税制改正大綱レビュー

平成17年度税制改正大綱 ― 定率減税の縮減と住宅・金融の見直し

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成17年度税制改正の大綱は、平成16年12月19日に財務省が公表した政府の大綱です。原文の冒頭には、表題のすぐ下に「16.12.19 財 務 省」とだけ記されています。

大綱は、その年度に行う税制改正の中身を項目ごとに書き並べた文書です。平成17年度の大綱は七つの章に分かれ、それぞれの章で「次のように引き下げる」「次の措置を講ずる」といった形で改正の内容が示されています。

冒頭には、この年の改正が何を狙ったものかが次のように書かれています。

現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、平成18年度税制改正において行うべき国・地方を通ずる個人所得課税のあり方の見直しを展望しつつ定率減税を縮減するとともに、住宅税制、金融・証券税制、国際課税、中小企業関係税制等について適切な措置を講ずることとし、次のとおり税制改正を行うものとする。

定率減税の縮減が先頭に置かれ、住宅税制、金融・証券税制、国際課税、中小企業関係税制が続く構成です。各年度の大綱を同じ形式で読むシリーズのうち、直近の年度は令和8年度税制改正大綱のポイントにまとめています。

大綱の柱

その章で決まったこと
一 個人所得課税 定率減税の額を所得税額の20%相当額から10%相当額へ引き下げます。源泉徴収で差し引く額も見直します。
二 住宅税制 耐震性に関する一定の基準に適合する既存住宅を、住宅ローン控除などの対象に加えます。
三 金融・証券税制 自分で保管している上場株式等を特定口座へ受け入れられるようにします。株式が価値を失った場合の損失も譲渡による損失として扱います。
四 国際課税 外国子会社合算税制や移転価格税制の対象範囲を見直します。国内の不動産を多く持つ法人の株式の譲渡による所得も課税します。
五 中小企業関係税制 中小企業向けの新しい法律の制定に合わせて、設備投資の優遇制度などの対象を組み替えます。
六 地方分権の推進 所得税から個人住民税への本格的な税源移譲は平成18年度税制改正で行うこととし、平成17年度は所得譲与税による暫定的な移譲を行います。
七 その他 認定NPO法人の要件の見直しと寄付金控除の限度額の引上げ、教育訓練費が増加した場合の特別税額控除制度の創設などを行います。

定率減税が半分に縮減される

この年の改正で最も大きいのは、所得税の定率減税の縮減です。定率減税は算出した所得税額から一定の割合を差し引く仕組みで、大綱は現行と改正案を次のように並べています。

現行 改正案
所得税額の20%相当額 所得税額の10%相当額
20%相当額が25万円を超える場合は、25万円 10%相当額が12万5千円を超える場合は、12万5千円

差し引く割合が半分になり、上限も半分になります。大綱は、この改正を平成18年分以後の所得税に適用すると記しています。

これに伴い、給与等に係る税額表と、公的年金等に係る源泉徴収すべき所得税の額から控除する定率減税の額も見直します。こちらは平成18年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用され、毎月差し引かれる源泉所得税の額がその時点から変わります。

住宅税制は耐震性を軸に対象を広げる

住宅税制の章では、四つの制度について、対象となる既存住宅の範囲を広げます。加わるのは「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の既存住宅」です。

  • 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、いわゆる住宅ローン控除の適用対象となる既存住宅の範囲に加えます。
  • 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例では、買換資産の範囲に同じ基準に適合する一定の耐火建築物を加えます。
  • 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用対象となる既存住宅の範囲に加えます。
  • 住宅用家屋の保存登記や移転登記、住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の軽減措置の適用対象に加えた上で、その適用期限を2年延長します。

適用の時期は制度ごとに定められています。住宅ローン控除と登録免許税の軽減、相続時精算課税の特例は、平成17年4月1日以後に取得する既存住宅が対象です。居住用財産の買換えの特例は、平成17年1月1日以後に譲渡資産を譲渡し、同年4月1日以後に買換資産を取得する場合が対象です。

特定口座の使い勝手を広げる金融・証券税制

手元で保管している株式を特定口座に入れられる

平成17年4月1日から平成21年5月31日までの間に限り、一定の要件の下で、自分が保管している上場株式等を、実際の取得日と取得価額のまま特定口座に受け入れられるようにします。証券業者に貸し付けた株式が返ってきた場合も、同じ銘柄であれば、貸付けをした際に管理されていた取得価額で受け入れられます。特定口座の取扱者の範囲には日本郵政公社を加えます。

価値を失った株式の損失を譲渡による損失として扱う

上場株式等に該当しないこととなった内国法人の株式を特定口座から移して保管する「特定管理口座」という枠組みを設けます。そこで引き続き保管される株式について、発行した株式会社の清算結了等の事実が発生したときは、その株式を譲渡したものとみなし、一定の方法で計算された金額を譲渡により生じた損失とみなして、株式等に係る譲渡所得等の課税の特例を適用できるようにします。

そのほか、先物取引に係る雑所得等の課税の特例等の適用対象に、平成17年7月1日以後に行う取引所金融先物取引の差金等決済による事業所得及び雑所得を加えます。外国通貨で表示された預貯金の一定の差益も、金融類似商品に係る分離課税等の対象に加わります。

国際課税は外国子会社と組合に及ぶ

外国子会社合算税制、大綱の言葉では内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例について、いくつもの見直しを行います。所在地国基準又は非関連者基準を満たさない特定外国子会社等が、事業基準、実体基準及び管理支配基準を満たす場合の適用対象留保金額は、未処分所得の金額から一定の人件費の100分の10に相当する金額を控除した金額とします。配当等を受けた場合に損金算入が認められる課税済留保金額の範囲は事業年度開始の日前10年以内に、未処分所得の計算で控除する欠損金の繰越期間は7年に、それぞれ現行の5年から延びます。

非居住者や外国法人への課税の範囲も広がります。国内にある不動産が総資産の50%以上である法人が発行する一定の株式等を譲渡した場合の所得は、申告納税の対象となる国内源泉所得に加わります。

組合を通じた投資については、民法組合等の組合員である非居住者や外国法人が受けるべき利益の分配に、20%の税率で源泉徴収を行います。国内に組合事業以外の事業に係る恒久的施設を有する外国組合員は、一定の要件の下でこの源泉徴収の対象外です。移転価格税制では、国外関連者の範囲に、実質支配関係と持株関係の連鎖でつながる外国法人などを加えます。

中小企業関係税制は新しい法律に合わせて組み替える

中小企業関係税制は、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(仮称)」の制定を前提に組み替えます。大綱は、同法の制定により、中小企業経営革新支援法や新事業創出促進法などに係る措置を廃止すると記しています。

中小企業等基盤強化税制では、新しい法律の経営革新計画又は異分野連携新事業分野開拓計画(仮称)に従って中小企業者が取得する機械装置と、一定の中小企業者が設立5年以内に取得する機械装置を、適用対象に加えます。これらの措置について、取得に係る税額控除の資本金基準は適用されません。

中小企業者等に対する同族会社の特別税率の不適用制度についても、対象となる事業年度を加えます。新しい法律の中小企業者に該当する同族会社の設立10年以内の各事業年度と、同法の経営革新計画の承認を受けた中小企業者が経営革新のための事業を実施している各事業年度が対象です。エンジェル税制、すなわち特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例は、適用期限を2年延長します。

所得税から個人住民税への税源移譲が動き出す

地方分権の推進の章は、国と地方の財源配分を扱っています。大綱は税源移譲について次のように書いています。

三位一体改革の一環として、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施する。

本格的な移譲は平成18年度税制改正で行うこととし、平成17年度は暫定的な措置がとられます。その中身と配分の基準は次のとおりです。

平成17年度においては、暫定的措置として、所得譲与税により1兆1,159億円の税源移譲を行うこととし、国庫補助負担金の改革内容等を踏まえ、都道府県へ5分の3、市区町村へ5分の2をそれぞれ譲与する。各地方団体への譲与基準は、都道府県分・市区町村分ともに、人口とする。

所得譲与税は国から地方へ財源を移す仕組みで、納税者が手続をする項目ではありません。ここで名前の挙がっている平成18年度の大綱は、平成18年度税制改正大綱の記事で扱っています。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 給与や公的年金を受け取っている方は、「一 個人所得課税」の定率減税の縮減をご覧ください。平成18年分以後の所得税と、同年1月1日以後に支払われる給与等の源泉徴収に関わります。
  • 中古住宅の購入や住宅ローン控除の利用を考えている方は、「二 住宅税制」をご覧ください。
  • 特定口座を使っている方、手元で株券を保管している方は、「三 金融・証券税制」の特定口座への受入れの項目をご覧ください。受入れができる期間は区切られています。
  • 保有する株式が上場株式等に該当しないこととなった方は、同じ章の特定管理口座の項目をご覧ください。
  • 海外に子会社を持つ会社や、非居住者・外国法人と取引のある会社は、「四 国際課税」をご覧ください。
  • 設備投資を予定している中小企業や設立から10年以内の同族会社は、「五 中小企業関係税制」をご覧ください。
  • 従業員の教育訓練費を増やしている法人や、認定NPO法人へ寄付をしている方は、「七 その他」をご覧ください。教育訓練費が増加した場合の特別税額控除制度の創設と、寄付金控除の控除対象限度額の引上げが含まれます。

出所

  • 財務省「平成17年度税制改正の大綱」(平成16年12月19日)

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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