裁決に納得がいかないとき、裁判所に訴えます。ただし、いきなり訴えることはできません。国税通則法第百十五条の不服申立ての前置です。
税務の争いには、この順番があります。
原則:裁決を経なければ訴えられない
第百十五条第一項本文です。
国税に関する法律に基づく処分…で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。
行政事件訴訟法の原則は自由選択(処分の取消訴訟は不服申立てを経なくても提起できる)ですが、国税はこの規定で例外になっています。
そして経なければならないのは審査請求についての裁決です。再調査の請求についての決定ではありません。再調査の請求は選択制ですから、それだけでは前置を満たしません。
順番はこうなります。
1. 処分
2. 再調査の請求(任意)または直接
3. 審査請求(必須)
4. 訴訟
例外は3つ
第百十五条第一項ただし書が、3つの場合を挙げています。
- 一号 国税不服審判所長または国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がないとき
- 二号 更正決定等の取消しを求める訴えを提起した者が、その訴訟の係属している間に、当該更正決定等に係る課税標準等・税額等についてされた他の更正決定等の取消しを求めようとするとき
- 三号 裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他、裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき
第一号がよく使われます。3か月待って裁決が出なければ、裁決を待たずに訴えられます。
訴訟のルールは行政事件訴訟法
第百十四条です。
国税に関する法律に基づく処分に関する訴訟については、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法…その他の一般の行政事件訴訟に関する法律の定めるところによる。
つまり、通則法に特則がある部分だけ通則法、それ以外は行政事件訴訟法です。出訴期間や被告適格といった基本的なルールは行政事件訴訟法に従います。
争っている間も、税金は取られる
ここが実務でいちばん誤解されるところです。第百五条第一項本文です。
国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、その目的となつた処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
不服申立てをしても、処分の効力は止まりません。執行不停止の原則です。滞納処分も進みます。
ただし、ただし書があります。差し押さえた財産の換価は、財産の価額が著しく減少するおそれがあるときなどを除き、不服申立てについての決定または裁決があるまで、することができません。
差押えは止まらないが、公売は原則として待つ、という構造です。
徴収を止められる場合がある
第百五条には猶予の規定が続きます。
第二項 再調査審理庁または国税庁長官は、必要があると認める場合には、申立てにより、または職権で、徴収の全部・一部の猶予、滞納処分の続行の停止をすることができる。
第三項 担保を提供して差押えをしないこと・差押えの解除を求めた場合、相当と認めるときは、これに応じることができる。
第四項 国税不服審判所長は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、または職権で、徴収の所轄庁の意見を聴いたうえ、徴収の猶予・滞納処分の続行の停止を徴収の所轄庁に求めることができる。
第六項 徴収の所轄庁は、審判所長から求められたときは、猶予・停止をし、または差押えをせず・差押えを解除しなければならない。
審判所長は自ら猶予するのではなく、徴収の所轄庁に求める。求められた側は応じなければならない。この二段構えになっています。
いずれも「必要があると認める場合」「相当と認めるとき」が要件です。申し立てれば必ず止まるわけではありません。
裁決は行政庁を拘束する、では判決は
第百二条第一項により、裁決は関係行政庁を拘束します。判決の効力は行政事件訴訟法の定めるところによります。
なお、第百十五条第二項は、決定または裁決をした者は、その時に処分についての訴訟が係属している場合には、再調査決定書または裁決書の謄本を裁判所に送付するものとするとしています。
実務でよく相談を受ける点
- 審査請求で負けたときに、訴訟まで行くかどうか。費用と時間、そして争点の性質で判断が分かれます。
- 争っている間の資金繰り。第百五条の執行不停止が効いてくる場面です。担保の提供を含め、早い段階で組み立てておく必要があります。
- 3か月経過による例外(第一号)を使うかどうか。
訴訟を見据えるなら、審査請求の段階での主張と証拠の作り方から変わります。処分の通知を受けた時点でご相談いただくのがいちばんです。
根拠条文
- 国税通則法第102条(裁決の拘束力)
- 国税通則法第105条(不服申立てと国税の徴収との関係)
- 国税通則法第115条(不服申立ての前置等)
- 行政事件訴訟法第114条
条文の見出しは e-Gov 法令検索の法令データで確認しています。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










