
現在、日本では、暗号資産ETFの国内解禁に向けた制度整備が議論されています。ただし、金融庁が2025年10月に公表した説明では、まだ日本国内での暗号資産ETFの組成・販売は認められていません。
一方、米国では、2024年1月10日に現物ビットコインETFの上場・取引が承認されました。約2年半前のことです。本稿では、主としてビットコインの現物を保有する米国の信託型ETFを取り上げます。先物型や会社型の商品まで、同じ扱いとするものではありません。
では、日本居住者が、その米国ETFを買い、米国の証券取引所で売却して利益を得たら、日本ではどのように課税されるのでしょうか。
結論から言うと、本稿では、対象商品の法的構造が後述の要件を満たす場合、売却益は上場株式等に係る申告分離課税の対象になると考えます。 鍵になるのは、保有する権利を日本の法律がどう分類するかです。
日本で未解禁でも、日本居住者が保有するケースはある
国内で組成・販売できないことと、日本居住者が海外でその商品を取得することは、同じ問題ではありません。
外国の証券会社を通じた取引では、業者が日本居住者を受け入れ、対象商品を取り扱うなどの条件を満たせば、日本居住者が米国暗号資産ETFを取得できる場合があります。実際、後述する税務照会も、日本居住者による米国ビットコインETFの売却を対象としています。
このとき、国内未解禁であることだけを理由に、購入者の取得行為まで直ちに違法になるとはいえません。確認すべきなのは、販売・勧誘を行う業者の登録、発行者の届出、取引経路などです。金融庁の監督指針も、外国証券業者が国内の者に勧誘せずに注文を受ける場合など、一定の例外を示しています。
ただし、「海外の業者なら誰でも、日本居住者に自由に販売できる」という意味ではありません。国内向けの勧誘の有無や、法令上の例外の要件を確認する必要があります。
海外の商品を購入できることと、日本向け販売の規制を満たすことが別問題なのは、株式などでも同様です。ただし、保険や現物暗号資産にはそれぞれ別の法律が適用されます。現物暗号資産の販売についても、資金決済法による業規制があります。法律上の「暗号資産交換業」には販売(売買)も含まれ、必要な登録を受けずに日本居住者向けに業として販売することは認められません。金融庁は、海外の事業者でも、日本居住者に対して暗号資産交換業を行う場合は日本の登録が必要と説明しています。とくに保険業法186条には外国保険に関する契約者側の規制もあるため、「購入側は常に問題ない」と一括りにはできません。
税法がないのではなく、どの規定に当てはめるかが分かりにくい
「日本でまだ売れない商品なのだから、日本の税法も売却を想定していないのではないか」と感じるかもしれません。
しかし、日本の税法には、外国の株式や投資信託、信託の受益権などを扱う包括的な規定があります。新しい商品でも、その構造を調べ、既存の規定に当てはめることになります。国内未解禁の商品だから税法が適用されない、ということではありません。
難しいのは、「米国暗号資産ETF」という商品名だけでは、日本のどの区分に当たるかが分からない点です。米国ではETFとして取引され、ビットコインの価格に連動していても、投資家が直接ビットコインを持っているとは限りません。持っているのは、信託に対する権利かもしれません。
本稿で確認した公表資料の範囲では、国税庁自身が、代表的な米国現物暗号資産ETFの構造と日本での分類を一体で示した文書回答は見つかっていません。国税庁の暗号資産に関する案内だけで、こうした外国商品まで判断することは困難です。
商品名を見て「暗号資産だから雑所得」と処理してよいのか。それとも株式や投資信託と同じ分離課税なのか。実務で判断に迷うのは、この当てはめです。
泉教授は、法人課税信託として分離課税になると説明している
暗号資産に関する税務的な研究をされていることで有名な東洋大学法学部の泉絢也教授は、米国ビットコインETFの課税を検討した論文で、過去の金ETFの事例も取り上げ、法人課税信託として申告分離課税に結び付ける考え方を示しています。
さらに、2024年12月5日に、国税局を経由して国税庁から分離課税になるとの口頭回答を受けたと報告しています。照会は、日本居住者がある米国ビットコインETFの持分を売却するケースです。その説明では、証券発行型の信託であることと除外要件を検討した上で、法人課税信託の受益権を株式・出資とみなす規定につなげています。
米国ビットコインETFの売却について、国税庁から口頭回答を受けたという泉絢也教授の報告。
埋め込み前に表示される文章は本稿による要約です。表示されない場合は、リンクから元ポストを読めます。
これは単なる学説にとどまらず、個別照会への回答を受けたという実務上の報告です。ただし、国税庁自身の公表文書ではなく、回答を受けた側による要旨の紹介です。対象銘柄や前提事実のすべては公表されていないため、他のETFにそのまま当てはめられるとは限りません。
また、これは口頭での回答であり、文書回答ではありません。したがって、租税実務では、こうした個別商品の税務上の取扱いが当局の公表文書で明示されていない中でも、既存の法令を解釈し、個別の事実関係に当てはめて申告業務を進めなければならないということになります。
金のETFにも、似た問題があった
暗号資産ETFの議論を理解する手掛かりが、金のETFです。
米国金ETF「GLD(SPDRゴールド・トラスト)」は、2012年の日本向け有価証券報告書では外国投資信託受益証券として開示されています。これは発行者の法定開示であり、国税庁の個別認定書ではありません。また、この2012年の資料だけで、それ以前も同じ分類だったとは判断できません。
2008年の照会事例
泉教授の論文の本文41~42頁と脚注51は、大阪国税局審理インフォメーション127号(課税第一情報第66号、2008年9月29日)を紹介しています。件名は「上場された金現物連動型ETF『SPDRゴールド・シェア』の特定口座の対象となる株式の適否について」です。
論文による紹介では、当時の金ETFについて、金が特定資産に掲げられていないことから外国投資信託に該当せず、日本の信託法に基づく特定受益証券発行信託にも該当しないため、法人課税信託として特定口座の対象になるという整理が示されています。
この国税局資料の原本は、本稿の公開ウェブ調査では取得できていません。論文にはTAINSで入手可能と記載されています。したがって、回答内容は論文に基づく紹介であり、当方が原本を独自確認したものではありません。また、日本で未届出・未販売のETFを海外で売買した事例と確認できたわけでもありません。
金融庁の当時の資料を独自に確認すると
一方、制度改正については、金融庁の一次資料を直接確認できます。2008年12月の改正概要は、特定資産の拡大として、投資信託の主な投資対象に金などの商品現物・先物を追加すると説明しています。
さらに、政令の新旧対照表96頁では、投信法施行令3条に「商品」を掲げる9号が新設されています。金融庁の施行説明によれば、改正の施行日は2008年12月12日です。紹介された国税局の回答は、その前の9月に出されています。
ここで区別したいのは、金が特定資産として明示的に追加されたという事実と、それ以前の外国信託をどう解釈するかという問題です。条文が追加されたことだけで、以前のあらゆる解釈に争いがなかったとまではいえません。しかし、紹介された国税局資料では、少なくとも非該当とする当局の判断が示されています。
金ETFの過去事例から学べるのは、同じような投資商品でも、日本の法令上の対象資産や信託の分類によって、課税に至る道筋が変わるということです。 現在の金ETFの分類を、そのまま暗号資産ETFに移すだけでは説明が足りません。
法人課税信託でも、信託本体に日本の法人税が発生するとは限らない
法人課税信託は、信託の所得を法人税の対象とする仕組みです。 法人税法4条1項・4条の2第1項により、受託者を納税義務者とし、各信託の資産・負債・収益・費用を、受託者自身の財産や他の信託とは分けて、それぞれ別の者として扱います。つまり、信託自体に法人格がなくても、信託の所得について法人税を課す制度です。国税庁の質疑応答事例でも、この課税の仕組みが説明されています。
ただし、法人税の対象となる仕組みであることと、外国の信託に実際に日本の法人税が発生することは、別の問題です。
国税庁の解説によれば、外国法に基づく証券発行型の信託も法人課税信託に該当し得ます。一方、外国法人として扱われる場合、日本の法人税が及ぶ所得の範囲は限定されます。日本で課税対象となる所得がなければ、日本の法人税は発生しません。
日本居住者が受益権を持つという理由だけで、外国ファンドの海外での運用益全体に日本の法人税が課されるわけではありません。
そして投資家側では、所得税法6条の3第4号によって、法人課税信託の受益権は原則として株式・出資とみなされます。米国の取引所に上場する持分なら、上場株式等の譲渡課税の規定に結び付きます。
信託本体の課税と、投資家の売却益への課税は、分けて考える必要があります。
外国投資信託に該当する可能性はどう考えるか
もう1つの検討経路が、外国投資信託です。
投信法2条24項は、外国法に基づいて設定された信託で、日本の投資信託に「類するもの」を外国投資信託としています。
日本の投資信託には主として特定資産に投資する要件がありますが、この要件を外国の信託にどこまで求めるかが論点です。金融庁の2019年の回答(No.22~26)は、外国投資信託への該当性について、法的性質や運用方針などを踏まえた個別判断を示しています。
そのため、外国投資信託に当たるという解釈も、商品の構造に即して検討する必要があります。ただし、過去の金ETFの当局判断や、特定資産の拡大と外国投資信託の該当性を関連付けた金融庁の説明は、投資対象の要件を重視する材料です。現物暗号資産を主に保有する信託について、外国投資信託説と法人課税信託説を同じ強さで支持できるとまでは考えていません。
仮に外国投資信託に該当するなら、集団投資信託として法人課税信託から除外されます。それでも、その受益権は譲渡課税上の「株式等」に含まれます。米国市場に上場する受益権の売却益については、こちらの経路でも申告分離課税へつながります。
結論:2つの分類は、売却益の分離課税という結論につながる
ここまでの検討をまとめると、次のようになります。
| 日本税法上の分類 | 売却益が分離課税になる道筋 | 日本居住者の売却益 |
|---|---|---|
| 法人課税信託 | 受益権を株式・出資とみなし、米国市場への上場を確認する | 原則20.315%の申告分離課税 |
| 外国投資信託 | 投資信託の受益権として株式等に含め、米国市場への上場を確認する | 原則20.315%の申告分離課税 |
税率は2026年のものです。通常の個人投資による、ETF持分の市場での売却を前提としています。分配・償還・現物との交換や、別の法的構造の商品まで同じ結論になるとは限りません。
以上から、本稿で扱ったような米国の信託型現物暗号資産ETFについて、これらの要件を満たす持分を日本居住者が売却した場合、その利益は申告分離課税の対象になると考えます。 「暗号資産に連動する商品」というだけで、現物暗号資産の売却と同じ雑所得にするのは適切ではありません。
ただし、これは「ETFなら必ずこの2分類のどちらかになる」という証明ではありません。個別商品の信託契約、証券発行の定め、除外要件などを確認することが、結論の前提です。
また、海外の証券口座には日本の特定口座制度が通常ありません。特定口座は計算・申告を簡便にする制度であり、分離課税そのものの要件ではありません。海外口座で売却した場合も、円換算した取得費・売却代金・手数料をもとに損益を計算し、原則として日本で申告します。
法令改正の適用時期にも注意が必要です。2026年度税制改正の解説には、暗号資産ETFを念頭に置いた公募投資信託等の取扱いが登場しますが、ここでの法人投資家に関する償還金等の源泉徴収の改正をもって、既存の外国ETFの分類や個人の売却益が一律に確定したとは読めません。
国税庁と金融庁には、代表的な外国商品について、前提となる商品構造、適用条文、分類の理由、改正前後の取扱いを文書で公表してほしいと考えます。個別の口頭回答の紹介だけでなく、投資家と税理士が共通の資料に基づいて判断できる状態を整えることが必要です。
現物は総合課税、ETFは分離課税。それは公平なのか
ここで、課税の公平性という問題が残ります。暗号資産現物に総合課税が適用される一方、その価格に連動する米国ETFの譲渡益が分離課税になるなら、同じビットコインの値上がりから得た利益でも、投資する形によって税負担が変わるからです。
国税庁の説明では、暗号資産の売却益は、事業所得等に該当する場合を除き、原則として雑所得です。ここでは、暗号資産現物の分離課税に関する改正が適用される前の取引を比較しています。総合課税では他の所得と合算して累進税率が適用されるため、所得の高い人ほど、原則20.315%の申告分離課税との差が大きくなり得ます。
経済的に似た投資から得た利益なのに、現物を直接持つか、ETFを通じて持つかによって税負担が変わる。この差は、課税の公平性や、税制が投資方法の選択をゆがめないという「中立性」の観点から、検討すべき問題です。
ただし、この違いは暗号資産だけに生じるものではありません。金の現物と金ETFにも、すでに同じ構造の違いがあります。
| 投資する形 | 個人の通常の投資による売却益の扱い |
|---|---|
| 金地金を直接保有 | 原則として譲渡所得の総合課税 |
| 国内の金ETF(純金上場信託など)を保有 | 原則として上場株式等の申告分離課税、税率20.315% |
国税庁によれば、金地金の売却益は原則として総合課税です。一方、三菱UFJ信託銀行の金ETFの説明では、ETFの売却益には上場株式等と同じ20.315%の税率が適用されます。表の税率は2026年の課税口座での市場売却を前提としています。
もっとも、金現物の譲渡所得には、他の総合課税の譲渡益と合わせて年間50万円の特別控除があり、保有期間が5年を超える場合は、控除後の長期譲渡所得の2分の1が総合課税の対象になります。したがって、ETFのほうが必ず税負担が軽いわけではありません。また、この金現物の控除や長期保有の扱いが、暗号資産の雑所得にも適用されるわけではありません。
金に先例があることは、税負担の差が公平だという証明にはなりません。しかし、現物とETFの税制が異なること自体は、既存の制度にも見られます。「現物との税負担の差をどう是正するか」という政策の問題と、「現在の法律ではETFの譲渡益をどう課税するか」という解釈の問題は、分けて考える必要があります。 公平性に疑問があるからという理由だけで、法令上は分離課税となる持分を総合課税にすることはできません。
今後の制度整備では、現物とETFを併せて検討し、投資する形による税負担の差に合理的な説明がつく制度にすることが望まれます。
比較:米国・シンガポールの居住者が買ったらどうなるか
最後に、同じ米国の暗号資産ETFを、異なる国の居住者が売買する場合を比較してみましょう。ここでは、現物ビットコインを保有する米国の信託型商品IBITを例に、個人が通常の課税口座で自己資金を投資する場合を考えます。先物型や法人による投資、年金口座は含めません。また、日本以外の例では日本の税務上の非居住者であることを前提とします。
| 投資家の税務上の居住地 | 個人の売却益の基本的な扱い | 特に確認したいこと |
|---|---|---|
| 日本 | 本文の2つの分類のいずれかに該当する上場受益権なら、原則20.315%の申告分離課税 | 照会対象がIBITだとは確認できない。個別商品の分類と取引時点の法令を確認する |
| 米国 | 資本資産としての投資なら、原則キャピタルゲイン課税 | 保有期間1年以下は短期、1年超は長期。所得水準、州税などでも負担が変わる |
| シンガポール | 個人的な投資によるキャピタルゲインなら、原則非課税 | 事業所得に当たらないか、米国側の課税が生じないかも確認する |
米国:信託を通じてビットコインを持つものとして課税
IBITの目論見書は、米国連邦所得税上、grantor trustとして扱われることを前提に、投資家が信託内のビットコインを持分に応じて保有するものとして説明しています。通常の法人のように信託段階で法人税を重ねる仕組みではありません。ただし、この分類は目論見書上も前提付きの説明です。
売却益について、短期の純キャピタルゲインは通常所得の累進税率、長期は一般に所得水準に応じた0%・15%・20%の連邦税率で課税されます。一定の高所得者には3.8%の純投資所得税が加わり、州・地方の課税も別途確認が必要です。したがって「米国なら一律20%」ではありません。
なお、投資家がETFを売却しなくても、信託が費用支払いのためにビットコインを処分すれば、投資家に損益が帰属することがあります。売買明細だけでなく、発行体の税務資料も確認する必要があります。
シンガポール:個人の投資益は原則非課税、ただし米国側も確認
シンガポール税務当局IRASは、個人による株式その他の金融商品の売買益は一般に個人的な投資から生じるものとして、課税されないと説明しています。米国ETFへの投資も、キャピタルゲインに該当する通常の個人投資であれば、この一般原則に沿って検討することになります。これはIBITについての個別照会回答ではありません。
一方、事業として取引を行い、利益が事業所得に該当する場合は別です。海外の市場を使っているというだけで、必ず非課税になるわけではありません。
さらに、米国ETFなので米国側の扱いも確認します。ここでは米国市民・税務上の米国居住者ではなく、米国事業との実質的関連所得や、年間183日以上の米国滞在に伴う例外などがない場合を想定します。このような通常の非居住者による投資では、売却益に米国連邦所得税がかからないのが原則ですが、米国源泉の分配所得などは別の扱いです。「売却益」と「配当・分配」を混同しないことが大切です。
この比較から分かるのは、同じ商品でも、投資家の居住地と、その国が商品をどう分類するかによって課税が変わるということです。米国で信託を通じた保有として扱われることは、日本でも同じ分類になることを意味しません。だからこそ、日本での分類についても、結論に至る理由を明らかにする必要があります。
本稿は2026年9月11日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

