スタートアップの基礎知識

経理部のつくり方

起業にしろ新規事業の立ち上げにしろ、新しく事業を立ち上げた直後というのは、マーケティングや営業など、まずは売上を上げに行くことが大事です。

うまく資金調達できたり、内部留保があったりする場合を除いて、売上がないと通常はすぐに会社が潰れてしまうので、いかに利益が出るかに注力すべきでしょう。

でも、会社を経営するのであれば、会社の帳簿をつくらなければなりません。単純な話、中小企業でも1年に1度は税金の確定申告をしなければならないからです。

経理部をどうするか?

起業直後に、起業家と会計事務所の間で必ず出る話として、「経理部をどうするか?」というトピックがあります。

そして、この話は、会社が成長して、立派な経理部が完成するまで続きます。IPOでのEXITを考える場合には、「内部統制」の問題にも直接関わりますから、必須のテーマになってきます。

この会社の経理をどうするか、記帳業務をどうするか、という問題。

選択肢としてはいくつかあるのですが、通常、大きく分類すると以下の4パターンに分けられます。

◯最初から経理部を設置する
◯最初から経理部を設置するほどお金がないので、社長が経理をすべてやる
◯経理部を設置するほどのお金の余力がないので、経理部を丸ごとアウトソースする
◯経理部を丸ごとアウトソースするのではなく、記帳業務だけアウトソースする

経理部をアウトソースするというのは、現実的にはあまりない事例ですが、売上側で言うと請求書の発行から回収管理、記帳まですべて、仕入側で言うと請求書の確認から支払い、記帳まですべて外注する形で、実際にそういった業務を税理士事務所が請け負うケースもあります。

記帳代行というのは、けっこう一般的で、経理という仕事の中でも、上記のうち、売上側で言うと請求書の発行から回収管理、仕入側で言うと請求書の確認から支払いまでは会社がやり、「複式簿記」という専門的な知識が必要な「記帳業務(帳簿をつくる仕事)」だけ会計事務所に外注するという形です。

どのパターンがよいのか?

上の4パターンでどれが一番いいのかというのは、どういう形の起業をするかによります。

例えば、フリーランスの方やおひとりで事務所を構えられる弁護士の先生などは、最初は記帳業務を税理士事務所に依頼し(本業に集中し)、徐々に事業体として成長してきて、管理側のスタッフをひとり雇用できるようになれば、その人に記帳業務だけではなく総務や庶務など、管理側を任せるというのがよいと個人的には思います。

この場合、例えば、その管理担当の人を20〜30万円くらいのお給料で雇えたとして、記帳業務がその人の労働時間の1/4程度であれば、実質、月に5〜7.5万円で経理業務をしてもらえることになりますね。

これはスタートアップも同じ。最初は会計事務所に記帳代行をお願いしてもいいと思いますが、収益が出るようになったら、きちんとした経理部を構築したほうがよいと思います。

前述の繰り返しになりますが、記帳(帳簿記入)というのは、「複式簿記の原理」を理解できている人でないと、不可能です。単純な入力だけならできても、チンプンカンプンな帳簿ができあがってしまっては元も子もありません。

理想的な人材はどこにいるのか?

この「複式簿記の原理」を理解できている人というのは、製造業(IT系でもWEB制作会社などを含みます)であれば日商簿記検定試験2級、サービス業であれば日商簿記検定試験3級を持っていて、かつ、経験が豊富な方がベスト。会社の経理部や会計事務所勤務経験者がベストでしょう。

よく「どこにそういう人材がいるんですか?」と聞かれることがありますが、答えはけっこう単純で、人材採用の際、募集要項の必要資格の欄に「日商簿記検定試験◯級以上」と書けば、そういった人材に巡り合うことができます。

商業高校ご出身の方であればほぼみなさんお持ちの資格ですし、大卒でも商学部ご出身であればけっこうな確率で持っていますが、やはり、会計ソフトを触ったことがあるかないかという実務経験のの差は少し出るように思います。(慣れればかんたんなので大差はありません。)

経理部というのは、正直なところ、その会社の収益に貢献しづらいバックヤード業務なので、起業家の方の中にはついつい軽視される方もいます。というか、経験上、軽視している起業家はかなり多いです。

ただ、本当の商人というのは、お金の動きに非常に敏感な人。どんぶり勘定の社長に名社長はいないように思います。私が聞いた話では、孫正義さんは創業時から「日次会計」を実践しており、毎日、デイリーで会社の会計を管理していたといいます。

また、ずさんな経理が続くと、事業や会社経営がうまくいかなくなったときに、会社のボトルネックがどこなのかすら分からなくなることがあります。

一番気をつけなければいけないこと

経理部を構築するときに一番気をつけなければいけないのは、経理担当者に適切に情報を流してあげること。これはほんとうに重要です。

よく「通帳コピーも請求書も領収書も全部渡したんだから、あとやっといてよ!」的なやり方が見受けられますが、会計事務所であろうと社内の経理部であろうと、そういった「丸投げ」ではどういった会計処理をすればよいのか分からないことがあり、分析も必要になりますし、悩むことが多く、質問事項が山のように出てきます。

質問に回答してもらえればまだよいですが、それでも、その質疑応答の時間は、思い出したり、調べたり、他の資料をあさったり、どう考えてもそれって時間のムダですし、質問に答えてくれないというケースでは、まったく先へ進めませんので、最悪、経理の方が思い余って離職されるなど、いつまで経っても経理部が立ち上がらないというケースも目にします。一言で言うと悪循環ですね。

結局、何が問題なのか、ということになるのですが、答えは意外とシンプルで、一度、ビジネスのプロセスを分解して考えるとよく分かります。

どんなビジネス・業態でも、売上側では、一般的に、

◯お客様からの「受注書」
◯お客様への「納品書」
◯お客様への「請求書」

この3枚の書類があり、「回収」が行われ、「記帳」という会計記録につながります。

仕入側でも、一般的に、

◯取引先への「発注書」
◯取引先からの「納品書」
◯取引先からの「請求書」

この3枚の書類があり、「支払」が行われ、「記帳」という会計記録につながります。

つまり、ビジネスのプロセスには、

◯受注>納品>請求>回収>記帳
◯発注>検品>請求>支払>記帳

という流れがあるわけですが、受注や発注、納品や検品、請求、回収や支払いはある程度誰にでもできますが、「記帳」だけは「複式簿記」という専門知識が必要だという特徴があります。

問題が起きるパターン

会社が大きくなると、営業担当が「受注」し、業務担当が「納品」し、経理担当(または営業担当や責任者)が「請求」し、というように、このプロセスごとに担当者が変わることが往々にしてあります。

よくあるパターンとしては、フリーランス時代にはこれが社長の頭の中で一気通貫で行われていたので問題が露出していなかったのに、分業制にしたら情報の流れが上手くいかなくなってしまったというケースです。

こういうところで、「情報の流れ」を「仕組み化」をしておかないと、記帳がスムーズにできないことはいうまでもなく、ビジネス的にも本当に危険です。

◯受注したのに納品していない
◯納品したのに請求していない
◯請求したのに回収していない

◯発注したのに検品していない
◯誰が検品したかも分からず、支払いだけされている

そういったことがザラに起きます。

もっとひどいケースでは、

◯支払いをしているのに何も届いていない
◯何か月も二重に支払いをしていて、どおりでお金がない
◯経理担当者の横領に気付かない

はっきり言って、ムダですよね。せっかく売上を上げてもムダな「損失」が出てしまっては、なかなか利益体質の会社になりません。

具体的な解決策

弊事務所の起業家支援(といっても成長フェーズ・安定フェーズでもご依頼をいただくことがあります)では、どういう「仕組み」をつくれば、そういったロスが生じずに、

◯受注>納品>請求>回収>記帳
◯発注>検品>請求>支払>記帳

という業務の流れを行えるのかをコンサルしています。

具体的には、単純な「色分け」を使い、「スタンプ」「ボックストレー」「ファイル」を上手く活用して「仕組み化」します。

この仕組みが回るようになると、受発注からの情報の流れが記帳まで滞りなく流れるようになり、かつ、最後はきれいにファイリングされますから、何かあったときにも確認が非常にかんたんですし、もっと言うと、書類の整理がされますから、書類でグチャグチャだった会社がきれいになります。

つまり、経理の問題(きちんとした経理部の構築の仕方)というのは、ヒューマンエラーに問題があるのではなく、「きちんとした情報伝達の仕組み」「責任の所在を明確にする仕組み」「日付を管理する仕組み」で解決できるものなのです。

一度この「仕組み化」を行えば、あとは回すだけ。

ムダな損失を出し続けて、ストレスが掛かり続けて、社内の雰囲気が険悪なものにならないためにも、最初の仕組み化が本当に肝心です。

それこそ何年か経って、「あのときやっておけば…」ということにならないように、なるべく早く習慣化したいものです。

 
メールでのご相談・お問い合せ

報酬表(目安)

初回のご相談 無料
経理部マニュアル 1万円(消費税別)
(税務顧問先様は無料)
(*1) 上記の「スタンプ」「ボックストレー」「ファイル」を使った仕組みの解説(A4サイズ全12ページ)
初回の経理部診断と
かんたんな提案書発行
5万円(消費税別)
(税務顧問先様は無料)
経理部改善パック 毎月10万円(消費税別)から
(税務顧問先様は毎月5万円(消費税別)から)
(*1) 最低3か月契約となります
(*2) 毎月ご訪問して一緒に取り組みます
(*3) 経理部はもちろん社長のご協力が必要です
(*4) 社長のご協力が得られない場合にはお断りしています

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