Taxation of stock options

What is restricted stock

「特定譲渡制限付株式」は「リストリクテッド・ストック」とも呼ばれる株式報酬の一類型です。役務提供の対価として株式を先に交付し、勤務継続や業績達成を条件に譲渡制限を解除する仕組みで、権利行使を挟むWhat is a stock option?と異なります。将来の交付を約するWhat is an RSU (Restricted Stock Unit)との異同は別記事で扱います。

条文の定義

「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。次項第一号において同じ。)についての制限が解除された日(同日前に当該個人が死亡した場合において、当該個人の死亡の時に次項第二号に規定する事由に該当しないことが確定している当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式については、当該個人の死亡の日)における価額とする。」

所得税法施行令84条は、この特定譲渡制限付株式に係る収入金額とすべき価額を、交付時点ではなく譲渡についての制限が解除された日における価額によるとしています。

骨格

Issue 条文・通達の定め
特定譲渡制限付株式の要件 所得税法施行令第84条
上場会社における無償交付の仕組み 会社法第202条の2・第209条
発行会社の損金算入の時期 法人税法第54条
損金算入の対象となる譲渡制限付株式の範囲 法人税法施行令第111条の2
役員給与の損金不算入との関係 法人税法第34条
確定数給与の費用の額の計算(特定譲渡制限付株式を除く) 法人税法施行令第71条の3
交付を受けた個人の所得区分 所得税基本通達23〜35共-5の2
特定譲渡制限付株式等に関するその他の定め 所得税基本通達23〜35共-5の2から5の4まで

何が「譲渡制限付株式」で、何が「特定」譲渡制限付株式なのか

所得税法施行令84条は、譲渡制限付株式の要件を「譲渡についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(次号において「譲渡制限期間」という。)が設けられていること」、および「前項の個人から役務の提供を受ける法人又はその株式を発行し、若しくは同項の個人に交付した法人がその株式を無償で取得することとなる事由(……)が定められていること」の2要件で定めています。「特定」となるのは、「当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること」、又は「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること」のいずれかに該当する場合であり、両方を満たすことを求める作りではありません。

会社法上、上場会社が金銭の払込みなしに株式を交付できるのはなぜか

会社法202条の2は、「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社」が定款又は株主総会の決議による会社法361条に掲げる事項についての定めに従い株式を募集するときの特則として、「取締役の報酬等(……)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨」および「募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)」を定めなければならないとしています。対応して、会社法209条は「第一項の規定にかかわらず、第二百二条の二第一項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、募集株式の引受人は、割当日に、その引き受けた募集株式の株主となる。」とし、株主となる時期を割当日とします。

発行会社の費用の額は、いつの事業年度の損金になるのか

法人税法54条は、内国法人が個人から役務の提供を受け、その費用の額につき特定譲渡制限付株式が交付されたときは、「当該個人において当該役務の提供につき所得税法その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額(……)が生ずることが確定した日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。」と定めています。給与等課税額が生じないときは、「……当該役務の提供を受ける内国法人の当該役務の提供を受けたことによる費用の額又は当該役務の全部若しくは一部の提供を受けられなかつたことによる損失の額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」とされています。費用の額は法人税法施行令111条の2によります。

役員給与の損金不算入とはどう関係するか

法人税法34条は、役員の職務につき所定の時期に支給する給与のうち、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないものとして損金算入が認められる類型の一つに「確定した額の金銭又は確定した数の株式(……)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは……に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」を挙げています。「確定数給与」の費用の額の計算方法を定める法人税法施行令71条の3は、「法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は……による給与を除き」と定めて特定譲渡制限付株式による給与を対象から除いており、その費用の額は法人税法54条と法人税法施行令111条の2によります。

交付を受けた個人の所得区分はどう決まるか

所得税基本通達23〜35共-5の2は、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が解除された場合の所得区分を、交付法人と交付を受けた者との関係等に応じて定めています。「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。ただし、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が、当該特定譲渡制限付株式等を交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得とする。」とされ、これとは別に「特定譲渡制限付株式等が、個人の営む業務に関連して交付されたと認められる場合」についての定めも置かれています。

特定譲渡制限付株式等については、このほか所得税基本通達23〜35共-5の2から5の4までに定めがあります。

実務で迷いが生じるところ

  • 交付された譲渡制限付株式が「実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること」(法人税法54条も同様の文言を置く)に当たるかどうかは、条文上に判定基準の列挙はなく、交付の経緯や条件を個別に確認する必要があります。
  • 給与等課税額が生ずることが確定した日がいつかは、退職や死亡といった事由が絡む場合、所得税法施行令84条の定めに照らして個別に確認する必要があります。
  • 所得税基本通達23〜35共-5の3・5の4が具体的に何を定めているかは、原文を国税庁ウェブサイトでご確認ください。

根拠条文

  • 所得税法施行令第84条第1項(譲渡制限付株式の価額等)/引用した文言:「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。次項第一号において同じ。)についての制限が解除された日(同日前に当該個人が死亡した場合において、当該個人の死亡の時に次項第二号に規定する事由に該当しないことが確定している当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式については、当該個人の死亡の日)における価額とする。」「当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。」「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」
  • 所得税法施行令第84条第2項(譲渡制限付株式の価額等)/引用した文言:「譲渡についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(次号において「譲渡制限期間」という。)が設けられていること。」「前項の個人から役務の提供を受ける法人又はその株式を発行し、若しくは同項の個人に交付した法人がその株式を無償で取得することとなる事由(その株式の交付を受けた同項の個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと若しくは当該個人の勤務実績が良好でないことその他の当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことその他のこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。)が定められていること。」
  • 会社法第202条の2第1項(取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則)/引用した文言:「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従いその発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をするときは、第百九十九条第一項第二号及び第四号に掲げる事項を定めることを要しない。」「取締役の報酬等(第三百六十一条第一項に規定する報酬等をいう。第二百三十六条第三項第一号において同じ。)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨」「募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)」
  • 会社法第209条第4項(株主となる時期等)/引用した文言:「第一項の規定にかかわらず、第二百二条の二第一項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、募集株式の引受人は、割当日に、その引き受けた募集株式の株主となる。」
  • 法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)/引用した文言:「当該個人において当該役務の提供につき所得税法その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額(次項及び第三項において「給与等課税額」という。)が生ずることが確定した日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。」
  • 法人税法第54条第2項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)/引用した文言:「前項に規定する場合において、同項の個人において同項の役務の提供につき給与等課税額が生じないときは、当該役務の提供を受ける内国法人の当該役務の提供を受けたことによる費用の額又は当該役務の全部若しくは一部の提供を受けられなかつたことによる損失の額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」
  • 法人税法施行令第111条の2第1項(譲渡制限付株式の範囲等)/引用した文言:「譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(次号において「譲渡制限期間」という。)が設けられていること。」「法第五十四条第一項の個人から役務の提供を受ける内国法人又はその株式を発行し、若しくは同項の個人に交付した法人がその株式を無償で取得することとなる事由(その株式の交付を受けた同項の個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと若しくは当該個人の勤務実績が良好でないことその他の当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことその他のこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。)が定められていること。」
  • 法人税法第34条第1項第2号(役員給与の損金不算入)/引用した文言:「その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの」
  • 法人税法施行令第71条の3第1項(確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等)/引用した文言:「法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与を除き」

根拠となる通達・Q&A・裁判例

  • 所得税基本通達23〜35共-5の2(特定譲渡制限付株式等の譲渡についての制限が解除された場合の所得区分)/引用した文言:「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。ただし、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が、当該特定譲渡制限付株式等を交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得とする。」「特定譲渡制限付株式等が、個人の営む業務に関連して交付されたと認められる場合」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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