税務調査の基礎知識

告発と通告処分とは

犯則調査(いわゆる査察)が終わったあと、どうなるか。国税通則法は告発通告処分という2つの出口を用意しています。第百五十五条から第百六十条までです。

どちらに進むかは、その国税が「間接国税」かどうかで決まります。ここが制度の骨格です。

間接国税かどうかで分かれる

第百五十五条は、次の犯則事件について、当該職員は犯則があると思料するときは検察官に告発しなければならないと定めています。

  • 一号 間接国税以外の国税に関する犯則事件
  • 二号 申告納税方式による間接国税に関する犯則事件(酒税法第五十五条第一項または第三項の罪その他の政令で定める罪に係る事件に限る)

「しなければならない」です。裁量ではありません。

所得税・法人税・相続税は間接国税以外の国税です。したがって、これらのほ脱事件で犯則があると思料されれば、通告処分という選択肢はなく、告発一択になります。

なお、間接国税の定義は第百三十五条第一項の括弧書きにあり、「消費税法第四十七条第二項に規定する課税貨物に課される消費税その他の政令で定める国税」とされています。政令に委ねられている部分があります。

間接国税の場合:まず報告、そして通告処分

第百五十六条第一項は、国税局または税務署の職員が間接国税に関する犯則事件(155条2号のものを除く)の調査を終えたときは、その結果を所轄国税局長または所轄税務署長に報告しなければならないとしています。

ただし、次のいずれかに当たるときは、直ちに検察官に告発しなければなりません。

  • 一 犯則嫌疑者の居所が明らかでないとき
  • 二 犯則嫌疑者が逃走するおそれがあるとき
  • 三 証拠となると認められるものを隠滅するおそれがあるとき

報告を受けた国税局長または税務署長は、調査により犯則の心証を得たとき、第百五十七条第一項により通告処分を行います。

通告する内容は条文に列挙されています。

  • 罰金に相当する金額
  • 没収に該当する物件
  • 追徴金に相当する金額
  • 書類の送達、差押物件等の運搬・保管に要した費用

これらを指定の場所に納付すべき旨を、理由を明示して書面により通告します。

通告処分を履行すると、起訴されない

第百五十七条第五項です。

犯則者は、第一項の通告の旨…を履行した場合においては、同一事件について公訴を提起されない。

これが通告処分の効果です。行政手続で終わらせる仕組みで、交通反則金に似た構造といえます。

また第四項により、通告があったときは公訴の時効はその進行を停止し、通告を受けた日の翌日から起算して20日を経過した時から再び進行を始めます。

通告処分でも告発に回る場合

第百五十七条第二項です。次のいずれかに当たると認めるときは、通告せずに直ちに検察官に告発しなければなりません。

  • 一 情状が拘禁刑に処すべきものであるとき
  • 二 犯則者が通告の旨を履行する資力がないとき

履行しなければ告発

第百五十八条第一項です。通告等を受けた日の翌日から起算して20日以内に履行しないときは、国税局長または税務署長は検察官に告発しなければなりません。

ただし、20日を経過しても告発前に履行した場合はこの限りでないとされています。期間経過だけで自動的に告発になるわけではありません。

第二項は、犯則者の居所が明らかでない、書類の受領を拒んだ、その他の事由で通告等ができないときも同様としています。

間接国税の告発は取り消せない

第百五十九条第一項は、間接国税に関する犯則事件は職員または国税局長・税務署長の告発を待って論ずる、としています。告発が訴訟条件になっているということです。

そして第五項に、短く、こう書かれています。

第一項の告発は、取り消すことができない。

この第五項が指しているのは第一項の告発、つまり間接国税に関する犯則事件についての告発です。

告発とともに、調書と領置物件・差押物件が検察官に引き継がれ(第二項)、引き継がれた物件は刑事訴訟法の規定により検察官によって押収されたものとみなされます(第四項)。

犯則の心証を得なかったとき

第百六十条です。国税局長または税務署長は、間接国税に関する犯則事件を調査し、犯則の心証を得ない場合には、その旨を犯則嫌疑者に通知しなければならず、物件の領置・差押え等があるときはその解除を命じなければなりません。

条文が用意しているのは、間接国税についての規定です。

押さえておきたい構造

  • 所得税・法人税のほ脱は、通告処分では終わらない。犯則があると思料されれば告発される。
  • 通告処分は間接国税の制度であり、履行すれば公訴を提起されない。
  • 間接国税に関する犯則事件の告発は取り消せない(159条5項)。

ここから先は刑事手続です。税理士単独ではなく、弁護士との連携が必要な領域になります。

根拠条文

  • 国税通則法第135条(現行犯事件の臨検、捜索又は差押え)
  • 国税通則法第155条(間接国税以外の国税に関する犯則事件等についての告発)
  • 国税通則法第156条(間接国税に関する犯則事件についての報告等)
  • 国税通則法第157条(間接国税に関する犯則事件についての通告処分等)
  • 国税通則法第158条(間接国税に関する犯則事件についての通告処分の不履行)
  • 国税通則法第159条(検察官への引継ぎ)
  • 国税通則法第160条(犯則の心証を得ない場合の通知等)
  • 酒税法第55条
  • 消費税法第47条(引取りに係る課税貨物についての課税標準額及び税額の申告等)

条文の見出しは e-Gov 法令検索の法令データで確認しています。

本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

一覧に戻る

ピックアップ

  • バーチャル顧問

    バーチャル顧問

    有料メールマガジンをひとつでもご購読いただければ、安価にコンサルティングサービスを受けることができる仕組みです。

    バーチャル顧問はこちら

  • セミナー・イベント

    セミナー・イベント

    当事務所が開催するセミナー・イベントをお知らせします。国際税務相談からM&Aまで様々なテーマで開催しております。

    セミナー・イベント情報はこちら

03-6447-1768

柳澤国際税務会計事務所株式会社柳澤総合研究所(グループ会社)

〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-5-11 SuSLOB 北参道7F
事務所のご案内
地図を見る(google map)

メールでのご相談・お問い合わせ

無料メルマガ