利益が大きく出た会社に、航空機や船舶などを使ったリース事業への出資が提案されることがあります。「出資額の一定割合を早い時期に損金にできる」という説明を受けると、法人税を抑える方法として魅力的に映るかもしれません。
しかし、出資した金額が、そのまま会社の経費になるわけではありません。なぜ損失が発生し、それを出資者の所得計算に取り込めるのか。そして、後に発生する利益にはどう課税されるのか。入口と出口を一緒に見る必要があります。
借入れを組み合わせて、大きな資産を取得する
レバレッジドリースの「レバレッジ」とは、借入れを利用することです。リース事業を行う側が、出資金に借入金を組み合わせて航空機などを取得し、利用者へ貸し付けます。
例えば、出資金3億円と借入金7億円で10億円の資産を取得するとします。賃貸人側で減価償却を行う取引を前提とすると、事業側の減価償却は、出資金3億円だけを基礎にするのではなく、取得した資産の取得価額を基礎に、税務上認められる方法で計算します。ただし、その減価償却費の全額を一人の出資者が使えるという意味ではありません。
初期に減価償却費や支払利息等がリース料収入を上回れば、事業に計算上の損失が発生することがあります。匿名組合等を通じて、その損失のうち契約上負担する部分が出資者へ帰属する仕組みです。借入金の元本返済は経費ではないため、税務上の損益と、現金の増減は一致しません。
出資金と、分配される損失は別
法人が匿名組合員となる場合、法人税基本通達14−1−3は、契約上分配を受けるべき利益や負担すべき損失を、その計算期間の末日が属する事業年度で認識する扱いを示しています。現金の分配がない場合も対象となります。
したがって、出資の払込みと損金の計上は別の出来事です。「今期中に振り込めば、今期の利益を必ず減らせる」とは限りません。契約上の計算期間、事業開始時期、減価償却の開始、決算資料によって確認します。
出資者の都合で損失計上を早めるために計算期間を変更した事案では、国税不服審判所の1992年9月16日裁決が、その処理を認めていません。古い事例ですが、見積損失を好きな決算期へ移せる制度ではないことを考える材料になります。
損失を無制限に取り込めるわけではない
組合事業を使えば、借入れで膨らませた損失を際限なく他の利益と相殺できる、という制度ではありません。
租税特別措置法67条の12には、一定の組合員等について損失の損金算入を制限する規定があります。責任の範囲や事業への関与、契約内容等に応じ、出資額を基礎に調整した金額を超える部分の損金算入が制限される場合や、損失全額の損金算入が制限される場合があります。
国税庁の制度解説でも、実質的に出資元本が保証されるような場合の制限が説明されています。税務上の損失だけを取り込みながら、経済的な損失は絶対に負わないという説明には、契約に即した検討が必要です。
「前半は損失、後半は利益」の全体像を見る
減価償却費や利息負担が先行し、後に償却費や利息が減れば、リース事業の利益が増える場合があります。最後に資産を売却すれば、税務上の帳簿価額との差額も損益になります。後の利益が出資者へ帰属すれば、その時点の課税も検討する必要があります。
例えば、ある法人が最初に1,000万円の損失を損金算入し、後に同額の利益を益金算入すると仮定します。両時点の実効税率を説明用に30%と置けば、初めに300万円の税負担が減る一方、後に300万円の税負担が生じます。これは商品の予測値ではなく、課税時期の移動を説明する例です。
納税の先送りには資金面の価値がありますが、税金が永久になくなる効果とは違います。実際の成果は、将来の税率、本業の損益、リース事業の収益、手数料、資金を拘束される期間などによって変わります。
リースの名称だけでは、税務処理は決まらない
「レバレッジドリース」は、資金調達を含む取引の呼び方です。一方、税務上のリース取引は、中途解約や費用負担等の要件により扱いが分かれます。
国税庁のオペレーティング・リースの解説は、売買として扱う税務上のリース取引と、それ以外の賃貸借を区別しています。会計上の呼称だけで、賃貸人の減価償却や出資者の損失計上が当然に認められるわけではありません。
国税庁は1999年のレバレッジド・リースに関する照会回答も公開しています。ただし、当時の法令・事実関係を前提とする回答です。そこに示された数値条件の一つだけを満たせば、現在のあらゆる商品が認められるという使い方はできません。
個人の所得税対策とは分けて考える
法人に提案される仕組みを、そのまま個人の給与所得の節税へ置き換えることもできません。
個人の匿名組合員が受ける利益の分配は、原則として雑所得として扱われます。雑所得の損失は、給与所得など他の所得と損益通算できません。任意組合か匿名組合か、法人か個人かによって、検討する規定が変わります。
税務訴訟と税制改正から、何が変わったのか
レバレッジドリースの税務を理解するには、過去に認められた取引と、その後に設けられた制限を分けて見る必要があります。代表的な裁判と制度変更をたどってみましょう。
2004〜2005年:任意組合の航空機リースで納税者が勝訴
個人が任意組合を通じて航空機リースへ出資し、減価償却費等による赤字を不動産所得の損失として、他の所得と相殺した事件がありました。航空機の貸付けも、所得税法上は不動産所得の対象に含まれます。
課税庁は、契約を利益配当契約と捉えて雑所得に区分し、損益通算を否定しました。しかし、名古屋地裁は2004年10月28日に主要な課税処分を取り消し、名古屋高裁も2005年10月27日に国側の控訴を棄却しました。高裁は、節税という動機と、契約によってどのような権利義務を生じさせる意思があったかを区別しています。
節税目的があるだけで、実際に成立した契約を別の契約として扱えるわけではないという点が重要です。ただし、これは当時の任意組合と個人所得税の事件です。現在の匿名組合型の商品や、その損失計上を一律に認めた判決ではありません。
2005年度改正:組合の損失を取り込む仕組みに制限
この時期、組合事業の損失を利用した節税への対応として、法律にも制限が設けられました。2005年度改正に関する国税庁の解説は、個人の組合損失について新たな特例が設けられた経緯を説明しています。
個人については、任意組合等の事業運営に一定の実質的関与をしない「特定組合員」に該当すると、2006年以後、対象となる組合事業の不動産所得の損失は生じなかったものと扱われます。給与等との損益通算だけでなく、他の不動産所得の黒字から差し引くこともできません。匿名組合の所得区分とは別の規定です。
法人にも、前述の措置法67条の12による組合損失の制限が設けられました。個人の不動産所得の規定と、法人の出資額・責任の範囲等に応じた制限を混同してはいけません。過去の裁判で認められたからといって、改正後も同じ税効果が得られるとは限らないis.
2006年:映画フィルムでは減価償却が否定された
別の事件である映画フィルムリース事件の最高裁判決(2006年1月24日)では、法人が任意組合を通じて投資した映画について、減価償却費の損金算入が認められませんでした。
映画に関する権利のほとんどが配給会社へ移り、組合は実質的に使用収益や処分の権限を失い、借入金返済の危険も実質的に負担していないなどの事情がありました。最高裁は、その映画を組合事業の収益の源泉とは認めず、減価償却資産に当たらないと判断しました。
ここで問われたのは、契約書上の購入という形だけでなく、その資産が実際に誰の事業で収益を生み、どのような権限とリスクを伴っていたかです。航空機事件の上告審でも、リース全般を禁止した判決でもありません。
2015年:匿名組合の航空機リースは、所得区分が争点に
2015年6月12日の最高裁判決では、個人の匿名組合員が航空機リース事業から分配された損失を、不動産所得の赤字として損益通算できるかが争われました。最高裁は、この事案の匿名組合員は事業を共同で営む立場になく、損益通算を認めないと判断しました。
一方、2005年12月の通達改正前の取扱いを踏まえ、一部の申告には「正当な理由」があるとして、過少申告加算税の一部を取り消しました。本税の計算が認められるかと、加算税まで課されるかは別の問題です。また、通達による行政解釈の変更と、法律そのものの改正も区別する必要があります。
これらの歴史から分かるのは、「リースなら節税できる」という一言では判断できないことです。契約の種類、投資家が個人か法人か、事業への関与、適用年度の法令を確認して初めて、税務上の結論を出すことができます。
最後に残るのは、税効果ではなく投資成果
リース料の支払いが滞る、資産の売却価額が想定を下回る、外貨建ての回収額が円換算で減る。こうした事態では、税負担の軽減額以上の損失を負う可能性があります。借入れを使っていても元本保証になるわけではなく、途中で自由に換金できるとも限りません。
検討すべきなのは、「今期いくら損金になるか」だけではありません。契約期間全体で、いつ、いくら現金が出入りし、税金と費用を差し引いて最終的にいくら残るかです。その見通しを、本業の資金需要と併せて確認することが、レバレッジドリースを評価する出発点になります。
本稿は2026年9月14日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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