タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の話は、必ずこの言葉から始まります。外国関係会社。ここに入らない会社は、その先の議論に進みません。
条文
租税特別措置法第66条の6第2項第1号。3つの類型があります。
外国関係会社 次に掲げる外国法人をいう。
イ 居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(……)及びロに掲げる外国法人(イにおいて「居住者等株主等」という。)の外国法人に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の五十を超える場合における当該外国法人
ロ 居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人
ハ (第六号・第七号を読み替えて適用した場合に外国金融機関に該当することとなる外国法人で、外国金融機関に準ずるものとして政令で定める部分対象外国関係会社との間に、その部分対象外国関係会社が経営管理を行つている関係その他の特殊の関係があるものとして政令で定めるもの)
イが本体です。ロとハは別ルートです。ハは要件が二段になっており、外国金融機関に当たるだけでは足りません。
イ ── 50%超を、3つの物差しで測る
イの(1)(2)(3)は次のとおりです。いずれかが50%を超えれば足ります。
| 物差し | 中身 | |
|---|---|---|
| (1) | 株式等 | 発行済株式等(自己が有する自己の株式等を除く)の総数・総額に占める割合 |
| (2) | 議決権 | 議決権(剰余金の配当等に関する決議に係るものに限る)の総数に占める割合 |
| (3) | 請求権 | 株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額が、その総額に占める割合 |
持株比率だけを見ると足をすくわれます。議決権と配当請求権も物差しです。無議決権株式や種類株式を使った設計では、(1)と(2)(3)の答えがずれます。
ただし(2)の議決権は限定されています。すべての議決権ではなく、剰余金の配当等に関する決議に係るものです(措法66条の6第1項1号ロの括弧書きが、2項1号イ(2)にも及びます)。
なお(1)〜(3)の各条文には「居住者等株主等の外国法人(ロに掲げる外国法人を除く。)に係る」という括弧書きがあります。ロに当たる外国法人は、そもそもロで外国関係会社になるので、イの判定対象から外れます。
そして、数えるのは「1人の持分」ではありません。条文は居住者等株主等という束を作っています。中身は4種類です。
1. 居住者
2. 内国法人
3. 特殊関係非居住者(居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある非居住者)
4. ロに掲げる外国法人(実質支配関係がある外国法人)
この4種類の合計で50%超かを見ます。日本の親会社が40%しか持っていなくても、社長個人と親族が合わせて15%持っていれば、合計55%です。「うちは過半数を握っていないから関係ない」は、まず疑ってください。
50%超の判定では、間接保有は掛け算ではない
ここが最も誤解されるところです。租税特別措置法施行令第39条の14の2第2項。
一 判定対象外国法人の株主等である外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)の発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額の株式等が居住者等株主等によつて保有されている場合 当該株主等である外国法人の有する当該判定対象外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等のうちに占める割合
「50%超で保有されている外国法人が持っている割合を、そのまま使う」という書き方です。掛け算をしません。
日本法人がA社を60%保有し、A社がB社を70%保有しています。このとき、B社に係る間接保有割合は 60%×70%=42% ではなく、70%です。A社が「50%超」の条件を満たしているので、A社の持分がそのまま乗ってきます。
2号は連鎖が長い場合です。間に出資関連外国法人が介在していても、その環の全部が「50%超」でつながっていれば、末端の株主である外国法人の持分割合をそのまま使います。環のどこか1つが50%以下なら、そこで切れます。
なお(2)議決権と(3)請求権についても、同条3項・4項が2項を読み替えて準用しています。3つの物差しそれぞれで、この計算を行います。
ただし、10%以上の判定と合算額の計算では、掛け算に戻る
ここを混ぜると答えが出ません。同じ「間接保有」でも、条文が違えば計算方法が違います。
租税特別措置法施行令第39条の14第3項第1号(10%以上の判定)。
当該内国法人等の当該他の外国法人に係る持株割合(……当該発行法人と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零とする。……)に当該他の外国法人の当該外国関係会社に係る持株割合を乗じて計算した割合
同項2号は連鎖の場合で、「順次乗じて計算した割合」です。合算額の計算に使う請求権等勘案間接保有株式等(同条2項3号)も、同じく「乗じて計算した割合」「順次乗じて計算した割合」と定めています。
| 場面 | 間接保有の計算 | 条文 |
|---|---|---|
| 50%超(外国関係会社の判定) | 掛け算しない(50%超の環でつながっていれば、末端の持分をそのまま使う) | 措令39条の14の2第2項 |
| 10%以上(合算の名宛人の判定) | 掛け算する(持株割合を順次乗じる) | 措令39条の14第3項(議決権は4項、請求権は5項が3項を準用) |
| 合算額(請求権等勘案合算割合) | 掛け算する | 措令39条の14第2項3号 |
2つの計算方法は別物です。片方の感覚でもう片方を計算すると、判定を誤ります。
ロ ── 持分ゼロでも外国関係会社になる
実質支配関係があれば、株式を1株も持っていなくても外国関係会社です。ロに当たる外国法人を、政令は「被支配外国法人」と呼んでいます(措令39条の14第2項第1号イ)。
実質支配関係の中身は措法66条の6第2項第5号と措令39条の16が定めます。詳しくは「実質支配関係とは」で扱います。
「外国関係会社」は入口にすぎない
外国関係会社に当たっただけでは、合算されません。制度は二段構えです。
| 段 | 何を判定するか | 条文 |
|---|---|---|
| 第1段 | その会社が外国関係会社か(50%超・実質支配・ハ) | 2項1号 |
| 第2段 | その外国関係会社がspecified foreign subsidiary company(2項2号)/applicable foreign affiliated company(2項3号)/partially targeted foreign affiliated company(2項6号)のどれか | 2項2号・3号・6号 |
| 別枠 | その内国法人が合算の名宛人か | 1項1号〜4号 |
第2段を「特定」と「対象」の2つで閉じると、部分合算を丸ごと落とします。経済活動基準(3号イ〜ハ)を全部満たして対象外国関係会社から外れても、partially targeted foreign affiliated companyとして受動的所得の部分合算(8項・10項)が残ります。
名宛人は4種類ある
措法66条の6第1項は、合算される内国法人を4つの号で定めています。
一 内国法人の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該内国法人
二 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人
三 外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限る。)の他の外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該内国法人(……)
四 外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である一の同族株主グループ(……)に属する内国法人(……いずれかが零を超えるものに限る……)
2号と4号が効きます。
- 2号は、実質支配関係があれば持分と無関係に名宛人です。10%以上を計算する必要すらありません
- 4号は、同族株主グループ合計で10%以上なら、そのグループに属する内国法人が名宛人です。単独で10%未満でも合算されます。なお条文の限定は「外国関係会社に係る割合又は他の外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限る。)の当該外国関係会社に係る割合のいずれかが零を超えるものに限る」で、自分の直接の持分が零でも、実質支配している他の外国関係会社経由の割合が零を超えれば名宛人です
「うちは5%しかない」で安心できない構造です。
また1項1号イには、見落としやすい括弧書きがあります。
その有する外国関係会社の株式等の数又は金額(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)
同じ括弧書きがロ(議決権)・ハ(請求権)にもあります。そして主語に注意してください。条文は「当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合」です。自分との間に、ではありません。その外国関係会社が誰か(居住者・内国法人)に実質支配されていれば、株主である内国法人全員について3つの割合を「零」と数えます。そのうえで2号により、実質支配関係のある内国法人に合算が寄せられます。
Where people tend to get lost in practical work
- 社長個人と法人を合わせると過半数になります。特殊関係非居住者を含めた居住者等株主等の合計で見ます
- 無議決権株式で持分を落としています。(2)議決権・(3)請求権で判定されます。ただし議決権は配当決議に係るものに限られます
- 孫会社・ひ孫会社はどこまで見るのか。50%超の判定では、環が50%超でつながっている限り続きます
- 50%ちょうどならどうなるか。イは「超える」です。条文の文言のとおりです
- 単独では5%しか持っていません。1項4号の同族株主グループを確認してください
- 海外に資産管理会社を作った個人は。個人には措法40条の4という別の条文があり、本稿の66条の6は内国法人の規定です
外国に子会社や資産管理会社がある会社は、まず持分の一覧を作るところからです。株式・議決権・請求権の3つを並べ、居住者等株主等の範囲まで書き出す。ここで50%超に触れていれば、その先の特定外国関係会社・対象外国関係会社・部分対象外国関係会社の判定に進みます。海外法人をお持ちの方は、資本関係図の整理からご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第1項第1号〜第4号(合算の名宛人)、第2項第1号(外国関係会社)、第2項第2号・第3号・第6号、第2項第5号(実質支配関係)、第8項・第10項(部分合算)
- 租税特別措置法施行令第39条の14の2(外国関係会社の範囲)第1項〜第5項
- 租税特別措置法施行令第39条の14(課税対象金額の計算等)第2項第1号イ(被支配外国法人)・第2項第3号・第3項
- 租税特別措置法施行令第39条の16(実質支配関係の判定)
個人に係る外国子会社合算税制(措法40条の4)、ハの外国金融機関に係る特例、保険業に関する特例は本稿では扱っていません。個別の判定には資本関係と契約内容の確認が必要です。
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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