条文の定義
「当該新株予約権(当該新株予約権に係る契約において、次に掲げる要件(当該新株予約権が当該取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号から第六号までに掲げる要件)が定められているものに限る。以下この条において「特定新株予約権」という。)を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権に係る株式の取得をした場合には、当該株式の取得に係る経済的利益については、所得税を課さない。」(租税特別措置法29条の2)
税制適格ストックオプションとは、租税特別措置法29条の2に定める要件を満たす新株予約権(同条の「特定新株予約権」)をいいます。これを契約どおりに行使して株式を取得した場合、行使の時点では経済的利益に所得税は課されません。
骨格
| 論点 | 条文・Q&Aの定め |
|---|---|
| 契約の当事者・権利者 | 契約当事者は取締役等・特定従事者。権利承継相続人は相続により行使できる者(大口株主等を除く) |
| 権利行使の期間 | 付与決議の日後二年を経過した日から一定期間内に行うこと(設立からの期間により上限が変わる) |
| 権利行使価額の年間限度額 | 設立からの期間に応じ権利行使価額を「二で除して計算した金額」又は「三で除して計算した金額」として限度額を判定 |
| 一株当たりの権利行使価額 | 契約締結時の一株当たりの価額に相当する金額以上であること |
| 譲渡 | 禁止されていること |
| 取得株式の管理 | 金融商品取引業者等への保管委託等、または発行会社による管理 |
| 課税のタイミング | 行使時は非課税、株式の譲渡時に課税 |
誰に与えられた新株予約権が対象になるのか
租税特別措置法29条の2は、対象となる者を次のように定めています。
「……法人の取締役、執行役若しくは使用人である個人(……「大口株主」という。)及び……「大口株主の特別関係者」という。)を除く。以下この項、次項及び第六項において「取締役等」という。)若しくは当該取締役等の相続人(……以下この項、次項及び第六項において「権利承継相続人」という。)又は……以下この条において「特定従事者」という。)が、当該付与決議に基づき当該株式会社と当該取締役等又は当該特定従事者との間に締結された契約により与えられた当該新株予約権」(租税特別措置法29条の2)
契約の当事者は取締役等又は特定従事者であり、権利承継相続人は相続して行使できる者です。大口株主とその特別関係者は除かれます。
権利行使価額の年間の限度額はどう判定するのか
租税特別措置法29条の2のただし書は、次のように定めています。
「……その年における当該行使に際し払い込むべき額(……)(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。……)と当該権利者がその年において既にした当該特定新株予約権及び他の特定新株予約権の行使に係る権利行使価額との合計額が、千二百万円を超えることとなる場合には、当該千二百万円を超えることとなる特定新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益については、この限りでない。」(租税特別措置法29条の2ただし書)
令和6年度税制改正が入ったのはここです。改正が入っているのは限度額の金額ではなく、権利行使価額を「二で除して計算した金額」又は「三で除して計算した金額」に置き換えて限度額と比較する計算方法です。二で除すか三で除すかを分ける「五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件」は、租税特別措置法施行規則11条の3に定めがあります。
「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する財務省令で定める要件は、次に掲げる要件とする。」
- 一 「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する株式会社が、……その設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であること。」
- 二 「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する株式会社が、次に掲げる会社のいずれかに該当すること。」
- イ 「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において……上場されている株式又は……登録されている株式を発行する会社以外の会社」
- ロ 「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において……上場されている株式を発行する会社(……)で、……上場された日(……)以後の期間が五年未満であるもの」
- ハ 「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において、店頭売買登録銘柄として登録されている株式を発行する会社(……)で、……登録された日以後の期間が五年未満であるもの」(租税特別措置法施行規則11条の3)
つまり、設立からの期間の要件と、非上場か上場・店頭売買登録から間もない会社であることの要件の両方を満たす必要があります。
「なお、この2又は3で除して計算した金額については、1回の権利行使における権利行使価額の合計額ごとに2又は3で除した上で、その除した金額に1円未満の端数が生じる場合には、その1円未満の端数を切り上げて算出することとされています」(国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』問6(参考))
権利行使の期間や価額にはどんな要件があるか
このほか、次の要件があります。
| 要件 | 条文の原文 |
|---|---|
| 期間 | 「当該新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日(……)までの間に行わなければならないこと。」 |
| 年間合計額 | 「当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えないこと。」 |
| 一株当たりの価額 | 「当該新株予約権の行使に係る一株当たりの権利行使価額は、……当該契約の締結の時における一株当たりの価額に相当する金額以上であること。」 |
| 譲渡禁止 | 「当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。」 |
| 株式交付の適合性 | 「当該新株予約権の行使に係る株式の交付が……会社法第二百三十八条第一項に定める事項に反しないで行われるものであること。」 |
| 国外転出の通知 | 「当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、……国外転出(……)をする場合には、……その旨を通知しなければならないこと。」 |
国外転出の通知は特定従事者の場合のみの要件です(前掲括弧書き参照)。一株当たりの価額の算定方法はストックオプションの権利行使価額と株価算定に譲ります。
行使により取得した株式はどう管理しなければならないか
取得した株式は、次のいずれかの方法で管理します。
「当該新株予約権の行使により取得をする株式につき、次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。」
- イ 「当該行使に係る株式会社と金融商品取引業者又は金融機関で政令で定めるもの(……)との間であらかじめ締結される……取決めに従い、……振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は……保管の委託若しくは管理等信託がされること。」
- ロ 「当該行使に係る株式会社と当該契約により当該新株予約権を与えられた者との間であらかじめ締結される……株式(譲渡制限株式に限る。ロにおいて同じ。)の……取決め(……当該株式会社が、……帳簿を備え、……その他の政令で定める要件が定められるものに限る。)に従い、……当該取得後直ちに、当該株式会社により管理がされること。」(租税特別措置法29条の2)
イは金融商品取引業者等による保管委託等、ロは発行会社自身による管理で、ロが令和6年度改正で加わりました。既存契約には次の経過措置があります。
「令和6年4月1日前に締結された契約については、令和6年12 月 31 日までに契約の変更をすることにより、上記の改正後の要件を適用することができる経過措置が設けられています。」(国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』問6(注))
行使時と譲渡時、課税されるのはどちらか
行使時の非課税は前掲「条文の定義」のとおりですが、その適用には次の手続があります。
「前項本文の規定は、権利者が特定新株予約権の行使をする際、次に掲げる要件(権利者が行使をする特定新株予約権が取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号及び第三号に掲げる要件)を満たす場合に限り、適用する。」(租税特別措置法29条の2)
国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』問6は次のように説明しています。
「行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。」(国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』問6)
実務で迷いが生じるところ
- 「設立の日以後の期間」の当てはめは、租税特別措置法施行規則11条の3の要件と、発行会社の設立年月日という一次資料を確認する必要があります。
- 改正前の契約が経過措置の期限までに要件を満たすよう変更されているかは、契約書の確認によります。
根拠条文
- 租税特別措置法第29条の2第1項本文(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「当該新株予約権(当該新株予約権に係る契約において、次に掲げる要件(当該新株予約権が当該取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号から第六号までに掲げる要件)が定められているものに限る。以下この条において「特定新株予約権」という。)を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権に係る株式の取得をした場合には、当該株式の取得に係る経済的利益については、所得税を課さない。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項本文(見出し同上)/引用した文言:「……法人の取締役、執行役若しくは使用人である個人(当該付与決議のあつた日において当該株式会社の政令で定める数の株式を有していた個人(以下この項及び次項において「大口株主」という。)及び……「大口株主の特別関係者」という。)を除く。以下この項、次項及び第六項において「取締役等」という。)若しくは当該取締役等の相続人(政令で定めるものに限る。以下この項、次項及び第六項において「権利承継相続人」という。)又は当該株式会社若しくは当該法人の取締役、執行役及び使用人である個人以外の個人(大口株主及び大口株主の特別関係者を除き、……以下この条において「特定従事者」という。)が、当該付与決議に基づき当該株式会社と当該取締役等又は当該特定従事者との間に締結された契約により与えられた当該新株予約権」
- 租税特別措置法第29条の2第1項ただし書(見出し同上)/引用した文言:「……その年における当該行使に際し払い込むべき額(……)(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。……)と当該権利者がその年において既にした当該特定新株予約権及び他の特定新株予約権の行使に係る権利行使価額との合計額が、千二百万円を超えることとなる場合には、当該千二百万円を超えることとなる特定新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益については、この限りでない。」
- 租税特別措置法第29条の2第2項(見出しなし)/引用した文言:「前項本文の規定は、権利者が特定新株予約権の行使をする際、次に掲げる要件(権利者が行使をする特定新株予約権が取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号及び第三号に掲げる要件)を満たす場合に限り、適用する。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第一号(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日(当該付与決議の日において当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には、当該付与決議の日後十五年を経過する日)までの間に行わなければならないこと。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第二号(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えないこと。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第三号(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権の行使に係る一株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における一株当たりの価額に相当する金額以上であること。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第四号(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第五号(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権の行使に係る株式の交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第二百三十八条第一項に定める事項に反しないで行われるものであること。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第六号柱書(見出しなし)/引用した文言:「当該新株予約権の行使により取得をする株式につき、次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第六号イ(見出しなし)/引用した文言:「当該行使に係る株式会社と金融商品取引業者又は金融機関で政令で定めるもの(以下この条において「金融商品取引業者等」という。)との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式の……取決め(……)に従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社を通じて、当該金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は当該金融商品取引業者等の営業所若しくは事務所(第四項において「営業所等」という。)に保管の委託若しくは管理等信託がされること。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第六号ロ(見出しなし)/引用した文言:「当該行使に係る株式会社と当該契約により当該新株予約権を与えられた者との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。ロにおいて同じ。)の……取決め(……当該株式会社が、新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式につき帳簿を備え、権利者の別に、当該株式の取得その他の異動状況に関する事項を記載し、又は記録することによつて、当該株式を当該株式と同一銘柄の他の株式と区分して管理をすることその他の政令で定める要件が定められるものに限る。)に従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社により管理がされること。」
- 租税特別措置法第29条の2第1項第七号(見出しなし)/引用した文言:「当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(……)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項柱書(特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する財務省令で定める要件は、次に掲げる要件とする。」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項第一号(見出し同上)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する株式会社が、同項ただし書の付与決議(同項に規定する付与決議をいう。以下この条において同じ。)の日においてその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であること。」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項第二号柱書(見出し同上)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書に規定する株式会社が、次に掲げる会社のいずれかに該当すること。」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項第二号イ(見出し同上)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所(……)に上場されている株式又は店頭売買登録銘柄(……)として登録されている株式を発行する会社以外の会社」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項第二号ロ(見出し同上)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において、金融商品取引所に上場されている株式を発行する会社(……)で、当該株式が金融商品取引法第百二十一条の規定により内閣総理大臣への届出がなされて最初にいずれかの金融商品取引所に上場された日(……)以後の期間が五年未満であるもの」
- 租税特別措置法施行規則第11条の3第1項第二号ハ(見出し同上)/引用した文言:「法第二十九条の二第一項ただし書の付与決議の日において、店頭売買登録銘柄として登録されている株式を発行する会社(第三項第一号ハ及び第十六項第八号において「店頭売買登録会社」という。)で、当該株式が最初に認可金融商品取引業協会の定める規則に従い店頭売買登録銘柄として登録された日以後の期間が五年未満であるもの」
根拠となる通達・Q&A・裁判例
- 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問6(参考)/引用した文言:「なお、この2又は3で除して計算した金額については、1回の権利行使における権利行使価額の合計額ごとに2又は3で除した上で、その除した金額に1円未満の端数が生じる場合には、その1円未満の端数を切り上げて算出することとされています」
- 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問6(注)/引用した文言:「令和6年4月1日前に締結された契約については、令和6年12 月 31 日までに契約の変更をすることにより、上記の改正後の要件を適用することができる経過措置が設けられています。」
- 国税庁『ストックオプションに対する課税(Q&A)』令和6年11月最終改訂 問6/引用した文言:「行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。」
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

