タックスヘイブン対策税制で最も重い扱いを受けるのが、特定外国関係会社です。俗に「ペーパーカンパニー」と呼ばれますが、条文はもっと広く、4つの類型を掲げています。
まず、免除のラインが違う
特定外国関係会社が重いのは、ここです。租税特別措置法第66条の6第7項。
一 特定外国関係会社 特定外国関係会社の各事業年度の租税負担割合(……)が百分の二十七以上である場合
二 対象外国関係会社 対象外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が百分の二十以上である場合
| 適用免除となる租税負担割合 | |
|---|---|
| specified foreign subsidiary company | 27%以上 |
| applicable foreign affiliated company | 20%以上 |
27%です。先進国の法人税率でも、これを下回る国は珍しくありません。「タックスヘイブンではないから大丈夫」が通用しないのが、特定外国関係会社の怖いところです。
4つの類型(措法66条の6第2項第2号)
イ ── ペーパーカンパニー
次のいずれにも該当しない外国関係会社
「いずれにも該当しない」です。(1)から(5)までのうち1つでも満たせば、イには当たりません。
| 内容 | 通称 | |
|---|---|---|
| (1) | その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している | 実体基準 |
| (2) | 本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行つている | 管理支配基準 |
| (3) | 外国子会社(本店所在地国を同じくし、25%以上保有等の政令要件を満たす外国法人)の株式等の保有を主たる事業とし、収入金額に占める配当等の割合が著しく高いこと等の政令要件に該当する | 持株会社の特例 |
| (4) | 特定子会社の株式等の保有を主たる事業とし、本店所在地国を同じくする管理支配会社によって事業の管理・支配・運営が行われていること等の政令要件に該当する | 特定子会社株式保有の特例 |
| (5) | 本店所在地国にある不動産の保有、天然資源の探鉱・開発・採取、社会資本の整備に関する事業の遂行上欠くことのできない機能を果たし、管理支配会社によって事業の管理・支配・運営が行われていること等 | 不動産・資源の特例 |
(1)と(2)が原則で、(3)から(5)は個別の受け皿です。(1)(2)にはそれぞれ「これらを有している/自ら行つている外国関係会社と同様の状況にあるものとして政令で定める外国関係会社を含む」という括弧書きがあり、政令が範囲を広げています。
ロ ── キャッシュボックス
その総資産額に対する第八項第一号から第七号まで及び第八号から第十号までに掲げる金額に相当する金額の合計額の割合……が百分の三十を超える外国関係会社(総資産額に対する有価証券、貸付金その他政令で定める資産の額の合計額として政令で定める金額の割合が百分の五十を超える外国関係会社に限る。)
2つの数字が「かつ」でつながっています。
1. 総資産に対する受動的所得の割合が30%超
2. かつ、総資産に対する有価証券・貸付金等の割合が50%超
片方だけでは当たりません。括弧書きの「限る」を落とすと、判定を誤ります。
そして、分子は「8項の全部」ではありません。条文が引くのは「第八項第一号から第七号まで及び第八号から第十号まで」です。8項には7号の2and11号もありますが、この2つは分子に入りません。「8項各号」と一括りにすると、条文がわざわざ分けて書いた区別を潰します。
また括弧書きには、外国金融子会社等に該当することとなる外国関係会社について、分子を10項第1号の金額と10項第2号〜第4号の合計額のうちいずれか多い金額に差し替える別基準が置かれています。この類型には30%の当てはめ方が違います。
ハ ── 非関連者との取引が乏しい保険会社
(1)非関連者等収入保険料の割合が10%未満であり、かつ(2)非関連者等支払再保険料合計額の関連者等収入保険料に対する割合が50%未満であること。両方に該当する場合です。
ニ ── ブラックリスト国
租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社
指定されれば、事業の実態を問わず特定外国関係会社です。指定があったときは財務大臣が告示します(同条18項)。
立証責任が納税者側に寄っている
措法66条の6第3項。
……当該外国関係会社が同号イ(1)から(5)までに該当することを明らかにする書類その他の資料の提示又は提出を求めることができる。この場合において、当該書類その他の資料の提示又は提出がないときは、……当該外国関係会社は同号イ(1)から(5)までに該当しないものと推定する。
資料を出さなければ、ペーパーカンパニーと推定されます。「実体はあった」と後から言っても、その時点では推定が働きます。オフィスの賃貸借契約、現地役員の職務実態、取締役会の開催記録。平時に揃えておく類の資料です。
なお、同じ構造の推定規定が4項(対象外国関係会社に係る経済活動基準)、5項(清算部分対象外国関係会社等)、6項(特例清算事業年度)にも置かれています。
4項は効果の向きに注意してください。推定されるのは「経済活動基準(2項3号イ〜ハ)に該当しない」ことです。そして2項3号は「次に掲げる要件のいずれかに該当しない外国関係会社」を対象外国関係会社と定義し、2項6号は「イからハまでに掲げる要件の全てに該当する外国関係会社」を部分対象外国関係会社と定義しています。
したがって、資料を出さないと──
- 対象外国関係会社に該当することになります(3号)
- 部分対象外国関係会社には該当しないことになります(6号)
条文が「同項(同号又は第六号に係る部分に限る。)の規定の適用については」と書いているのはこの意味です。部分合算で済むはずが、会社単位の合算に落ちます。
申告書への添付義務
措法66条の6第14項第3号は、租税負担割合が27%未満である特定外国関係会社について、貸借対照表・損益計算書その他の財務省令で定める書類を確定申告書に添付しなければならないとしています。
添付義務のラインも27%です。同項1号(部分対象外国関係会社)・2号(対象外国関係会社)は20%未満で、ここでも数字が分かれます。
1号には括弧書きの除外があります。12項2号(2,000万円以下)又は3号(5%以下)に該当する事実がある部分対象外国関係会社は「添付不要部分対象外国関係会社」として添付義務から外れます。ただし外れて終わりではなく、15項が保存義務を課しています。
Where people tend to get lost in practical work
- 現地に事務所を借りているだけで実体基準を満たすか。「その主たる事業を行うに必要と認められる」固定施設かを見ます
- 取締役会を日本でやっています。管理支配基準(2)は「本店所在地国において……自ら行つている」ことを求めます
- 持株会社なら(3)で助かるか。25%以上の保有等の政令要件と、配当収入割合の要件があります
- キャッシュボックスの30%と50%はどちらも必要か。必要です。括弧書きが「限る」で絞っています
- 税率が25%の国だから安心か。特定外国関係会社なら27%未満です
- 書類は何を残せばよいか。3項の「該当することを明らかにする書類その他の資料」です
海外子会社の実体は、事後に作れません。特定外国関係会社に当たると、所得の全部が合算対象になり、しかも免除のラインが27%と高い。海外にホールディングス、不動産保有会社、資産管理会社をお持ちの会社は、実体基準・管理支配基準の資料が揃っているかの点検からご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第2項第2号(特定外国関係会社)イ・ロ・ハ・ニ
- 租税特別措置法第66条の6第3項(イ(1)〜(5)に係る推定)、第4項(第3号イ〜ハに係る推定)
- 租税特別措置法第66条の6第7項第1号・第2号(適用免除)
- 租税特別措置法第66条の6第14項(確定申告書への添付)、第15項(保存義務)、第18項(財務大臣の告示)
- 租税特別措置法第66条の6第8項・第10項(部分合算の対象となる特定所得の金額)
- 租税特別措置法施行令第39条の14の3(特定外国関係会社及び対象外国関係会社の範囲)
- 租税特別措置法施行令第39条の17の2(外国関係会社に係る租税負担割合の計算)
施行令第39条の14の3が定める各要件の細目(保険業に関する特例を含む)は本稿では扱っていません。個別の判定には事業の実態と資料の確認が必要です。
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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