Taxation of stock options

Performance-based stock compensation delivered after the fact

事後交付型株式報酬は、株式を交付する旨をあらかじめ定め、条件が満たされた後に株式を交付する設計を指す実務上の呼び方です。あらかじめ交付株式数を定め、一定期間の勤務等の後に交付するRSUがその一つです。本稿では、税法が確定数給与として併せて扱う、将来に新株予約権を交付する定めについても取り上げますが、新株予約権そのものをRSUと呼ぶわけではありません。条文の側から見ると、法人税法34条・54条・54条の2・施行令71条の3という4つの規定の位置関係として整理できます。先に株式を交付し譲渡制限の解除を後から待つ特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)とは前後が逆になります。

条文の定義

「内国法人の役員の職務につき、所定の時期に、確定した数の株式(……)又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(……以下この条において「確定数給与」という。)の支給として行う株式又は新株予約権の交付が正常な取引条件で行われた場合には、当該確定数給与に係る費用の額は、法第五十四条第一項(……)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は法第五十四条の二第一項(……)に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与を除き、その交付した株式又は新株予約権と銘柄を同じくする株式又は新株予約権の当該定めをした日における一単位当たりの価額にその交付した数を乗じて計算した金額(……次項において「交付決議時価額」という。)に相当する金額とする。」

法人税法施行令71条の3は、あらかじめ確定した数の株式又は新株予約権を交付する旨の定め(確定数給与)に基づく費用の額を、交付を受けた時点ではなく、その定めをした日における一単位当たりの価額に交付数を乗じた金額(交付決議時価額)によるとしています。特定譲渡制限付株式・特定新株予約権(法人税法54条・54条の2)による給与は、この条の対象から除かれます。

骨格

Issue 条文・通達の定め
損金算入が認められる給与類型としての位置づけ 法人税法第34条
特定譲渡制限付株式の費用計上時期 法人税法第54条
特定新株予約権の費用計上時期 法人税法第54条の2
いずれにも当たらない確定数給与の費用の額の算定 法人税法施行令第71条の3
上場会社が株式を無償で交付する仕組み 会社法第202条の2・第209条
上場会社が新株予約権を無償で発行する仕組み 会社法第236条

法人税法34条・54条・54条の2・施行令71条の3はどう位置づけられるか

法人税法34条は、損金算入が認められる給与類型の一つに「その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(……)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(……)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(……)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(……)」を挙げています。株式に譲渡制限が付された状態で交付される場合の費用計上時期は法人税法54条が、新株予約権について同様の場合は54条の2が定めています。いずれの譲渡制限も付されず条件成就後に初めて交付される確定数給与は、施行令71条の3によります。

「特定」譲渡制限付株式・「特定」新株予約権とは何か

「譲渡制限付株式」の範囲は法人税法施行令111条の2が、「譲渡制限付新株予約権」の範囲は同111条の3が定めています。111条の3は「法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する政令で定める新株予約権は、所得税法施行令第八十四条第三項(譲渡制限付株式の価額等)に規定する権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているものとする。」と定めています。

この範囲を前提に、「特定」の要件は54条自身が定めています。同条は「当該譲渡制限付株式が当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。」又は「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」のいずれかに該当するものを「特定譲渡制限付株式」とし、54条の2も同じ作りで「特定新株予約権」を定めています。

上場会社は、株式・新株予約権をどのように無償で交付するのか

株式の無償交付の根拠は会社法202条の2によります。同条は「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、……募集をするときは、第百九十九条第一項第二号及び第四号に掲げる事項を定めることを要しない。」としつつ、「取締役の報酬等(……)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨」及び「募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)」を定めるとしています。会社法209条は「第一項の規定にかかわらず、……募集株式の引受人は、割当日に、その引き受けた募集株式の株主となる。」と定めています。

新株予約権の無償発行の根拠は会社法236条によります。同条は「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、……新株予約権を発行するときは、第一項第二号に掲げる事項を当該新株予約権の内容とすることを要しない。この場合において、当該株式会社は、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。」としたうえで、「取締役の報酬等として又は取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込み又は第一項第三号の財産の給付を要しない旨」を定めるとしています。

交付を受けた個人の所得はどう区分されるのか

勤務等の条件を満たして株式を取得する通常のRSUでは、雇用関係等に基づく経済的利益は、所得税法28条・36条により原則として給与所得になります。株式を取得し利益を享受する時の価額が基礎です。以下は、交付される株式にさらに譲渡制限が付く場合の特例であり、株式の交付を将来約束したことだけで適用されるものではありません。

所得税法施行令84条は、「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(……)についての制限が解除された日(……)における価額とする。」と定めています。所得税基本通達23〜35共-5の2は、この所得区分について「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。ただし、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が、当該特定譲渡制限付株式等を交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得とする。」と定めています。

実務で迷いが生じるところ

  • 事後交付型は、条件成就までは株式や新株予約権が交付されない設計を指します。交付時点でなお譲渡制限が付されているかは個々の設計によるため、所得税法施行令84条の枠組みがどこまで及ぶかは契約や規程を個別に確認する必要があります。
  • 法人税法施行令71条の3にいう「正常な取引条件で行われた場合」に当たるかは、条文上に判定基準の列挙はなく、交付の経緯や条件を個別に確認する必要があります。
  • 信託を介して株式を交付する設計では、募集株式の発行か自己株式の処分か、割当日をいつと捉えるかを、信託契約や交付規程の内容から個別に確認する必要があります。

根拠条文

  • 法人税法施行令第71条の3第1項(確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等)/引用した文言:「内国法人の役員の職務につき、所定の時期に、確定した数の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(……以下この条において「確定数給与」という。)の支給として行う株式又は新株予約権の交付が正常な取引条件で行われた場合には、当該確定数給与に係る費用の額は、法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与を除き、その交付した株式又は新株予約権と銘柄を同じくする株式又は新株予約権の当該定めをした日における一単位当たりの価額にその交付した数を乗じて計算した金額(……次項において「交付決議時価額」という。)に相当する金額とする。」
  • 法人税法第34条第1項第2号(役員給与の損金不算入)/引用した文言:「その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(……)」
  • 法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)/引用した文言:「当該譲渡制限付株式が当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。」「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」
  • 法人税法第54条の2第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)/引用した文言:「当該譲渡制限付新株予約権と引換えにする払込みに代えて当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権をもつて相殺されること。」「前号に掲げるもののほか、当該譲渡制限付新株予約権が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。」
  • 法人税法施行令第111条の3第1項(譲渡制限付新株予約権の範囲等)/引用した文言:「法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する政令で定める新株予約権は、所得税法施行令第八十四条第三項(譲渡制限付株式の価額等)に規定する権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているものとする。」
  • 法人税法施行令第111条の2第1項(譲渡制限付株式の範囲等)/引用した文言:「譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(次号において「譲渡制限期間」という。)が設けられていること。」「法第五十四条第一項の個人から役務の提供を受ける内国法人又はその株式を発行し、若しくは同項の個人に交付した法人がその株式を無償で取得することとなる事由(その株式の交付を受けた同項の個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと若しくは当該個人の勤務実績が良好でないことその他の当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことその他のこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。)が定められていること。」
  • 会社法第202条の2第1項(取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則)/引用した文言:「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従いその発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をするときは、第百九十九条第一項第二号及び第四号に掲げる事項を定めることを要しない。」「取締役の報酬等(第三百六十一条第一項に規定する報酬等をいう。第二百三十六条第三項第一号において同じ。)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨」「募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)」
  • 会社法第209条第4項(株主となる時期等)/引用した文言:「第一項の規定にかかわらず、第二百二条の二第一項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、募集株式の引受人は、割当日に、その引き受けた募集株式の株主となる。」
  • 会社法第236条第3項(新株予約権の内容)/引用した文言:「金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに従い新株予約権を発行するときは、第一項第二号に掲げる事項を当該新株予約権の内容とすることを要しない。この場合において、当該株式会社は、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。」「取締役の報酬等として又は取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込み又は第一項第三号の財産の給付を要しない旨」
  • 所得税法施行令第84条第1項(譲渡制限付株式の価額等)/引用した文言:「個人が法人に対して役務の提供をした場合において、当該役務の提供の対価として譲渡制限付株式であつて次に掲げる要件に該当するもの(以下この項において「特定譲渡制限付株式」という。)が当該個人に交付されたとき(……)における当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式に係る法第三十六条第二項(収入金額)の価額は、当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。次項第一号において同じ。)についての制限が解除された日(同日前に当該個人が死亡した場合において、当該個人の死亡の時に次項第二号に規定する事由に該当しないことが確定している当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式については、当該個人の死亡の日)における価額とする。」

根拠となる通達・Q&A・裁判例

  • 所得税基本通達23〜35共-5の2(特定譲渡制限付株式等の譲渡についての制限が解除された場合の所得区分)/引用した文言:「特定譲渡制限付株式等が、交付法人との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して交付されたと認められる場合は、給与所得とする。ただし、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が、当該特定譲渡制限付株式等を交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得とする。」

補足の根拠・出典

上記資料の確認日:2026年9月7日。

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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