税制改正大綱レビュー

平成24年度税制改正大綱で決まったこと、給与所得控除の上限と国外財産調書

対象時点について:本稿は2011年12月公表時の平成24年度税制改正大綱の紹介です。本文の制度・適用予定日は当時の内容です。現在の申告手続を示すものではありません。

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成24年度税制改正の大綱は、平成23年12月10日に公表された、政府が決定した大綱です。原文の表紙には、大綱の名称と平成23年12月10日という日付が記されています。経緯は冒頭の「はじめに」にあります。

こうした経緯の下、平成24年度税制改正に向けては、税制調査会におけるこれまでの議論の積み重ねにも立脚しながら、成長戦略に資する税制措置、税制の公平性確保と課税の適正化、地方税の充実と住民自治の確立に向けた地方税制度改革、平成23年度税制改正の積残し事項の取扱いといった、特に喫緊の対応を要する税制改正事項の検討を進めてきました。

最後の積残し事項は、引き取る話です。大綱は、平成23年度税制改正について、国会における審議の結果、法人税率の引下げ等については実現したものの、その他の事項については見送られることとなったと書いています。そのうち特に緊要な事項を、この年に取り上げる構えです。近年の大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもあわせてご覧ください。

大綱の柱

大綱は三つの章からできています。第1章が基本的な考え方、第2章が平成24年度における主な取組み、第3章が平成24年度税制改正です。改正項目が並ぶのは第3章で、次の八つの分野に分かれています。

その章で決まったこと
個人所得課税 給与所得控除に上限が設けられ、特定支出控除が見直されます。勤続年数の短い役員等の退職所得の課税方法も改まります。
資産課税 住宅取得等資金の贈与に係る非課税限度額が引き上げられ、相続税の連帯納付義務を解除する場合が定められます。
法人課税 研究開発税制の上乗せ特例が延長され、環境関連投資促進税制と中小企業投資促進税制が拡充されます。復興支援の措置も設けられます。
消費課税 自動車重量税の「当分の間税率」が引き下げられ、石油石炭税に地球温暖化対策のための課税の特例が上乗せされます。
国際課税 徴収共助に関する規定が見直され、国外財産調書制度と過大支払利子税制が創設されます。
沖縄関連税制 国際物流拠点産業集積地域(仮称)における認定法人の所得控除制度などが創設されます。
関税 平成23年度末に適用期限が到来する暫定税率などが1年延長されます。
検討事項 寄附金控除の年末調整対象化など、引き続き検討する事項が挙げられます。

前年の平成23年度税制改正の大綱、翌年の平成25年度税制改正の大綱と並べて読むと、この年が何を引き取ったかが見えてきます。

給与所得控除に上限が設けられる

現在の給与所得控除は、給与収入に応じて逓増的に控除が増加していく仕組みで、上限がありません。大綱は、その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額について、245万円の上限を設けます。平成25年分以後の所得税および平成26年度分以後の個人住民税について適用されます。

理由は第2章にあります。大綱は、給与所得控除が「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整」の二つの性格を持つとした上で、就業者に占める給与所得者の割合が約9割となっている現状で「他の所得との負担調整」を認める必要性は薄れてきているのではないかと述べています。

上限と引き換えに、実額で控除する道である特定支出控除は使いやすくなります。特定支出の範囲に、職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費と、職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交際費(勤務必要経費)が追加されます。勤務必要経費は65万円が限度です。適用判定の基準も、現行の給与所得控除額から、収入金額1,500万円以下の場合はその2分の1に相当する金額、1,500万円を超える場合は125万円に引き下げられます。

役員等の退職金の課税方法が変わる

退職所得については、退職所得控除額を控除した残額の2分の1を所得金額とする累進緩和措置、すなわち「2分の1課税」が採られています。大綱は、退職手当等の支払者の役員等のうち、役員等としての勤続年数が5年以下の者が支払を受けるものについて、この2分の1とする措置を廃止します。ここでいう「役員等」とは、法人税法に規定する役員、国会議員および地方議会議員、国家公務員および地方公務員をいいます。

大綱が挙げる理由は、2分の1課税を前提に、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取りを繰り延べて高額な退職金を受け取ることにより、税負担を回避するといった事例が指摘されている、というものです。一般従業員の退職金は対象ではありません。

この改正は平成25年分以後の所得税について適用されます。個人住民税は、平成25年1月1日以後に支払われるべき退職手当等について適用されます。

住宅資金の贈与と、相続税の連帯納付義務

住宅取得等資金の贈与の非課税限度額

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、現行1,000万円の非課税限度額が、住宅の性能と贈与を受けた年に応じて次のとおりとされます。

贈与を受けた年 省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋の場合 それ以外の住宅用家屋の場合
平成24年中 1,500万円 1,000万円
平成25年中 1,200万円 700万円
平成26年中 1,000万円 500万円

適用対象となる住宅用家屋の床面積は、東日本大震災の被災者を除き、240平方メートル以下とされ、適用期限は平成26年12月31日までとされます。拡充・延長の理由は、高齢者が保有する資産を消費性向の高い若年世代に移転して需要を喚起する観点と、省エネルギー性および耐震性を備えた良質な住宅ストックを形成する観点の二つです。

連帯納付義務が解除される場合

相続税の連帯納付義務については、相続後長期間が経過した後に履行を求められるケースがあるとの批判があると大綱は述べています。これを踏まえ、申告期限等から5年を経過した場合と、納税義務者が延納または納税猶予の適用を受けた場合には、連帯納付義務が解除されます。ただし、5年を経過した時点で履行を求めているものについては、その後も継続して履行を求めることができるとされています。平成24年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用されます。

地球温暖化対策のための税が導入される

平成23年度税制改正に盛り込まれながら見送られた「地球温暖化対策のための税」が、この年に改めて実現が図られます。手法は、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税に、二酸化炭素の排出量に応じた税率を上乗せする「地球温暖化対策のための課税の特例」を設けるというものです。上乗せ分は、原油および石油製品については1キロリットル当たり760円、ガス状炭化水素は1トン当たり780円、石炭は1トン当たり670円です。実施は平成24年10月1日からで、税率は次のとおり段階的に引き上げられます。

時期 原油・石油製品(1キロリットル当たり) ガス状炭化水素(1トン当たり) 石炭(1トン当たり)
現行 2,040円 1,080円 700円
平成24年10月1日 2,290円 1,340円 920円
平成26年4月1日 2,540円 1,600円 1,140円
平成28年4月1日 2,800円 1,860円 1,370円

大綱は、このように「広く薄く」負担を求めることで、特定の分野や産業に過重な負担となることを避け、課税の公平性を確保すると説明しています。内航運送用船舶に利用される重油および軽油、鉄道事業や農林漁業に利用される軽油などについては、上乗せされる税率についてのみ、平成26年3月31日までの間の免税・還付措置が設けられます。

国外の財産と、関連者への利子

国外財産調書制度の創設

その年の12月31日において価額の合計額が5千万円を超える国外に所在する財産を有する居住者は、その財産の種類、数量および価額その他必要な事項を記載した「国外財産調書」を、翌年3月15日までに税務署長に提出しなければならないこととされます。

提出したかどうかで加算税が変わります。国外財産に係る所得税または相続税について申告漏れまたは無申告があった場合に、提出された国外財産調書にその国外財産の記載があるときは、通常課される過少申告加算税または無申告加算税の額から、その所得税または相続税の5%に相当する金額が控除されます。一方、創設時の不提出・記載不備による5%加重の対象は所得税に限られ、相続税は対象外でした。所得税・相続税の双方を対象とする軽減措置とは、対象税目が異なります。不提出・虚偽記載に対する罰則も設けられ、法定刑は1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。調書の制度は平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用されます。なお、成立後の適用関係では、不提出・虚偽記載に対する刑事罰は、平成27年1月1日以後の違反行為から適用されました。

過大支払利子税制の導入

所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防ぐ措置も導入されます。法人の関連者に対する純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える場合には、その超える部分の金額は当期の損金の額に算入しないこととされます。関連者の範囲は、直接・間接の持分割合50%以上の関係にある者、実質支配・被支配関係にある者、これらの者による債務保証を受けた第三者等です。関連者純支払利子等の額が1千万円以下である場合などは適用されません。平成25年4月1日以後に開始する事業年度からです。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 給与等の収入金額が1,500万円を超える方は、給与所得控除の見直しをご覧ください。控除額に245万円の上限が設けられます。
  • 資格取得費や、職務に関連する図書費・衣服費・交際費をご自身で負担している方は、特定支出控除の見直しをご覧ください。
  • 会社の役員に就任して5年以内に退職金を受け取る予定のある方は、退職所得課税の見直しをご覧ください。
  • 親や祖父母から住宅の資金の贈与を受ける予定のある方は、贈与を受ける年と住宅の性能で非課税限度額が変わります。
  • 相続税の連帯納付義務を求められている方は、解除される場合が定められますのでご覧ください。
  • その年の12月31日時点で国外に5千万円を超える財産をお持ちの方は、国外財産調書制度をご覧ください。
  • 燃料を多く使う事業を営んでいる方は、地球温暖化対策のための税をご覧ください。免税・還付の対象となる用途が列挙されています。

出所

  • 「平成24年度税制改正大綱」(平成23年12月10日)

訂正にあたり確認した資料

本稿は平成24年度税制改正大綱を扱う過年度記事です。2026年9月7日、国外財産調書制度創設時の加重措置の対象税目と、成立後の施行時期の補足を訂正しました。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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