第36条第2項(収入金額)/引用した文言:「前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。」
- 所得税法第28条第1項(給与所得)/引用した文言:「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」
- 所得税法施行令第84条第1項(譲渡制限付株式の価額等)/引用した文言:「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。次項第一号において同じ。)についての制限が解除された日(……)における価額とする。」「当該譲渡制限付株式が当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。」「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」
- 法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)/引用した文言:「当該個人において当該役務の提供につき所得税法その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額(次項及び第三項において「給与等課税額」という。)が生ずることが確定した日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。」
- 法人税法施行令第111条の2第1項(譲渡制限付株式の範囲等)/引用した文言:「譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(次号において「譲渡制限期間」という。)が設けられていること。」「法第五十四条第一項の個人から役務の提供を受ける内国法人又はその株式を発行し、若しくは同項の個人に交付した法人がその株式を無償で取得することとなる事由(その株式の交付を受けた同項の個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと若しくは当該個人の勤務実績が良好でないことその他の当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことその他のこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。)が定められていること。」
- 法人税法第34条第1項第2号(役員給与の損金不算入)/引用した文言:「その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(……)」
- 法人税法施行令第71条の3(確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等)/引用した文言:「内国法人の役員の職務につき、所定の時期に、確定した数の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(……以下この条において「確定数給与」という。)の支給として行う株式又は新株予約権の交付が正常な取引条件で行われた場合には、当該確定数給与に係る費用の額は、法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与を除き、その交付した株式又は新株予約権と銘柄を同じくする株式又は新株予約権の当該定めをした日における一単位当たりの価額にその交付した数を乗じて計算した金額(……次項において「交付決議時価額」という。)に相当する金額とする。」
- 法人税法第54条の2第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)/引用した文言:「内国法人が個人から役務の提供を受ける場合において、当該役務の提供に係る費用の額につき譲渡制限付新株予約権(譲渡についての制限その他の条件が付されている新株予約権として政令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この条において「特定新株予約権」という。)が交付されたとき(……)は、当該個人において当該役務の提供につき所得税法その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額を生ずべき事由(次項において「給与等課税事由」という。)が生じた日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。」
根拠となる通達・Q&A・裁判例
- 所得税基本通達23〜35共-5の2(特定譲渡制限付株式等の譲渡についての制限が解除された場合の所得区分)/引用した文言:「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。ただし、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が、当該特定譲渡制限付株式等を交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得とする。」
- 最高裁判所第三小法廷 平成17年1月25日判決(平成16年(行ヒ)第141号)/裁判要旨の引用:「米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が……上記権利を行使して得た利益は,所得税法28条1項所定の給与所得に当たる。」
補足の根拠・出典
上記資料の確認日:2026年9月7日。
本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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